全てを見抜かれる…の4
彼の使命感はともかく、傍から見るといつもよりも子供っぽいアルバートの言動。
ゲートを目前にしての小競り合いは未だ続いていた。ここでレンリが鋭い一撃を放つ。
「ん、失敬。もしや、あなた…」
レンリは相手の心の底まで見透かすような眼差しでアルバートの顔をまじまじと眺めた。額から顎、右耳から左耳。やがて、納得したように顎を大きく上下させる。
「…嫉妬されています?」
「あっ?」
そばにいるルリが吹き出したのを従者たちは見た。
「そうですか、そうですか。」
アルバートは是とも否とも答えていないのに、レンリは沈黙は肯定、として受け取った。
「なかなか気が若くなるといいますか、こそばゆいものがありますな。お嬢様はたしかに大変愛らしく聡明であらせられるのでね。」
尊敬する占い師に褒められ、ルリもむず痒くなったのか頭をかいた。
「アル、そうでしたか。私がレンリ先生に取られないか心配だったと。んふふ…しょうがないですねえ。」
いつもとは立場が明らかに入れ替わっている。
「ま、ルリ様、この男のことは放っといて、いざ先へと参りましょう。」
「ふふ、そうですね。」
なんだか上機嫌のルリが、他の仲間を引き連れて疑うことなくゲートの中に入っていった。
「アル!勝手な行動はだめですよ!」
異空間に足を突っ込みながらルリは子どもに語りかけるようにアルバートを呼んだ。
流石にアルバートも子どもではない。何も答え老人の開くゲートに黙って入っていった。