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74.未来の淑女をこの手で育てる、実にやりがいがあるものよ

 



「それでは主殿、行って参ります。また後程」

「あいあい! また後でー!」


 別れを告げ、クレアは剣霊ポチ丸を肩に乗せて森の奥へと消えていった。

 私とミュラ、ミリィ、そしてエルザママは湖のほとりでお留守番。レベル上げ開始三日目、今日もオル子さんとクレアは別行動です。


 一緒にレベル上げをしようと言いながら、別行動を取っている私たち。

 これは別に、クレアと喧嘩したとかそういう理由では断じてないのよ。これには深い理由があるのです。

 昨日、クレアと一緒に魔物を狩ろうとしたんだけど、あまりに効率が悪いことに気づいたの。その理由はミリィ。


 経験値を手に入れるためには、戦闘において少しでもいいから貢献をしないといけない。

でも、ミリィはまだステージ1、それも動きが俊敏とは言い難いからどうしても私やクレアの動きについていけなかったの。

 最低でも一発はミリィに敵を殴らせなきゃいけないんだけど、その足並みに合わせていては、クレアのレベル上げがおろそかになっちゃうのよね。


 エルザたちとも相談した結果、クレアとポチ丸は単独でレベル上げをしてもらうことに。

ウィッチの森の周囲の敵はそれほど強くないから、私やミュラの助力なくてもクレアが後れを取るなんてまず考えられない。

 そんな訳で、オル子さんとミュラはミリィのサポートに集中するという訳です。


「さあ、今日も張り切ってレベル上げをするわよー! ガンガン魔物を倒していきましょう!」

「きゅるっくー!」

「応援してるわよ、オル子ちゃん!」

「待て。頼むから、ちょっと待ってくれ」


 私の掛け声に、元気いっぱいの声を返してくれたミリィとエルザママ。そして少し遅れて疲れ切った声を漏らすササラ。ぬ? どしたの?

 首を傾げる私に、ササラは地面を何度も踏みながら声を荒げてしまう。


「なんで! 俺が! レベル上げに参加してるんだよ! なんで俺が魔物退治に連れてこられてるんだよ!? おかしいだろ!? 力を貸してほしいって、物作りに関することじゃなかったのかよ!? 俺は非戦闘要員だぞ!?」


 どうやらササラは魔物退治に連れてこられたことがご立腹のようですな。

 まあ、確かに館から連れてくるときに手伝ってとは言ったけど、魔物退治とは言ってなかったもんね。私はむいむいとヒレを振りながら理由を説明することに。


「あのね、エルザがね、試してほしいんだって。非戦闘要員であるササラに経験値を積ませることで、『オルカ化』したらどんな変化が起こるのか」

「はあ!? オルカ化ってあれだろ、オル子の力によって特別な進化して、滅茶苦茶強くなるやつだろ? 俺は戦いなんてやったことないから、強くなっても仕方ないだろ」

「オルカ化するとね、ステータス上昇以外にも特別なスキルをゲットしたりするのね? もし戦いには縁のないササラがスキルを得たら、どんなものになるのかも知りたいって」


 エルザの話では、これは『魔選』の先を見据えた布石なんだとか。

 ハーディンやイシュトスとの戦いでは、私たちだけじゃなくてオルカナティアの軍勢と敵の軍勢のぶつかりあいになる可能性があるからね。オルカナティアの魔物たちの戦力増強は必須と言ってもいいわ。

 そこで、オルカナティアの中でも、信頼のおける上位の魔物たちを選別し、『オルカ化』させてしまうのがエルザの狙いみたい。

 戦闘系の魔物はもとより、ササラみたいな非戦闘系の魔物でも『オルカ化』でき、なおかつスペシャルなスキルを得られたなら、そのまま国の強さにつながるもんね。

 その記念すべき実験一号に選んだのが、ササラって訳。その話を伝えながら、私はササラにお願いしていく。


「なにせ本当に特別な力だからね。エルザに絶対に裏切らない、この人ならって思えるほど信頼する相手にしかまだ『オルカ化』は試せないって言われてるの。それを考えたら、私に思い浮かぶのってササラかキャスくらいしかいないし」

「信頼する、相手……」

「でもでも、ササラが嫌なら無理強いはしないよ! オル子さんは引き際もちゃんと弁えているのです! もし嫌なら、レベル上げしてる間、オル子さんがぶち壊しちゃったエルザパパのテーブルを作ってもらおうかと……」

「……仕方ないな。いいよ、実験台になってやるよ」


 え、いいの? マジで?

