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クールな彼と私、時々ライバル  作者: いちごぷりん
二人の出会い
10/10

喫茶《レモングラス》にて(7)

私は一日蓮さんにお店を任せることになり、彼に簡単に何をやるかを伝えていった。


彼に任せるのはケーキセット。これだけにしておくことに。ケーキはあらかじめ作っておき、セットに付くドリンクはコーヒー、紅茶、オレンジジュースのみにすることで、一日は持ちそうだ。


お客さんには事前にお知らせしておけば、大丈夫なはず。



「……という感じで……」



一通りメニューの方は大丈夫そうだ。なぜなら物凄く、彼は器用だったから。ほんとに物凄く。



「客が途絶えなかったら合間で皿を洗えばいいんだな?」


「あぁ、それはスポンジが勝手に……」


「スポンジが勝手に……?ここは自動で洗うシステムか?食洗機だと時間がかかるだろう」


「え?あ、今のは……あ、そう!このスポンジで洗ってください!働き者で……じゃない、使いやすいんです!」


「?……あぁ、わかった」



何とか誤魔化せた。

もう!私ってば何言ってるの!おかしい人だと思われるー……あぁ、もう!



「まぁ、一通りわかった。なんとかなりそうだな。4時間くらいなら」


「ほんとにすみません……無理を言ってしまって……」


「構わない、と言ったはずだ。君も休みが必要だろう……相手があいつじゃ、役不足だが」


「そんなことありませんよ、真司さんは優しいし、楽しい人ですし」


「……そうか、それもそうだな」



あれ……なんだか一瞬彼の表情が曇ったような気がした。ほんとに、一瞬……私、また何か変なこと言っただろうか……はぁ、失敗続きだ。



「じゃあ、俺は仕事に戻る……何かあったらここに連絡してくれ。俺の電話番号とメールアドレスだ」


「え……あ、はい」



わ、蓮さんの連絡先……う、すぐ登録したい……でもさすがに登録したら迷惑かな……



「あ、あの!」


「なんだ?」



カウンターから出ていき、いつもの黒のコートを着ようとしている彼に思わず声をかけていた。



「登録、してもいいですか?……あ、用がなかったら連絡しませんから、絶対に!」


「……あぁ、構わない」



まただ、また目線を下に……やっぱり引いてるかな、嫌われたかなぁ……。



「用がなくても……構わない、連絡しても」


「え?」


「重要な用じゃなくても、いい。気軽に連絡してくれ」


「あ、は、はい!ありがとうございます!」



とてつもなく嬉しかった。ただ、些細な一言なのにこんなに嬉しくなるなんて。


私も心底単純だなぁ、と思ってしまうわけで。



「じゃあ、俺はこれで」


「はい、ありがとうございます」



いつものように彼の後ろ姿を見守る。



今日は彼のことをたくさん知った日。


彼の優しさに触れた日。


私は彼からもらった電話番号とメールアドレスがかかれたメモを無意識に抱き締めていた。

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