探偵事務所(3)
真司というやつの話を聞いてから俺は彼女の周辺を調べていた。
もちろん、仕事ではない。仕事は仕事でこなし、空いた時間を舞さんのストーカー事件に当てていた。
「……そうか、彼女両親が……」
悪いとは思いながらも彼女のことを調べていたら両親が亡くなっていること、一人であの店を切り盛りしていることがわかった。
知れば知るほど、もっと彼女を知りたくなる。
それより今はストーカーだ、と言い聞かせながら彼女の身辺を洗う。
一番のストーカー候補は……今のところ……こいつだな……。
「ってなんで俺なんだよ!」
「舞さんに必要以上に迫ってたしな」
「あ、あれは、その……好きなんだよ、舞さんが!すっげー可愛いし、笑顔とか天使だし……」
「わからなくもないな……」
「だろー?……ってあぁ!お前、舞さんのこと……」
「バカ言うな、そんなんじゃない」
こいつ、真司はことあるごとに来ては、舞さんのことを聞いていく。
だが、進展はまったくない。むしろ、彼女を恨む奴、彼女の交際履歴というものもまるで出てこない。
「あーあ、あんたに任せたのが間違いだったかもな!」
「そう思うならもう来るな」
「やだね、報告はしてもらうからな、舞さんのこと、スゲー心配だし!」
はぁ……こいつ、本当に面倒な奴だ。
「あ、そうだ!俺、この後レモングラス行くんだけど、お前もいく?」
「あぁ……それと、お前と呼ぶな。歳上だぞ、お前よりもな」
「え?俺24だけど、あんたは?」
「29だ」
「くっそー!5個も違うのかよ!」
真司は苛立ちを隠すことなく髪を無造作に掻きながら歩いている。
俺はその後をついていく。
感情表現が豊かな奴だ……俺はそんなこいつが少し羨ましくも感じていた。
少し素直になれたら、君に話しかけられるだろうか。ほんの少しの勇気で君に……。