探偵事務所(2)
俺は真司と呼ばれる奴から意外な情報を聞いた。喫茶の舞さんのことだ。
「彼女が狙われてる?……バカ言え、お前の妄想だろう」
「違うって!ほんとに!まじで!がちで!」
「何語だ、それは」
「だから、とにかく!舞さんが狙われてるのは間違いない!」
「なぜわかる?」
イマイチこいつの言うことは信用できない。
舞さんが狙われてる?
恨みを買うような人でもないだろう……
「ストーカーだよ、ストーカー……」
真司は切り出した。舞さんがストーカーに狙われている、と。
そうきたか。それなら妥当だ。あんなに可憐で、綺麗に微笑む人は見たことがないからな。
綺麗も可愛さも持ち合わせている、最高の女性だ。今ならストーカーになるやつの気持ちもわからなくはない、なぜなら……
「おい……おいって!聞いてるのかよ、俺の話!」
「あ?……あぁ、すまない」
「ったく……仕事しろよなぁ……」
と言われたが、俺は彼女のことで頭がいっぱいになっていた。
まさか、俺がいつか彼女のストーカーになるんじゃないかと不安になるほどだ。
「でさ、この前電話があったんだよ!舞さん電話に出た途端怯えたように切ってさ……様子がおかしくて……いつもならそんなこと絶対にないし」
「まぁ……確かにそうだな。普段なら電話にも明るく出ていたはずだ」
俺は何度か見たことのある彼女の電話対応を思い出していた。
明るく、顔も見えない相手にも関わらず丁寧に笑顔で応えていた。
「他にもあるんだよ!実は、この前、顔は見てないけど、お店の前で〈帰ってください!〉って必死に誰かを追っ払っててさ……俺がいこうとしたら〈大丈夫です!〉って」
「それは確かに変だ……」
俺は話を聞けば聞くほどに彼女のことが心配になっていた。
「だろー?だから、調べてほしいんだよ!」
俺たちの話を聞いていた上司が後ろからやってきてため息をつきながら俺たちに「でもさ、本人がストーカーに合ってるって言ったわけじゃないんだろ?じゃあ調べようもないな、なぁ、蓮」
俺にはその言葉などまったく聞こえなかった。彼女の身を案じることで精一杯……いや、彼女のことしか考えられなくなっていた。
「えー……そんなぁ……」
真司というやつの落胆した声さえも耳に入らないほどだった。