 ササラを見つめると、髪をいじりながら唇を尖らせて言葉を返してくれた。


「他に頼める相手、いないんだろ? だったら俺がやってやるよ。お前の馬鹿に付き合う奴なんて、エルザたち以外だと俺くらいしかいないもんな。へへっ」

「ありがたーう! 助かるわ、ササラ! もし無事に『オルカ化』できた暁には、みんな揃って最強の異世界美少女ギルド結成よ! 歌って踊れて戦えて、物作りも出来ちゃうアイドル魔物っ娘ギルドユニット、名付けて『愛され・オール・子ウン』でモンスター界の天下を取るしか!」

「意味わかんねえよ! とにかく協力はするけど、その代わり、戦力としてはマジで期待するなよ!? 俺に出来るのはその辺の石を投げつけたりするくらいだからな! 敵と戦うなんて絶対無理だからな!」


 ほむ。その割には、最初に出会ったとき村を守るために槍なんか持ってたような。

 しかし、ササラの許可を得たことでミリィのレベル上げをしつつ、エルザにお願いされた実験も進められるわね。オル子さんレポート製作なんて無理だけど、情報はしっかり持ち帰るよ!

 とりあえず、実験をやる前にササラのステータスチェーック。識眼ほあたあ!




名前:ササラ

レベル:1(進化条件 レベル20)

職業:ワーカー

ステージ:1

体量値:F 魔量値:E 力:G 速度:F

魔力:F 守備:G 魔抵:F 技量:B 運:E


総合ランク:F+




 ほむほむほむ。当たり前と言えば当たり前だけど、戦闘するには厳しいステータスね。

 あと、種族のところが職業になってるのはあれかな、遠い昔に人間と交わったからなのかな? 魔物は種族表記だけど、人間は職業表記だもんね。

 となると、ササラに試すことでキャスが『オルカ化』できるかどうかも判別できるってことじゃないの? 魔物には成功してるけど、人間も『オルカ化』できるかは分かんないもんね。


「それで、どんな魔物と戦うんだ? 頼むからやばそうなのは勘弁してくれよ」

「きゅっきゅっくー!」


 おっかなびっくりなササラと、ミュラの腕の中でやる気満々のミリィが好対照。ミュラってばしっかりお姉さんしてるわね! 素敵よ!

 とりあえず、私はエルザが計画してくれたレベルアップ大作戦を決行することに。


「レベル上げの方法なんだけど、ササラとミリィの危険は極力排除する方法をとるからね」

「どうやってだ? 魔物と戦う以上、危険はつきものだと思うけど」

「えとね。まず、オル子さんがこの湖に潜ります」


 そう言って私は一面に広がる湖をヒレで指し示した。

 森の中にあるなかなかに大きな湖。色が澄んでいてなかなかに新鮮な獲物がいっぱいいそうです。


「そして、湖の中にいる魚型の魔物を陸まで引っ張りあげます。その魚をササラは工作スキルで生きたまま解体、ミリィはガジガジ噛みます。これを繰り返して、はい、おしまい」

「マジかよ……」

「マジでふ。ササラのスキルは岩だって簡単に削り取れるんだから、魚を解体することくらい簡単だと思うの。はねるくらいしか能のない魚を容赦なく削ってやるのです!」


 私の言葉に、ササラは本気で嫌そうに顔をしかめた。

 ぬう、なぜじゃ。ぴちぴち跳ねまわる抵抗できない魚魔物を解体するだけ、危険もないですぞ。美味しい晩御飯のもとが手に入って、アクア・ラトゥルネの皆さんも大喜び。いったい何が嫌だというのですか。


「いや、流石に抵抗あるだろ……巨大な魚を捌くって、オルカナティアの連中は恐れ多くて誰もできねえって」

「変なことを言うわね? 魚なんて陸に上がれば何もできないって相場は決まってるの! 雑魚ですよ雑魚!」

「水面に映ってる姿を見つめ直してみようとか思ったりしないのか? そこにいる巨大魚は雑魚なのか?」

「え、湖にもう何かいるの? ちょっくら捕まえてくるわ! レッツ・ダイビング!」


 湖に潜ったものの、ササラの言う巨大魚なんていないわね。逃げたのかしら?

