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61.あなたはどこから来たのか? ~Where are you coming from?~

「常神七海さん お久しぶりです。突然スマホがメッセージを受信してビックリしたかしら、もしくは別の世界では使えないスマホなんて、もう見ていないかも知れないわね。まあとにかく、私がこうしてメールを送っているのは他でもなく、七海さんが今いる世界でもスマホを使えるようにするためのテストなの。」


久しく何の反応も示さなかった私のスマホに届いたのは、海の安全を司る女神様からのメッセージだった。神様がスマホなんて使うのかという疑問はさておき、こんな芸当ができるのはこの人(人じゃないけど)だけしか居ないと思っていたので、そこに意外性は無かった。しかし、神様は何のためにこの世界でスマホを使えるようにしようとしているのだろうか。メッセージには続きがあった。


「聞くところによると、あなたの元いた世界では、船の乗組員になる人間が少なくなっているそうね。なんでもその理由が、『海の上ではスマホが使えないから』だとか。とても嘆かわしいことだけれど、それほど今の若者にとって大切なものなのね。だったら、違う世界に転生してスマホが使えないというのもきっと辛いことでしょう。なので、こうして通信が行えるかどうかを試しているというわけ。」


なるほど、確かに船員を目指す人が少ないという話は私もお父さんから聞いたことがあるし、海の上ではたとえ陸地に近い場所でもあまりスマホは電波を拾わなく、ただの置物と化してしまう時間が圧倒的に長い。とはいえ、そこからヒントを得ましたとばかりに「海の上」と「別の世界」を一緒に扱うのはいくらなんでも乱暴なのではないだろうか。……まあ、今までこの神様が絡んだ出来事で乱暴でなかったことの方が少ない気がするので、いまさらそれを言っても始まらない。


「七海、何見てるの?」


そう、なぜなら今はセーラに「私が違う世界から来た」という大切な、とっても大切な話をしている最中なのである。そして私は違う世界から来た人間であるという証拠を彼女に示すことができなくて悩んでいるところなのだ、神様からのメールなんて気にしている場合では……。


いや、どう考えてもこのメールこそが証拠だろう。しかもなんとも運のいいことに、神様は私のスマホで表示できるように、ちゃんと私が元いた世界の言葉でメッセージを送ってきてくれている。


「セーラ、これ、これが証拠。私が別の世界から来たっていう証拠!」


そういって私は恐る恐る、セーラにスマホの画面を見せた。


「これ、なに?手鏡に文字が浮かび上がってる……けど私の知ってる文字じゃない。」


突如現れた未知の機械と未知の文字に、セーラは混乱を隠せないようでいた。それもそうだろう、豪華客船があって映画もカジノも私の元いた世界と遜色ないものが存在しているくらいには技術が発展しているこちらの世界でも、小型かつ薄型のコンピュータをみんなが持ち歩いているというところまではさすがに到達していないのだ。こんなものを見せられたら、さすがのセーラといえども素直に受け入れられるとは思えなかった。しかし、意外にも彼女が混乱しているのはスマホという機械の方では無いらしかった。


「この文字、西の大国の文字に似てるけど、よく見ると全然違ってる……。でも、他の国でこんな文字を使ってるなんて聞いたことないよ……。」


彼女が食いついたのはメッセージの文面、もっと言うと使われている文字の方だった。地理の苦手なセーラにしては珍しく、西の大国や他の国のことを思い出しつつ、自分に心当たりが無いかを確かめているようだったが、ピンと来るものは無いようだった。メッセージの文面は私が元いた世界で使っていた言語なのだから、あるはずも無いのだけれど。


「私ね、小さい頃に両親から西の言葉を教えられたんだ。世界中のいろんな人とコミュニケーションが取れるようになるのは、大人になってから絶対役に立つっていう考えだったから。でもね、その時習った中に、こんな文字は入ってなかった。七海、私が小さい頃真面目に勉強してなかっただけで、これは西の言葉なんだよね?それとも……。」


私は首を小さく横に振り、セーラに伝えた。


「これは西の言葉じゃなくて、日本語っていうの。私が元いた世界では1億人以上が話してるけど、こっちの世界には存在しない言葉。これで分かってくれたかな。やっぱり私がもともとこの世界の人間じゃ無かったってこと。」


最初彼女に打ち明けたときには想像もしなかったような決定的な証拠の存在は、良くも悪くも私が異世界の人間であるということを物語っていた。となれば、セーラもこの「現実」を受け入れざるを得ないだろう。そして、私の言うことを信じてくれたからといって、その先が安泰になるわけでもない。セーラが異世界人なんて嫌だとなれば、私は彼女から見放されるしかない。しかし、私はそれに対して抗議するつもりは無かった。だって、その気持ちはとても自然なものだと思うから。


「……この世界の人間じゃ、無い。」


セーラは確かめるように小さな声でつぶやいた。果たして、彼女は私に対してどんな判断を下すことになるのだろうか。次の一言を待つその時間は、実際にはきっと10秒も無かったのだろうけど、私にとっては永遠に感じられた。


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