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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蟹光線

作者: カニカッティ

6月18日(月)



 今日は席替えがあった。

大好きな良平の隣の席に、今月もなれなかったなんて最悪。

良平も隣の女子がブスの藤林だなんて残念がってるよきっと。

私の隣になったメガネは目が悪いんだから、

自主的に前の列の人と席を代わればいいのに、

良平と代わればいいのに・・・。


 明日の調理実習は小学生ならまだしも、今さらカレーを作るんだって。

しかも外で。野外実習?

自然の中でグループで協力して親睦をなんとか言ってたけど、

ガスコンロとか使うんだったら外とかあまり関係ないんじゃないかな?

別に焚火とかしたいわけじゃ無いけど。


……カレーなら嫌がらせに思いっきり辛くしてもばれないよね?

辛くなっても香辛料を持ってきた藤林のせいだね、アハハ。











6月19日(火)



 どうしよう、良平が授業中に突然いなくなっちゃった。

5限目が過ぎても見つからないから今日の放課後の部活動は中止。

「生徒は速やかに帰宅するように」って放送で言ってた。


良平のお父さん(?)が学校に来て、担任を怒鳴りながら会議室に入っていくのが見えた。

お父さんもやっぱりカッコよかった!!とか、

そんな事考えてる場合じゃないってば私。



 調理実習で包丁とかまな板とか、いろいろな調理器具を取りに行った時までは一緒だった。

取りに行ったのがクラスの最後の方だったから、二人きりになれてラッキー!

「やばい遅刻」なんて言いながら笑ってた。チョー幸せな気分だった・・・のに。


私がまな板とかピーラーとか集めてボウルに入れて運んでたんだけど、いきなりガシャーン!って。

何も言わなくても重たい物を持ってくれて、「良平ってやっぱりイケメンだなぁ~」って眺めてたら

突然シュッて感じで居なくなってビックリ!

と言うか、訳変わらないよね。

目の前に居たのにホント突然居なくなっちゃうんだから。


 良平が持ってたはずのお鍋が大きな音を立てて床に落ちて凄く焦った。

廊下に居た人が驚いてドアからのぞき込んでくるから、

私が落としたみたいになってめっちゃ恥ずかしかった。

お鍋の中に何か入ってた気がするけど、急いで蓋をして何もなかった風に片づけておいた。

……底の方が凹んでたけど、私のせいじゃないし。


 お陰で私一人で班で使う道具を持っていかなくちゃ行けなくなって、実習に遅れた。

持って行ってる最中、良平は影で私の事をバカにしてるんだろうなって思ってイライラした。

ケド、実習場所の中庭に行ったら「良平は?」って聞かれて、こっちが「え?」ってなった。

よく分からないけど、良平が私に嫌がらせであんなことをしたわけじゃ無かったらしい。



そうだよ、良平が私にひどい事するわけないじゃん!

疑ってごめんね良平、嫌われてなくてよかった。


 一人で道具を全部もって来れるわけがないから遅刻じゃないって。

でも来てない良平は遅刻にされた。

「女子に任せてあいつはどこで何をしてるんだ」ってみんなが良平を悪く言うから、

私はモヤモヤした気持ちになった。


 良平を除け者に始まった野外での調理実習。

凹んだお鍋が見つかるのは困るので、班の男子と一緒に取りに行ったせいで変な誤解をされた。

変な噂しないでよ藤林、あとメガネは顔を真っ赤にしててなんかキモイ。

せっかく良平と同じ班になれたのに……藤林はいるし、良平は居なくなるしでガッカリな2時間だった。


良平…どうして突然いなくなったんだろう?











6月20日(水)



 昨日落ちて凹んだお鍋を隠すために、今日はいつもより早く登校することにした。

慌てて蓋をして凹んだ場所が見えないように戻しておいたから

まだ、お鍋の中に何個か他の調理器具が入ってる…と思う。


適当な理由で借りておいた鍵を使って、そそくさと調理器具室の中に入った。

昨日はお互いが何を持つかとか、世間話も交えて互いの近況とか、なんかいい感じだったのがウソみたいだね。


良平が落としたお鍋はよく見ると蓋がちゃんとハマってない。というか綺麗に蓋が閉まらなかった。

壊れていることが簡単にバレそうだったので昨日はメガネの意識をそらすのが大変だった。

お陰で変な誤解されちゃってるんですけどゴメンね、君はハッキリ言ってタイプじゃないの。

でも、ちょっと気のある様な振りをして顔を真っ赤にして必死になってる姿を見るのは悪い気分じゃないよ、好みじゃないけどね。


 すこし蓋が浮いてしまってるお鍋を両手にとって机に置いた。

……何か蓋がコトコト動いてるんですけど!怖い!!

