全てを見抜かれる…の3
果たしてここはチャペルの中なのだろうか。階段を上がったり、降りたり、扉を幾度も開いたり、そろそろルリにも疲れの表情が見える。ずいぶん長いことあるかされ続け、外からは全く想像できなかった長い長い通路をたどっている。
「少し休まれますか?」
フリティアが主を横から覗き込む。だが、気持ちはまだ疲れていないルリは首を振る。
「みんなもまだまだ元気な様子ですから、平気です。」
「…あまり無理をなさらぬよう。」
フリティアは心底心配してルリの背をなでた。
「たいへん長らくお待たせいたしました。」
未だ疲れがどこにも現れていないレンリが、手の先でその何もない壁を指し示す。
「…?」
一同はそのばできょとんと立ち尽くした。
「そんな顔をなさらないでくれませんか。ここにゲートが、ほら。」
老人は壁を小突いて、軽々と空間の歪みを発生させた。
「わあ…」
その流れるような動作に目を奪われるルリ。恐る恐る怪しく光る異界のゲートに吸い込まれるように近づいていく。だがそれを止めるのが聖騎士の、護衛たちの役割である。
「じゃあぁ、案内ご苦労さんっ。」
アルバートは強引にゲートとルリの間にその身をねじ込む。ルリがむっとして睨みつけたのを、彼女の騎士は無視をした。
「ここからは俺達だけでなんとかするんで、あなたはお忙しいでしょうからね。」
「…ははは、嫌われたものですね。」
なんとでも言うがいい。
たとえ誰に嫌われようとも、今は自分が動く場面だと、アルバートは固く信じていた。