全てを見抜かれる…の1
レンリに連れられてルリとその仲間たちはチャペルの中へ入っていった。数多くある天窓から光が降り注ぎ、会場全体が常に明るい。白い式場がより白く、清廉さを醸し出している。
「普段はなかなかこういうことはしないのだけれど。」
前を行くレンリが語る。
「おっ、お忙しいのにありがとうございます!」
高名な魔術師たるレンリが自分に対して時間を割いていることに嬉しいのか、緊張した面持ちのルリ。どうもセクハラ発言は彼女の中でノーカウントになっているようだ。それでいいのか。
「最初からこの時間帯はここを周ることになっていましてね。」
ステッキを小脇に抱えて会場の隅々まで案内している。
「そうなんですね。……しかし失礼ながら、なんのためにですか?」
レンリはくるりと回ってフリティアと向き合う。
「私はこのあたりにある、とあるゲートを管理しているです。」
なにか確信めいた思いが彼の笑顔の中から感じられた。
「無法者がいたずらしていないか心配でしてな。」
「まさか、まさか。」
あまりこの話題に反応しないでほしいと思うアルバートである。
「それで?レンリ先生はなぜ我々を、誘ってここまで来たんですかね?」
「いえ。そちらのお嬢様が可愛らしくてね。」
「そっ、そんな…。」
頬を抑えて照れるルリ。尊敬しているからって簡単に気を許し過ぎである。要はルリの見た目がいいから誘っているだけである。アルバートとフリティアは顔を見合わせてうなずいた。
「…まあ、私達も向かう先がありますので、このあたりで。」
「忙しいところを面倒かけては申し訳ないからな。」
と、二人して来た道を戻ろうとしたが、肝心のルリは退く様子がなかった。
「あっ、アル。ティア。ごめんなさい、もうちょっとだけ…。」
「お前なあ…」
この占い師とはもうあまり関わらないほうがいいとアルバートの警戒心が言っている。無理に立ち去ろうとするルリの護衛たちに向かって、レンリは一言伝えてきた。
「この先に、あなた方が向かう先、があると思うんですがな。」
ニヤリと不敵な笑みを見せるシワの多い老人。ルリが叫びそうになりながらも、声を抑えて感動の言葉を発した。
「ま、まさか、そこまで見抜いておられたんですか、レンリ先生。」
「ええ、占い師ですからね。」
レンリはまたニコリと笑った。