本当、昨日からおかしなことばかり起こると思う。


恐る恐る蓋を手に取って開けると、開いた隙間から「にゅっ」と、何やら赤く細いナニカが飛び出してきた。


「ギャァァアア―――――ッ!」


自分の口から女の子らしくない悲鳴が出るのと同時に、

お鍋から赤いナニカがずり落ちて、床でボテッという音を立てた。

恐怖で後ろに飛び退いてバランスを崩し、床に尻もちをついていたら、

赤いナニカが飛び出した時に傾いたお鍋は机の上から落ちて、

すぐ下にいるナニカに直撃して「グジャッ!」っと不気味な音を立てた。



 目の前で生まれたグロテスクな赤いナニカ。

目の前で発生した一連の恐怖体験で、私は立ち上がれないまま頑張って後ろに這いずって逃げた。

直ぐに壁に突き当たり逃げ場を失うと、パニックに陥った私は泣き叫んだ。


「助けて良平~!」


たぶんそんなことを叫びながら涙を流してたと思う。

私が泣いている間に結局誰も来なかったのは、幸か不幸か?

しばらくして落ち着きを取り戻した私は勇気を振り絞って赤いナニカが一体何なのかを眺めた。

赤いナニカはタダのタラバガニだった。

それが本当にタラバガニなのか、実際はズワイガニなのかっていう本当の名前はよくわからないけど、

とにかくスーパーで一杯1万円とかで売っていそうな、大きな赤いカニだったの。



 もう、何でカニがあのお鍋から出て来たのかとか、良平は一体どこに居るのかとか、

気になることはいっぱいあったけど、目の前の惨状を早く何とかしなくちゃいけないと思ったから、泣きべそをかきながら頑張った。

底が割れてしまったお鍋を端っこの棚に隠して、お爺ちゃんの家からコッソリ借りてきた物と交換しておく。

ゴメンねお爺ちゃん、今度パパのヘソクリで最新の圧力鍋を買ってもらうから許してね。


あれ?ちょっと待って・・・

これって元はと言えば良平が突然居なくなってお鍋を落っことしちゃったせいじゃないの?

良平、帰ってきたらただじゃおかないから・・・。


 私を散々泣かせてくれたカニさんは甲羅(?)の部分にヒビが入ってたのにピクピク動いてて気持ち悪かった。

でも見つかったら困るのでとりあえず冷蔵庫に隠しておくね。


あ、お爺ちゃんには鍋の代わりにこのカニを返しておけばいいんじゃない?

私ってば頭いい~♪

帰りも実習室のカギを借りないと。

泣きつかれたけど重たいリュックが軽くなったし、何かスッキリした気分。


……今日も良平は見つからなかったみたい。











6月21日(木)



 どうしよう、良平が見つからない!

これって誘拐なんじゃないの?どうして良平が誘拐されるの?

今では学校では様々な噂が飛び交い、昨日から警察の捜査が行われているんだって。

聞き込みをしても何処かで見かけたとか、連絡が付いたという人がいないし、

そもそも学校を出たところを見た人もいない。


 最後に良平に会ったのはどうやら私みたいだって言われた。

良平がなぜいなくなったのか、いなくなった状況とか聞かれても、私にもよく分からない。

結局割れたお鍋も見つけられるし、何か私まで変な疑いの目を向けられるし、何で私ばっかり・・・。

早く帰ってきてよ良平、あんたのせいで私の日常がピンチなんですけど!


あ、カニ鍋はおいしゅうございました(๑´ڡ`๑)

おじいちゃんはやさしいな……。

それに引き換えうちのママは…別にいいじゃんおじいちゃんの鍋なんだし。











6月22日(金)


 おじいちゃんが若いころのアルバムを見せてくれた。

おじいちゃん滅茶苦茶イケメン、それを射止めたお婆ちゃんも美人さんでした!

こんな孫でごめんなさい、ちゃんとお鍋は返すからね!


 今日も良平は見つからなかった。

刑事さんの聞き込みがいい加減ウザイ。

クラスのみんなもなんか冷たい。

優しいのはおじちゃんだけ。











6月25日(月)



だから知らないって言ってるじゃん!!!

なんでみんな私に良平がどこに居るのか聞いてくるの?


みんなには私が怪しい犯罪者にでも見えてるの?

じゃあ何でそんなに怒ってるのかって

それはお前らがイチイチねちねちシツコク同じ質問を重ねて来るからだろうが!

「良平は?良平は??」って

そんなの私が一番知りたいって言っとろうがバカども!!!!



煩い藤林黙れ黙れ黙れシネシネふじばやし


は?すり寄ってくんなメガネが!!

もうやだキモイみんなウザいしね気持ち悪いなんなのおまえら?


もういいわ、あんたらみたいな猿とおんなじ檻で

勉強なんてできるはずがない!!


