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9.お泊り会に恋バナは必須。さあ朝まで語り合いましょう

 



 こんばんは、洞窟ひきこもりスキルに定評のあるオル子でございます。


 エルザと『ヴァルガン洞』に潜って三日が経ったけれど、私たちは今日も元気よくレベル上げに励み中。

 迫ってくる岩人形には私の体当たりでぷちぷち潰して、遠くの岩人形はエルザが魔法ぶっぱで倒してるわ。


「リフレクタ・プリズム展開! サンダー・ブラスター!」


 エルザが習得したリフレクタ・プリズム、その効果はぶっちゃけえぐい。

 一定のエリア内の好きな箇所に設置でき、そこを基点に魔法を反射させることができるという補助魔法なんだけど、これが酷いのなんの。

 まっすぐ直線放射しかできなかったサンダー・ブラスターがリフレクタ・プリズムの反射によって、上下左右どの角度でも撃ち込めるようになってしまった。なんて恐ろしい殲滅兵器なのかしら。

 エルザが言うには、入射角と敵の位置関係を導く計算が必要で、これが楽しいらしいんだけど……計算が楽しいってなんて恐ろしい思考してるのかしら。ぬう、誰か定規と分度器持ってきて!


「などと友人の頭の回転についていけないなと、オル子は溜息をつきながら敵を倒すのだった。開幕シャチ・クラッシャー! 相手は死ぬ!」

「ガガガッ!」


 加速のついた私の突撃でバラバラになっていく岩人形さんたち。すみません、スキルとかじゃなくてただの突進です。

 洞窟内は二メートルくらいの小型のゴーレムがウジャウジャしてるんだけど、私の攻撃やエルザの魔法で一撃死する程度だから大した強さじゃないのよね。

 ステータスを見てみると、こんな感じ。




名前:ストーン・ゴーレム

レベル:13

種族:ストーン・ゴーレム(進化条件 レベル20)

ステージ:1

体量値:E 魔量値:G 力:D 速度:G

魔力:G 守備:D 魔抵:G 技量:G 運:E


総合ランク:F+




 さっきの門番ゴーレムの進化前なのかしら。ステータスが全体的に一回りも二回りも下って感じなのよね。これが相手じゃゴーレム無双ゲーになるというもの。

 でも、外のカブトムシとかよりは経験値効率ずっといいみたいなので、コツコツ倒して稼ぎ中。よし、殲滅完了。

 エルザの方も終わったらしく、ふうと息をついていた。ううん、美少女はどんな姿も様になるわね。


「お疲れ、オル子。今日はこのくらいで終わりにしましょうか。魔量値も尽きそうだし」

「にゅいにゅい。それじゃ、我らがホームへと戻りましょう」

「最後の方はなかなか敵に会えなかったわね。三階層もほとんどの敵を倒し尽しちゃったかしら。レベルもかなり上がっているし、明日は下の階に向かってみましょうか」

「おーけい! レベルも20にだいぶ近づいているし、良い感じだわー」


 今の時点で、私のレベルは18、エルザは17。

 かなり順調に上がってきてて何より。ここまで良い感じなのは、やっぱりゴーレムと私たちの相性が非常にいいみたいなのよね。

 ゴーレムは頑丈でパワーのある魔物だけど、素早さと魔法抵抗に難があるタイプ。

 そんなゴーレムちゃんは、高火力魔法使いのエルザにとって良い的だし、そのエルザを排除しようにも、私という壁が接近を許さない。

 何より、私のシャチ肌はボスでも何でもないゴーレムの攻撃なんか通さない。結果、ゴーレムは私たちに何もできないって感じで終わるのよ。


「むふ、これぞステータスと相性に物を言わせたパワー攻略ね! 対策? 対処法? ノン、そんなものはナンセンスだわ。合言葉はただ一つ、レベルを上げてエルザで殴れ! 火力、イズ、神!」

「それが一番効率的だからいいじゃない。さ、着いたわよ」


 一つ上の階のフロアに戻り、昨日の夜、拠点にしていた少し広めの部屋に戻ってきた私たち。

 アイテムボックスから布のシートを取り出し、エルザはそれを床に敷いてくれた。直接地面に座るの嫌だからね。汚いからね。

 そして、自分と私に『クリーン・ライト』なる魔法をかけてくれる。この魔法で体や服の汚れが全部綺麗さっぱり落ちてくれるらしい。異世界って便利ねえ。


「でも、やっぱり私としては温かいお風呂に使って『ああ、今日も一日頑張った私!』ってやりたいのよね。お風呂、お風呂、お風呂が恋しいよお」

「昨日もそんなこと言ってたわね。大きな器に水を張って、加熱するんだっけ。『イセカイ』の『ニンゲン』って変な習慣があるのね。今のオル子が入ったら、ただの魚料理に見えそうだけど」

「誰が魚鍋か! 哺乳類として断固抗議するう!」

「ここを抜けたらできるかどうか試してあげるわよ。火と水は魔法で何とかなるだろうし、あとはオル子が入るだけの器をどうするかだけかしら」


 おお、どうやらお風呂は期待できそうですよ? やったー! お風呂だー!

 流石エルザ、私、あなたに出会えてよかった! あなたは私の永遠の親友よ! 出会って三日しか経ってないけど!


 洗浄を終え、私はエルザの用意してくれたシートの上にどっかりと横になる。

 そして、その私のどてっぱらにエルザは背を預け、アイテムボックスから紙と羽ペンらしきものを取り出して作業を始めた。

 なんでも魔法の効果やテストの成果を紙にまとめているらしいんだけど、私にはちんぷんかんぷんなのてノータッチ。頑張れ、エルザ、私は邪魔しないよ! いい子だから!