 まあいっか。とりあえず、ササラとミュラの経験値という名のご飯を探さなきゃ。愛する子どもたちのために餌を探す私っては母の鑑ね!

 ふよふよ泳いでいると、一メートルくらいはありそうな魔物発見。

 あれはエビかしら? ハサミをもった、ちょっと透き通ったスケルトンな感じのする大エビね。どれどれ。




名前:シザース・シュリンプ

レベル:12

種族:シザース・シュリンプ(進化条件 レベル20)

ステージ:1

体量値:E 魔量値:G 力:F 速度:F

魔力:G 守備:D 魔抵:F 技量:G 運:F


総合ランク:E-




 ふむほむ、ステージ1だけどレベルは12。

 ステージ1のミリィとササラにとっては経験値としてはなかなかいいんじゃない?

 ハサミエビちゃんは私に気づいたらしく、必死にハサミを開いたり閉じたりして威嚇しているわ。

 ふむう、あのハサミはちょっと危ないわね。あんなのがあったらミリィやササラが挟まれちゃうかもしれないわ。噛み千切ろうっと。


『ギィィ!?』


 高速で泳いで近づいて、ハサミ二つを噛み千切ってぽーい。

 よしよし、これで攻撃手段はないかな? ……いや、待って頂戴。もしかしたら、あの尻尾で叩いてきたりするかもしれないわ。

 あんな太い尻尾で叩かれてはササラが危険かもしれない。よし、尻尾も落としましょう。


『ギギギィイ!?』


 腰から下を噛み千切りー。うむ、これなら大丈夫かな?

 ……いやいやいや、待って頂戴。もしかしたら、目からビームとか出たりするんじゃないかしら? 異世界の魔物は何してくるか分からないもの、考えられる危険は排除すべきだわ。目玉もぶちーで。

 ……ううん、なんか口からもブレス吐きそうな気がするのよね。

 触覚も電波とか飛ばしそう。もういっそ頭ごと切り落としましょう。頭部ごとぐちゃーで。


 流石にこれなら大丈夫でしょう。よし、敵を咥えて上昇ゴー。

 潜水艦が浮上するかの如く、私は水面から顔を出し、陸で待っていたササラやミリィの前でペッとエビを吐き出してにっこり宣言。


「さあ、魔物を捕ってきたわよ! 活きが良いとれたてぴちぴちの雑魚よ! 存分にレベルアップに利用してあげなさいな!」

「活きが良いって……俺の目にはただのこと切れた肉塊にしか見えないぞ。死体を殴ってもレベルって上がるのか?」


 そう言いながら、ササラはボディだけになったエビだったモノをツンツンと突く。

 首も下半身も全てもぎ取られたエビが生きてるはずもなく、既にご臨終状態です。やっべ、やりすぎちゃった!

 手加減って難しいぬー。生かさず殺さず、狩りの練習用にしなきゃ……野生に生きる動物のお母さん、オル子マジで超リスペクトですよ!












「ただいま戻りました、主殿……凄い光景ですね」


 クレアが戻ってきて、開口一番に告げた一言がそれでした。

 私たちの周囲にはこれでもかとエビやら魚やらの死骸がバラバラにされて散らばっていて、周囲には血が散乱してるからね。まるで加工場ですよ!

 ササラの加工テクニックもドンドン向上し、今では食べられる部位を次々にブロックにして一か所にまとめてくれてるわ。持って帰ったらみんな喜んでくれそう。


「おかえりクレア! 今晩の料理は川魚とエビのオンパレードだから楽しみにしていてね!」

「あー、くそ、早く『フロ』に入らないと血の匂い取れないぞこれ……よう、クレア。戻りが早いけど、もうレベルが上がったのか?」

「ああ、無事に20になったが……その様子だと、ササラも随分とレベルが上がったようだな」

「そりゃ、これだけの魔物を生きたまま解体すりゃあなあ……俺は6まで上がったよ」


 ちなみにミリィは8まで上がりました。一日でこの成果はなかなか良いんじゃないかしら! ポチ丸は『山王』の最強ボーナス経験値があるから別として。

 でも、クレアが20になったということは……とうとう『オルカ化』がきたのね! 私はヒレをパチパチ拍手しながらお祝いした。


「おめでとうクレア! とうとう進化タイムなのね!」

「ありがとうございます、主殿。これで私もとうとう主殿の名を冠することができます」

「いや、そんな大袈裟なものでもないんだけど……どうする? ここで進化しちゃう? それとも里に戻ってから?」

「この場でやってしまおうと思います。恥ずかしながら、里までお預けというのは我慢できそうにありませんので」


 そう言ってクレアは子どものようにはにかんでみせたわ。

 むふー! 気持ちは分かるわ! 進化の瞬間ってドキドキだもんね!

