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迷宮と書いてダンジョンと読め!!

『それでは、早速、ダンジョンを造りましょうか?』


幻さんの言葉に我は首をかしげる。そう言われても、ダンジョンなるものが何か、結局なんなのかわからないのだがな。


「幻さん、ダンジョンなるものが何か、教えてはくれぬか?この書物のことも、ステータスがわかること以外、わかっておらぬ」

 

 まずは、情報を集め、己の置かれた立場を見極めなくてはなるまい。


『考えなしの馬鹿ではないんですよね……。抜けているだけで……』

「失礼な!!」


 我が一体、我のどこが抜けているというのだ。それに、初対面にも拘らず、これ程までの短時間で、露呈する程のマヌケ、なかなかいないであろう。


 ふむ。探してみるのも、また、一興か。それ程までの間抜けならば、見ていて飽きないであろう。


『……鏡、いりますか……』

「何を言っているんだ。先程、この書物で見たであろう?」


 なぜ、突然鏡が出てくるのだ?確かに絵より正確だが、今は要らぬであろう。


『では、説明しますね』


◆◇◆◇◆


「ふむ。なるほど」


 我は幻さんから聞いたダンジョンの定義を整理する。


「ダンジョンは魔物とそう変わりはない……と」

『はい。規模が違うだけで、『生命活動』をしています』


 ダンジョンは魔物と同じく、魔素が集まり生まれた魔物の一種だという。生物ということは食べもするし、息もする。当然、病気にもなるらしい。


 ダンジョンにとって呼吸とは酸素ではなく、魔素を取り込む為の行為であり、食べるものは侵入してくる魔物を含めた生物がダンジョン内で死ぬことで得られる、その死んだ生き物の保有魔力を取り込む行為のことを言う。


 空気中の魔素は濃度が低く、また、魔力への変換率は悪いので、呼吸だけでは数日を持たずして、自己崩壊を起し、消滅するという。


 それ故に、ダンジョンに侵入してきた生物は全て殺さなければならないという。


「全て、殺すというのはやりすぎではないのか?」


 全て、とはどうもやりすぎな気がする。利用できる者や、友好的な者がいるかもしれないにも拘らず、全て殺すとは早計すぎるように思う。


 そう我は思ったのだが、


『いえ、殺さなければ、こちらが殺されます。……ダンジョンに来るものは全て、ダンジョンの魔物の素材やダンジョンコアが目的なのですから、殺しに来たのに逃がすのは危険です』


 確かにそうだ。殺しにくるものが友好的なはずがない。ダンジョン内に入れるということは文字通り、体内に入れるということだ。リスクに見合う見返りがなさすぎる。


 殺せば、保有魔力だけでなく、DP(ダンジョン・ポイント)が手に入ると言う。DPとはダンジョンが生命活動に必要なエネルギーと言っても過言ではない。


 ダンジョンを大きく、複雑に成長するために、(捕食器官)を作り、増やすために、防衛戦力(免疫)を増やす為に必要不可欠だからだ。


 ダンジョンの免疫機能とは、罠を含めダンジョンの魔物のことだ。侵入者を殺し、排除すると言う意味では免疫とは上手く言ったもんだな。ダンジョンにとって魔物とは免疫細胞であり、消化を促すための消化器官とでもあるということだ。


 そして、その魔物を統括するのが我、つまり、ダンジョンボスの役目だ。本来、ダンジョンを造るのは仕事ではないらしいのだが、幻さんがリビングコアと言う特殊なコアだからか、ダンジョンマスターという者がいないので、幻さんと共にその役目もやらなければならないらしい。


 故に、他のダンジョンのボスと違い、替えが効かぬという。我は先頭に立ち、軍を率いる方が性にあっていると思うのだがな。


『あなたが死ぬと、ダンジョンが崩壊するので、危険を冒すような真似は控えてくださいね』

「……わかっておる」


 それよりも、侵入者を迎え撃つための準備をしなければならんな、さて、何から始めるべきか?


 まずは、今、DPがいくらあり、魔物を召喚、ダンジョンの拡張、罠の作成にいくら必要なのか、ああ、魔物を召喚したら、食わせる必要もあるな。部下を飢えさせたとなれば、我の沽券に関わる。食料、それも考えたらあまり余裕がないかもしれぬ。


 我がそのように考えていると、


『ダンジョンの書を開いてください。ダンジョンのレベル、現在の保有DP、ダンジョンの見取り図、召喚可能な魔物、設置可能な罠、購入可能な物資がわかります』


幻さんの指示に従い、書物を広げると、何も書かれていないページにまるで今この時、見えないペンで書かれているかのように文字が書かれていく。


 不思議に思い、他のページを広げると、空白のページに同じように文字が浮かんでくる。


 ……パラパラとめくっているとある事に気がついた。


「全て同じページではないか!?」


 ――――まさか、不良品か?いや、しかし、こんなに自信満々に言い切ったのに実は不良品だと知ったら、幻さんが傷ついてしまうかも知れぬ。


 そう思い、我は幻さんに温かい目を……目を……。幻さんどこ?