「エルザ、エルザ、お腹空いた。リンゴとってくださいな」

「はいはい、ちょっと待ってね」


 誓った瞬間から邪魔してしまいました。お腹は空くからね、仕方ないね。

 エルザはリンゴを四個取り出し、私の前に置いてくれた。私はそれをモシャモシャと丸かじり。うむうむ、やはりジューシーなリンゴは丸かじりに限るわ。

 するっと四個食べ終え、ごちそうさまでした。お腹いっぱいでござる!

 シャチのどでかい体なのに、なぜか四個くらいでお腹がいっぱいになるのよね、不思議。これじゃ私の生前、人間時代となんら変わらないわね。なんて低燃費なボディなのかしら、今流行りのハイブリット・カーならぬハイブリット・シャチなのかしら、私。


 あほなことを考えていると、エルザも作業を終えたらしい。

 アイテムボックスから干し肉と水、そしてリンゴを取り出して夕食タイム中だ。肉いいなあ。欲しいなあ。じー。

 私の視線に気づいたのか、エルザは千切って分けてくれた。わはー! 肉だー! エルザ大好き! 私、一生あなたについていくわ!

 もしゃもしゃと干し肉を食べてると、エルザがクスッと笑う。


「なんだか大きな魔物を飼った気分ね」

「ペットと申したか。まあ、確かに私の溢れ出る可愛さは飼いたくなるという気持ちになるのも分からないでもないのだけれど。申し訳ないけれどヤンデレ監禁エンドはNGよ?」

「オル子ってあれよね、アホ可愛いわよね」

「だ、誰がアホだー!」


 可愛い顔してとんでもないこと言いますわよ、この小悪魔。

 現代社会の義務教育を終えている私は、この中世風の世界なら知識チートだってできるんだから! そういう意味では、アホどころか智慧の塊とも言えるのよ!

 醤油の作り方? 米の栽培? 蚕の育て方? アー、ニホンゴ、ムツカシイデスネ。オルコ、ワカリマセン。


「私のアホさは置いといて、この洞窟どこまで潜る感じ? このままだと、明日にはレベル20で進化迎えそうだけど」

「そうね、大分効率も落ちてきたし、二人進化したところで切り上げましょうか。ここを出たら、もっと強い魔物がいる場所を探さないとね。西は人間たちの支配地域なるから、東に行くか南に行くかってところだけど」

「西に行くと人間がいるの? 逆に東とか南は人間がいないの?」


 私の質問に、エルザは呆れることも馬鹿にすることもなく丁寧に説明してくれる。

 なんでも、大陸の西側は人間たちが住む地域で、西に行けば行くほど魔物がいないらしい。人間たちが自分の住処を守るために、駆除しているらしいわ。

 逆に、東は魔物の支配地で、魔物だけが存在しているらしい。このあたりも東側だから人間はいないってことね。


「つまり、人間の住む西側は森や洞窟みたいな支配者がいないってこと?」

「人間が支配者として君臨しているのよ。もっとも、私たちとは違って、人間は『強さ』が基準ではないみたいで、子孫へ支配地の譲渡を繰り返しているみたいよ。一番強い奴が支配者になる方が合理的なのに、不思議なことするわよね」


 なるほど、つまりは王政ってことかしら。

 魔物は土地を強い奴が支配して、人間は権力を持つ者が支配する。うむ、納得。

 でも、そんな風に人間と魔物の領地を区切っているなら、国境沿いの争いとか大変なんじゃないかしら。


「んー、どうなのかしらね? 三年前までは先代魔王が人間たちの領地に攻め入っていたから激しかったみたいだけど、先代魔王、負けちゃったからね。魔王は死んで魔王軍は崩壊、人間たちも戦争で大きなダメージを受けているから、今はそこまでないんじゃないかしら」

「ううん、この他人事。いいの? エルザたちの王様が殺されちゃったんでしょ? 『魔王様の敵討ちー!』みたいなことになったりしない?」

「どうして? 魔王なんて魔物の中で一番強い称号というだけよ? 私は魔王の部下になったことなんてないし、一緒に人間と戦争しようとも思わなもの。そもそも、ウィッチの里の支配者は先代魔王じゃないし、従う理由もないわ」


 なるほど、そういう考え方なのね。

 よくある漫画とかRPGみたいな、全魔物=魔王の部下って訳じゃないんだ。また一つ勉強になりました。


「でも、そうね。もしオル子が次の魔王になるのなら、部下になってもいいわよ? あなたも支配者の一人になっているんだし、その調子で支配地域を集めたら次の魔王も夢じゃないわね」

「嫌よ、そんな物騒なのは断固拒否でございますわ。エルザ、あなたは部下なんかじゃなくて友達、マイフレンドよ。どうか私を見捨てて魔王に走らないでね。あ、でも魔王がもし格好いい殿方だったら3-3くらいで合コンをセッティングして頂戴、私頑張っておしゃれして参加するから!」

「また意味不明なことを。でも、友達……異種の魔物同士の友達、か。うん、悪くないわね」

「あ、デレた。エルザがデレた! ちゃっちゃちゃーん! オル子はエルザを攻略した!」


 調子に乗ってたら頭をはたかれたでござる。ぐぬう、ツンデレめ。

 そんな風にエルザとお話して、眠気がきたところでお開きになった。私が先に寝て、その後は交代でエルザが寝るのは昨日と同じ。見張りしないと、魔物に襲われたら大変だもんね。

 ささ、明日はこの洞窟の大詰めだし、しっかり休んで頑張るとしましょう。おやすみなさい、ぐーぐー。



 

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