14/36
胡蝶之夢
特にこれと言ってすべきこともなく外は蒸し暑そうなので出掛ける気にもなれず両手を頭の後ろに組んで仰向けになっていたら慢性的な寝不足も手伝っていつの間にか転寝してしまっていたようだ。
一体どれ位寝ていたのかと思って時計を見たが目が霞んで針が読めない。
それなら手元の携帯電話で確認しようと思ったが手にしている感覚はあるのに左手には何もない。
これは愈々頭がおかしくなったと思い立ち上がろうとするが上半身と下半身が別の生き物になったかのように上手くいかない。
周囲をよくよく見ると漠然とした雰囲気はいつもと変わらないが注意深く点検するとずっと前に処分した筈の物やそこにある筈のないものが混ざっている。
これは現実ではない。自分よ早く目を覚ましてくれと思いながら手の甲で目の周りを拭ったり親指と食指で瞼を抉じ開けようとしてみたり髪を掻き乱したり耳を塞いだりといった狂態を演じているうちに目が覚めた。
目が覚めて暫くはまだ夢が続いているのではないか起きたと思い込んでいるだけでまた別の夢の中ではないかと混乱していたが周囲から聞こえてくる生活音や己の肉体感覚を具に捉え直してどうやら現実世界に帰還したと安堵することにした。
あまりにも現実と酷似した夢を見ると今自身がどちらに属しているか咄嗟に判断できなくなる。