『そんな、ハイスペックな不良品があるか!!見たいページがどこを開いても見れる機能です!!』


 なるほど、それは便利であるな。幻さんに温かい目を向けようとして、キョロキョロと見回していた我に幻さんがそれは間違えだという。


 確かに、我がステータスを見ようとすると、初めてこの書を開いた時に見たページが書かれていく。


『はぁ……。まず最初に、ダンジョンの拡張をしましょう。魔物を召喚するにはこの部屋だけでは手狭ですから』

 

 確かにそうであるな。ここは我ひとりでも息苦しく感じる程狭い。召喚した魔物が従順かも分からんのであれば、このまま召喚するわけにもいかぬか。最悪、戦闘、もしくは逃走も視野に入れねばならんか……。


『では、ダンジョンのステータスを思い浮かべてください』


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名前 なし


 ダンジョンLv1 


 階層 1階層


 保有DP 250DP


 召喚可能な魔物 マダラスネーク5DP ポイズンスネーク7DP シャドウスネーク10DP ワーム1DP シャドーワーム3DP ヒル1DP スライム2DP アシッドスライム7DP シャドースライム8DP リザード3DP ポイズンリザード7DP シャドーリザード10DP トータス3DP ロックトータス4DP タルトトータス20DP ミミックトータス20DP


  設置可能な罠 落とし穴5DP 


 特殊召喚 ランダム召喚50DP 下位召喚7DP 上位召喚70DP


 階層増築 5000DP 


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 ふむ。ダンジョン拡張にかかるコストが分からないのは少し不便であるな。増築しか拡張する手段がなければ、長細いものになってしまう。


 そう思っていると、


『ダンジョンを拡張するさい、拡張する場所の材質により、コストが変わりますので、こればかりはやってみないとわからないです』


 材質……であるか、地質ではなく。この部屋の脈打つ壁といい、床といい、まさか、本当に化け物の腹の中ではあるまいな?


 まあ、この部屋を大きくしようか。ダンジョンをどう作るか、最初の一手が今後のダンジョンの形の基礎となると言ってもいいだろう。


 となれば、


「幻さん、画期的なダンジョンを考えついたぞ!!」


 我はそう言い、不敵に笑ってみせた。


『では、ダンジョンの書に両手をかざして、ダンジョンのイメージを思い浮かべてください』


 書物から手を離すと、書物は宙に浮かび上がり、地に落ちる様子を見せない。言われた通りに両手をかざすと書物から幾何学模様の様なものが浮かび上がり、そこから光でできたドーム状のものが浮かび上がった。


「これは?」

『ダンジョンの模型です』


 ふむ、このドーム状のものがこの部屋なのか。便利であるな。では、始めるとしよう。イメージすると地面が軽く揺れ始めた。


 そして、揺れが収まり、完成した。


「ふむ」


 我が満足げに頷くと、


『ふむ。じゃないですよ!!なにやってるんですか!!』

「なにを言ってるのだ?ダンジョン制作に決まっているだろう」


 不思議なことを言う、と我が思っていると、まだ、興奮冷め止まない、と言った様子で幻さんは声を荒げる。


 全く、なんだというのだ。


『真直ぐじゃないですか!?』

「画期的だろ?」


 我が自信満々に答えると、


『画期的すぎるわ!!もっと曲がり角を作るとか、分かれ道を作れ!!』

「そんなことをすれば、侵入者が迷ってしまうだろう!!」


 侵入者が来なければ暇だし、迷いすぎて、疲労困憊な者と戦うなど卑怯な真似が出来るわけなかろう。


迷宮(ダンジョン)の意味を調べてこい!!』


 















 残りDP75

ありがとうございました。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


名前 幻さん


種族名 リビングコア 


ユニークスキル 【ダンジョンボス召喚】×1


エクストラスキル 【ダンジョン制作】


スキル 【念話】Lv5 【転移】Lv1


保有DP 325・・・


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「幻さん、体の中が疼くんだけど」

『……気のせいじゃないですか?』

「そうかな?……病気じゃないよね?」

『病気じゃないです』

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