 みんな静まり返り、クレアの進化に注目する。どんな風に進化するのか楽しみ! ポチ丸も剣から犬に戻って見守りモードよ!


「では参ります……いざ!」


 クレアの体を黄金の輝きが包んでいく。びゅびゅーん! クレア進化―!

 ワクワクして待っていると、光の中からゆっくりとクレアが姿を現していく。

 ぬう! 衣装が変わってる! 白黒を基調とした武士……いいえ、隊士風の服装、ダンダラ羽織って奴かしら! 新選組スタイル!

 そして腰には新たな武器が増えているわね。柄の端にミニオル子フィギュアが乗った、どう見ても玩具みたいな小太刀で、全然強そうには見えないんだけども!

 新たなスタイルになったクレアは、自分の格好を確認しながら第一声を紡ぐ。


「……なるほど。エルザやルリカの言葉の意味、ようやく理解できました。主殿の力はあまりに凄まじい。一度の進化で、これほどまでに強くなれるとは」

「う、うおおおお!? ちょっとちょっと、期待させること言ってくれるじゃないの! ステータスチェックしてもいい!? ねえねえ、してもいい!?」

「ええ、勿論です」


 駄目と言われてもしちゃうんだけども! ぬおおお! 識眼ホッピングー! さてさて、どんなステータスになったのか、どーん!




名前:クレア・グーランド

レベル:1

種族:ブレード・オルカナイツ(進化条件 レベル20)

ステージ:4

体量値:C 魔量値:C(D→C) 力:C 速度:S(A→S)

魔力:F(G→F) 守備:C(D→C) 魔抵:E(F→E) 技量:A 運:B(C→B)


総合ランク:B+(C+→B+)




 うむうむ! 六つも上昇、弱い部分が上がって良い感じね!

 クレアの武器である速度もとうとうSに到達しちゃって素晴らしこ! 総合ランクもB+、ミュラに並ぶほどになったわね! 流石はステージ4!


「凄いわクレア! ランクもB+まで上がってるし、これならポチ丸が『オルカ化』しても大丈夫かしらね!」

「ええ、今ならばD+までの魔物は剣化できますので。ポチ丸、長らく待たせてすまなかったな」

「別に構わねえよ。それで、スキルの方はどうだ? 『オルカ化』すると特別なスキルが手に入るそうだが、お前も何かもらえたのか?」


 ポチ丸の質問に、クレアは頷いて肯定。おおお! 新スキルどんなのかしら!

 期待に胸膨らませる私に、クレアは二つのニュースキルを説明してくれたわ。

 クレアの得たスキルの詳細はこんな感じ。




・(オル子との絆)サカマタ・フェイカー(オルカの短刀を任意の武器に変化させる。変化させる武器は術者が一度でも手にしたことのある武器でなければならない。発動中、術者はサカマタ・フェイカーを解除する以外のスキルを使えない)


・剣豪『紫黒』(単体:近距離:ダメージ2.0倍+吹き飛ばし:力依存、武器性能依存:発動前硬直(微小):CT30)




 ぬう……? スキルの方はこれ、どうなの? 使えるの?

 剣豪『紫黒』は分かるわ。ダメージプラス吹き飛ばしってことは、敵の守りを崩すのに非常に便利な技よね。

 アヴェルトハイゼン戦では堅牢な守りを抜くのに本当に苦労したからね。

 これがあれば、体勢を崩してかつ迎撃がかけやすくなるわ。もちろんピンチの時に距離を取るのに使ってもいいし、便利な技だと思う。


 でも、もう一つのサカマタ・フェイカーは正直言って微妙じゃない?

