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60.私は……から来た ~I am coming from……~

「七海、やっと本当の気持ちを教えてくれたんだね。」


結局、私は彼女に対してはっきりしっかりストレートに「好き」という言葉を伝えることはできなかった。代わりに私の口から出てきたのは、回りくどくてはっきりしない「この気持ちが『好き』なんだと思う」なんて曖昧な言葉だったけれど、それでもセーラの胸にはきちんと届いてくれているようだった。


「私、心配してたんだ。この前七海に私の気持ちを正直に話したけど、本当に大丈夫だったのかなって。」


「大丈夫? どういうこと?」


「私は七海のことを、普通の友達以上の存在だと思ってたんだけど、七海は私のことをそうは思ってないんじゃないかなとか、七海にとって私はただの友達なのに、私はもっとそれ以上の関係でありたいと思ってたとしたら、七海に変に思われるんじゃないかなとか、いろいろ考えてたんだ。」


セーラのいつになく真剣な視線が、私の顔を捉え続けていた。彼女の青い瞳が、フォクスロッテの街の光に照らされて、コーラル・マーメイド号の船上では見られないような輝きを放っていた。しかし、一方で私はセーラのその心配を聞いて逆に安心するような、もっと言えば面白いとさえ思えていた。だって、彼女の心配事は、そっくりそのまま私の心配事でもあったからだ。


それに、彼女の本人に対して何も言わずに、あるいは本人の言うことも聞かずに一人で突っ走って考えてしまう性格も、私は最初セーラの暴走モードなんていう風に考えていた。しかし、この航海でいろいろあった中、改めて考え直してみると、自分だって彼女のことを他人事のように語れないくらいに一人で突っ走って考え込んでしまっていることがたくさんあった。これが例えばポーラなら、一人で考えるよりも先に周りの人を巻き込んでどうにか解決してしまうような気がする。けれど、私はそうはいかなくて、それはセーラも同じ。結局私たち2人は最初から似た者同士だったというわけだった。


「ちょっと七海、どうして笑ってるの! 私本気で悩んでたんだからねっ!」


思わず表情が緩んでしまっていたらしい私に対して、セーラがすねたように抗議をする。


「ごめんごめん、でもセーラの考えてたことが私と一緒でおかしくなっちゃったんだ。私も、セーラと友達の先になりたいと思ってたけど、セーラはそう考えてないかもしれないって思ってたし、変に思われるとも思ってた。だから、私たちは一緒のことを考えて、一緒のことで悩んでたんだって。」


「……そうなのっ!? 全然そんなこと無いのにっ!」


「そうだったの。全然そんなこと無いのにね。」


私がセーラの言ったことをそのまま復唱するように返し、私とセーラは2人で顔を見合わせて笑った。私の想像では、告白がセーラに受け入れられなければ彼女はきっと怪訝そうな顔をするはずだし、受け入れてくれたならば彼女はきっと泣いてしまうのではないかとばかり考えていたので、今こうして2人で笑い合っているというのは実は想像していない展開だった。


さて、今晩私はセーラに伝えなければいけないことのうち、半分は伝えることに成功した。本当はこのまま幸せな気持ちで船に戻ることもできるけれど、あと半分もここで伝えなければ、きっと次のチャンスは無いだろう。そして、そのまま私がひょんなことでこの世界から消えてしまえば、彼女にはとても辛い思いをさせてしまうことは明らかだ。


だから、ちゃんとけじめをつける。信じてもらえるとは思えないけれど、真剣に伝えればきっと、セーラなら分かってくれるはずだ。


「それと、セーラにはもう一つ大事なことを話さなきゃならないんだ。」


「もう一つ?」


セーラは「七海が私のことを好きだと言ってくれたことと同じくらいに大事なことなんてあるの?」とでも言いたげな表情をしている。いや、これは私の妄想だけど。


「あの、私とセーラが初めて出会ったときにも言ったことだけど。私本当は西の大国出身とかじゃなくて、この世界とは別の世界から来たの。」


好きだという気持ちは遠回しに言うくせに、遠回しで言うべきことはストレートに言ってしまう自分がなんだか情けなくなってくる。でも、好きな人に対して自分が異世界から来ましたなんていったいどう言うのが正解なんだろう。きっと未だ誰も直面したことのない問題に私は今立ち向かっているのだから、多少の不器用さは問題にならないはずだと私は自分に言い聞かせる。


「七海、別の世界から来たっていう話好きだよね。まあ、北や東の文化と西の文化は全然違うから、そういう風に思っても不思議じゃないけど……。」


「違うの、西とか北とか東とか関係なくて、本当に私はこことは違うとこから来たんだってば。」


私の懸命の訴えにも関わらず、セーラは一向に私の言うことを冗談だと思って譲らない様子だった。いや、それが普通なんだ。なんならせっかくいい雰囲気になってるのに、なんでいきなりそんな冗談を言い出すのかと怒られても仕方ないくらいのシチュエーションだ。それでも耳を傾けてくれるのは、セーラの優しさにほかならない。でも、このままでは結局私の言わなければならない大事なことが伝わらずじまいになってしまう。何か、何か証拠が一つでもあれば……。


その瞬間、手提げバッグの中から久々に聞く懐かしい振動音が響いてきた。私がこの世界に来る前までは、毎日聞いていたにも関わらず、こっちに来てからは一度足りとも聞こえてこなかった振動音だ。


信じられないことに、それはこの世界ではペーパーウェイト以外の機能を持たない私のスマホが、何らかの着信を受けたことを示していた。

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