しねしねいsねいsjんじぇねしねいsねいsねいしねしねしねいsねいjしんじぇssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssssss












6月26日(火)



 大好きなお爺ちゃんが居なくなった。











7月9日(月)



 やっほー、久しぶりに学校行ったよー。

「相変わらず良平は見つかってない」だって、へぇ~。


 で、それ私に言ってどうしたいわけ?

もちろん居なくなって暫くは悲しかったし、心配だったよ?

一応、私の好きな人だったわけだし。

毎日たくさん泣いたし、「もしかしたら良平が遠い何処かに監禁されてて苦しんでるじゃないか?」とか

いろいろなことを考えてとても心配したけど?


あ、そっかごめんごめん。

貴方たちは「私が誘拐しました、良平君は裸で縛り付けられて寒空の下で可愛がってあげてます」みたいな言葉が聞きたかったんだよね?

ごめんね気づけなくて、もっと私がしっかりしてたら良平が居なくなることもなかったよね?

はい、きちんと反省してますとも。



 え?何で謝るの?

そんな事が言いたいわけじゃなかったって?謝りたい??何を???

ちょっと、いきなりそんなに畏まられても困っちゃうんだけど、私。


それよりもゴメンね、メガネくん改め柏葉くん。

君にはたくさんきつい言葉を言っちゃったよね?

勘違いすんなオタク君とか、完全に偏見入ってたねメガネの人に対して。

むしろ私がなに勘違いしちゃってるんだって感じだよね、うわー恥ずかしぃ。



 ごめんよ柏葉君。

本人は気にしてないって言ってる、少しだけ君の事が好きになれたよ。

柏葉君、君も結構やさしいよね、ありがとう。


けどやっぱり、世の中には言っていい事と悪いことがあるっておじちゃんも言ってたし、

私が君に色々とひどいことを言ったのは事実だしね。

本当ごめんなさい。


 本当にね、世の中にはいっていい事と悪いことがあるんだよ?

みんな分かってくれるよね?

だから謝らなくていいんだよ、だって絶対に…

許さないから。











7月10日(火)



 柏葉君もいなくなった。

今日は蟹雑炊だって。












7月20日(金)



 今日は終業式、明日から夏休み。

この間も2週間ほど休んでた気がするけど気にしないで。

休んでばっかりだね、私。

別に皆勤賞はどうでもいいけど、欠席ばかりだと推薦状とかが書けなくなるらしいから2学期からは真面目に登校しようね?私。


 と、言いつつも無事に2学期が始まるかは怪しいみたいだよ?

教員の人たちは相次ぐ生徒の失踪事件でこの夏休みはずっと仕事なんだって。

2年生の私たちはクラスを再編成しないといけなくなったみたい、大変だね。

色々私にひどい事を言ってきた人たちばかりだったけど、

最後はみんな好きになれた気がするよ。ありがとう。


 ごめんなさい、松永先生。

これから大変な夏休みを送る松永先生へ、休んで迷惑をかけたお詫びをかねてお裾分けをしておいた。

嬉しそうに受け取った大きな発泡スチロールに一杯になった、

凍ったタラバガニを見た瞬間、松永先生は微妙な表情を浮かべていた。



「お、おう・・・ありがとうな、瀬良。しかしこんなに貰っても先生は食いきれないぞ」と先生は言った。


幸いにも、警察の方々も職員室で一緒になって今後の対策みたいなことを話し合っている。

今日はそんな警察の方々と一緒になって事件解決のために懇親会を行うって刑事さんに聞いたから。


私は微笑み、「職員室の皆さんで食べてください」とだけ言っておいた。



 さて、この夏休みは何をしようかしら?

友達と呼べる人たちは、良平君の一件で一人もいなくなっちゃったし・・・。

あれ?私ってもしかして寂しい人?

 

 家に帰っても誰もいないの。

優しかったおじちゃんも、いつも怒ってばかりだけど時々優しいママも、

普段はうっとうしいのに、やっぱり時々頼りになるパパも


寂しい、寂しいの。

今なら少し優しくされるだけで、誰でも好きになれそうな気がするよ。

我ながらチョロイ女だね、私。




6月27日(水)



 昨日、大好きだったお爺ちゃんが居なくなった。

すっかりふさぎ込んだ私。

そんな私にも変わらぬやさしさをくれたおじちゃん。


甘いもので釣ろうとするのは小さいころからずっと変わらないよね。

そんなに単純な年ごろじゃないんだよ、私。

でも食べるんだけどね。



「ありがとう…大好きだよ、おじいちゃん」


私がそう口にした途端、大好きだったお爺ちゃんが目の前から消えた。

代わりにお爺ちゃんが好きと言ってた松葉ガニが足元に落ちてた。



 消えたお爺ちゃん。

現れた松葉ガニ。



 あはは……

あーっはっはっはっは!

 


ごめんね、お爺ちゃん。

ありがとう、ずっと一緒だよ。







・・・おじいちゃんは優しい味がして、とってもおいしいなぁ。

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