闇の王
すみません。昨日は寝てしまいました。
(Side:???)
ここは、どこだ?
暗い、そして、生暖かい。ここがどこかわからず、安全かわからないため、我は慎重に手探りで周囲を探る。目が慣れてきた故に、ここがどこかの洞窟だとあたりを付ける。
出入り口は見当たらないが、差し迫った危機はないので、腰を落ち着かせる。
本当にどこなのだ、ここは?洞窟かと思えば、地面や壁面が妙に柔らかく、それでいて脈打っているように思える。よもや、化け物の腹の中ではあるまいな、などと、自分でもどうかしていると思える想像をして、一人笑う。
と、そこで言い知れぬ恐怖が襲ってきたのだ。それは化け物の腹の中や監禁されている可能性を考慮した恐怖ではない。そんなもの今の我の状態を考えれば、どうってことはない。
それは、己が存在理由。根源とも言うべきものに関わる問題だ。
この世に生を受けて以来、ここまで来た経緯が何一つ記憶にない。友との語らいも、愛した者の体温すら思い出せないのだ。なんと情けなく、不甲斐ないことか……。
そう記憶が一片の欠片もないのだ。
「ここはどこ?私はだれ?」
そんな、我のつぶやきも虚しく、何もない洞窟に反響するだけだ。
「――――ハッ!?まさか、これが記憶喪失か!?まいった、記憶喪失になったのは初めてだ。どう対処すべきか……」
しかし、それならば、すべて腑に落ちる。
「――――まぁ、記憶ないから、初めてかもわからぬがな。ハハハハハハ」
そう納得し、我は笑い声を上げていると、
『お前もか!!生まれたばかりで何言ってるんだ!!』
「何奴!!」
ここには我以外いなっかたはずだ。突然声をかけてきた怪しい声に我は素早く立ち上がり、背を壁に預ける。暗闇でよく見えはせぬが、これで背後からの攻撃は防げるであろう。
『私はダンジョンコアです』
「その様なものが何のようだ?姿を現せ」
ダンジョンコアを名乗る者の声は、無機質で生気を全くと言っていい程感じさせない。どこにいるのかと耳を澄ませ、探るが、洞窟内を反響しているというより、洞窟の壁全てから聞こえているようで、居場所が特定できない。
『私はあなたをダンジョンボスとして、召喚しました。あなたにはこれから私とともにダンジョンを運営していただきたいのです』
ここで我はある可能性に気がついた。姿見えない相手。どこからとなく聞こえる声。訳のわからない妄言。これらを合わせれば、自ずと答えは一つに絞られてくる。
「ああ、幻聴か」
これ以外に考えられるだろうか?いきなり、ダンジョンだの、ダンジョンコアだの、召喚だの言われて、信じるものは頭がどうかしている。
しかし、我もこの歳で、幻聴か……。
『あなたもですか……。確かにそう言われれば、否定できませんが、これを見てください』
幻聴が、そう言った瞬間、宙に一冊の本が現れれた。
しかし、幻聴と呼ぶのはいささか気が引ける。しかし、ダンジョンコアと呼ぶのは呼びにくい。
「幻さん。これは?」
『お前もか!?……もうそれでいいです』
おお、怒られてしまった。怒るときの言葉には血が通った者だと感じることができて、少し安心することができた。
しかし、我以外にも幻さんと呼ぶものがいるのか……。なかなか、見所があるではないか。
そう、我がまだ見ぬ友に思いを馳せていると、
『それはダンジョンの書といいます。最初のページを開いてください』
その言葉に従い、我はその書物を開いた。
「ガレア=ノグティス=ドゥンケルハイト……」
そのページには、一人のガタイのいい男と漆黒の翼を持つ怪物が描かれていた。怪物の横には大きさを比較するためか、先程の男が小さく足元に描かれており、怪物は高さだけでも五倍はありそうだ。
となりのページにはその特徴や現在のステータスと言う項目が細かく書かれていた。
『それがあなたの名です。暗黒龍の一種であり、名がそのまま種族名となる唯一無二の魔物。まさか、ダンジョンボスとはいえ、【固有種】を召喚できるとは……。さすが、腐っても【創世の魔物】ですね』
最後の方は聞こえなかったが、どうやら、この怪物は我のようだ。そう思うと不思議と納得できてしまう。これが本能というものなのだろうか?
