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鳥インフルエンザ

作者: アベ坊

 僕は鳥インフルエンザにかかったらしい。ちょうどあの時は週に2回のゴミの日で、僕はいつものようにクチバシでゴミ袋を突いているときだった。見かけない鳥がえらくフラフラと飛んできて僕の横のゴミ袋を漁っていったんだ。普通なら僕の仲間がそいつを追い払うんけど、皆隣村のゴミを漁っていて、僕は追い払うガラじゃないからほっておいた。隣村は最近新快速が駅に止まるようになってから人口が増えて、その分エサの量も多くなったからなア。僕は仲間から嫌われているわけじゃないよ。むしろ遊ぶときはいつも誘ってもらっているし、仲間の中心からも良くしてもらってる。ときどき一人になりたい気分のとき。昔の餌場に戻ってくるのだ。

ただそいつの食っていた大豆はいつも僕が楽しみにしているやつで、さすがにイラッときたな。

その大豆を食ってたやつの死骸がみつかったのはそれから1週間後の公園のブランコの上だった。それが鳥インフルエンザによるものだと僕らはすぐに分かった。しかし、まずいことになった。僕はあれから寒気が止まらないんだよ。本当に死にたくない。生きたい。なぜ僕はあの日に限って昔の餌場に行ってしまったのだろう。どうして大豆のヤツはここの餌場を選んだんだろう。どうして僕だけなんだろう。そう思えば思うほど無駄に神経と体力を浪費してしまうし仲間に移すわけもいかないので僕は今夜黙って村を出ることにしましたよ。


とりあえず北に進もう。少しでも涼しい方がいい。淀んだ雲がズズズっと流れてます。奥のほうからは黒い入道雲がずっしりと座り込んでいる様子です。夜は真っ暗で何も見えないから昔の思い出とかを思いおこさせてしまいます。まだ母に食事を与えてもらっていたころは飛ぶことだけが夢でした。いつの日か母が食事を持ってきてくれなくなったときは空腹と苛立ちと寂しさが同時に押し寄せ、急に他人のように思いました。母は私を殺そうとしているのではないか、だったら僕が母を殺してやりましょう。そう思い巣を離れると、空を飛んでいました。気づけば友人も皆飛んでいました。ピューっとね。はじめからそういう体のつくりだったようですね。

エサを取ることも始めはできませんでした。しかし週に二回のゴミの日を覚え、くちばしが器用になると、くちばしでゴミ袋を突く。あふれ出る生ゴミを食い荒らす快感はもう二度と忘れられません。今は大体のことができるようになって、こうやって夜の星だけを頼りに北に進むことだって簡単なんだな。


月が雲で隠れてしまって自分の位置が分からないのです。

ただ、北に進んでいることだけは空を見れば確かです。こんなにできることが増えて次に何ができるんだろう。

それはまた、

鳥インフルでいなければ。

婚約していたあの人と、

子供ができているんだろうな。

子供はいつから飛ばせよう。

エサは交代で運ぶこと。

最近では共働きが支流だよね。



ふいに山の地べたが僕を着地を誘うので降りてみることにしましたよ。結婚や子育てが生ゴミを食い散らかす快感に匹敵するわけがない。


案外鳥インフルエンザってやつは辛くないものだな。地べたはひんやりしていて気持ちいい。足元を見るとワラジムシが腐った木に寄生したカビの上を歩いている。血管のように張り付いたカビの上を沿うようにチロチロ歩いております。そうか!!ワラジムシになればいいんだ。こうやて体を丸めるとそれっぽいじゃないか!それとも、固い皮膚を持つほうが先か!っん?違うんですか!どうなればなんれるんだ。なるほど、足が多くないといけないのか。なるほど、触覚がいるんだな。なるほどチロチロしなくちゃいけないんだ。なるほど。なるほど、カビの上を歩けばいいんだな。なるほど、なるほどなるほど、なるほどなるほどなるほどなるほどなるほど。


どう頑張ってももう遅いんでね。鳥インフルエンザのことではないんですよ。むしろ鳥インフルエンザにかかれてほんとによかった。とんびのようにぐるぐると回っていても仕方ない。生きてるうちは清々するぐらい快感を覚えたし夢もかなえた。そういう体の仕組みだったんですね。結局は。


どう頑張ってももう遅いんでね。鳥インフルエンザのことではないんですよ。むしろ鳥インフルエンザにかかれてほんとによかった。とんびのようにぐるぐると回っていても仕方ない。生きてるうちは清々するぐらい快感を覚えたし夢もかなえた。そういう体の仕組みだったんですね。結局は。

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