『では、ステータスを意識してください』
言われたとうりに、ステータスというものに意識を集中させた。すると、ページが変わり始めたではないか。どうなっているのだ。
『それが、ダンジョンの書の機能の一つです』
今は、そう言うことにしておこう。どのみち記憶はないのだ。従うしかあるまい。少なくとも今はまだ――――
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名前 ガレア=ノグティス=ドゥンケルハイト
種族 ガレア=ノグティス=ドゥンケルハイト(暗黒龍王種)Lv1
ユニークスキル 【闇の支配者】【龍王の器】
エクストラスキル 【人化】LV5
スキル 【闇属性魔法】Lv1 【剣術】Lv1
称号 【闇の支配者】【暗黒龍の王】
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ふむ。わからん。基準が分からないからには、自分をどう評価すればいいのかすら、分からぬ。
そう、どう評価すればいいのかを悩んでいると、
『す、すごい。まさか、これまでとは思いませんでした』
幻さんの驚愕した声が聞こえてきた。あの幻さんが取り乱すのだ。余程の事だろう。
「説明を頼む」
『はい。先程まで言いましたが、名がそのまま種族名となる唯一無二の魔物です。龍王種はそのほとんどが、種の平均ランクがSSSランクを超えます。それにユニークスキルが二つもあるのはすごいです。普通は一つでもあればいいほうなのに……』
「平均ランク?」
聞きなれない言葉が聞こえてきたSSSランクとはどれほどのものなのか?
『種の平均ランクとは、その種族の成体の強さをランク付けしたもので、FからA、SからSSS、更に規格外なものに【神域の魔物】がいます』
なるほど、ならば、我のランクは高いのか……。
『ですが、あなたは生まれたばかりなので、ランク的にEランクが妥当だと思います』
「そういうものなのか」
自分の力量を誤って死ぬ程愚かなことはない。そう言う意味では助かったと言うべきか、そんなことを考えていると、
『あなたは名が種族名なので、あなたがすぐに死ぬとガレア=ノグティス=ドゥンケルハイトと言う種族のランクはEランクということになります』
我を煽るようなことを言ってきおる。だが、そんなことでいちいち腹を立てるほど狭量ではない。
『あなたは史上初めてのEランクの龍王(笑)になるということになります』
「やってやろうではないか!!見ていろ!!我が歴史に名を残すところを、我の成長を一瞬たりとも見逃さず、そばでその目に焼き付けるがいい!!」
ここまでコケにされ、黙っていたのならば、男では無い、と我が憤っていると、
『では、ダンジョンボスとして、私と共にダンジョンを運営していただけますか?』
「ああ、すべて我に任せるがよい」
洞窟の中央に淡い光を放つ水晶のような物が現れた。明かりが灯り初めて洞窟の全貌が見えた。赤く鼓動している。まるで、生き物の体内のようだ。明かりに照らさりることで、より不気味に脈打っている。
『手を触れてください。それは私の一部です。それに触れれば、正式にダンジョンボスとなります。そして、敵に壊されないようにしてください。壊されれば、ダンジョンは崩壊し、あなたも死にます』
なるほど、これを守るのが、ダンジョン経営の一つという訳か……。敵とは何だ?これが壊れれば、本当に我は死ぬのか?
『怖いのですか?』
「そんなわけなかろう」
我は不敵に笑い、水晶に触れた。
『これから、よろしくお願いします。ガレア=ノグティス=ドゥンケルハイト様』
【称号:ダンジョンボスを取得しました】
【称号:ダンジョンボスにより、エクストラスキル【ダンジョン制作】を取得しました】
生気のない、幻さんとは違う女の声が響いた。
ふむ。
「幻さんはどうやって、我に話しかけているのだ?」
結局、姿を見せていない。水晶の明かりで洞窟全体が照らされているが、我以外のものは存在しない、ということがわかった。ならば、どうやって声を届かせているのか……。洞窟の外から大声で叫んでいる訳ではあるまい。
『ああ、念話と言うスキルです』
な…だ……と?こやつ、脳に直接!?
『お前もか!?』
ありがとうございました。
煽られ耐性の低さ。そして、まさかの天然系です。幻さんの苦労は続きそうですね。次回もまた、別サイドです。この小説は三勤交代シフト制です。
いま、テストが忙しいのでテストが終わるまで、更新できません。
テストが終わるのは来週の木曜ですが、それまでに更新されたら、こいつテスト捨てたな、と生暖かい目で見守ってください。
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