 武器をコピーするのはいいんだけど、二つに増えたからってアドバンテージがとれる訳でもないし、何よりスキル禁止が痛すぎるわ。

 ぬぬう、おかしい。エルザの銃しかり、クレアの鎌しかり、オル子パワーの武器は便利なものばかりだったのに、ここにきて外れなんて。


「クレア、ごめんねごめんね。なんかオルカパワーのスキル、微妙みたい。こんな筈じゃなかったのですよ! サカマタ・フェイカーがこんなにも微妙な能力だったなんて」

「何言ってんだお前。この力、とんでもねえぞ。クレアが一番驚いてんのは、ステータス向上じゃなくてこのスキルの方だろ」

「え、そうなの?」

「ポチ丸の言う通りです、主殿。このサカマタ・フェイカーは恐ろしいほど強力な能力なのです。ポチ丸」

「試すんだろ? いいぜ」


 アイコンタクトして、ポチ丸はオルトロスへと変化したわ。

 その剣を右手で握ったクレア。ほむ、いつも通りのクレアよね。そして、クレアは腰に下げていた玩具みたいなオル小太刀を左手にとり、楽しそうに説明する。


「主殿、お忘れかもしれませんが、この『オルトロス』には私のステータスを引き上げる効果があるのです。装備しているだけで、魔量値、力、魔力、そして技量がワンランク上昇するのです」

「あ……そ、そうだったわ! ポチ丸剣って恐ろしいくらい破格の武器なのよね! つ、つまり!」

「ええ、このスキルの使い方はこういうことかと――『サカマタ・フェイカー』!」


 玩具のオル小太刀が光に包まれ、その姿を変化させる。

 それは何処から見ても寸分違わぬオルトロス……じゃなかった。やっぱり剣の柄にオル子人形がくっついてる。うわあ、パチモン臭が酷過ぎる。

 オルトロスの二刀流となったクレア。ぬう、なんて威圧感! 目に見えない強烈なオーラを感じるわ! 識眼ホッピングでステータスチェック!




名前:クレア・グーランド(オルトロス二刀流補正)

レベル:1

種族:ブレード・オルカナイツ(進化条件 レベル20)

ステージ:4

体量値:C 魔量値:A*(C→A) 力:A*(C→A) 速度:S

魔力:B(F→B) 守備:C 魔抵:E 技量:S+*(A→S+) 運:B


総合ランク:A(B+→A)




 ち、チート能力きたこれえええ! ポチ丸剣の二本持ちで一気にステータスぶち抜いたあああ!

 攻撃スキルが使えなくても、ここまでくればステータスでごり押しできるレベルじゃないの! まさに能力を上げて物理で殴れですぞ!

 技量もS+まで到達しているのが素晴らしこ! 私ならカスリもしない相手であっても、クレアなら確実に攻撃を当てること間違いなしよ!


「今まで通り、オルトロス一本によるスキルを用いた戦いも出来ますので、状況に応じて使い分けられるかと」

「凄いわ凄いわ! この力なら、たとえ相手が誰であっても負けないわよ!」

『これだけ強くなりゃ『白騎士』が相手だろうと遅れは取らねえだろうよ。ま、もとより負けるつもりなんぞねえがな』

「これが『オルカ化』……本当に凄いんだな。こんな風に俺も進化するのか……」


 ササラがクレアの進化に魅入っちゃってるわね。

 流石にクレアの進化は参考にしちゃ駄目よ! ポチ丸剣のせいで、仲間の中でも一番ヤバい進化しちゃってるんだからね! 本当に心強い剣士さんなのですよ!

 二刀使いになったクレアは、それぞれの剣を独立させて振るってみせた。わ、凄い。初めての二刀流なのに、これまでのクレアと全然違和感ないわ。


「二刀流で戦う分に問題ないようです。技量が高まっているせいか、どう戦えばよいのか体が勝手に動いてくれますので」

「え、技量の能力ってそんなところにも影響するの? オル子さん技量Eだからちっとも体が反応してくれませんよ?」


 私の言葉に、クレアさん困ったように苦笑。

 ぬー……コピーオル子と戦った時も思ったけど、技量って実は重要な数値なんじゃないの?

 私、Eのままで大丈夫なのかしら。心配したからといって、上げる方法なんて微塵も思いつかないんだけども。


「さて、クレアも無事に進化ことだし、次は俺の番だな! 待ちかねたぜ、カハハ!」


 剣霊から実体に戻ったポチ丸が、意気揚々と高らかに宣言。

 そっか。ポチ丸も進化できるのよね。クレアがあまりに鮮烈過ぎて、頭から飛んで行っちゃってたけども。


「クレアがオルトロスを複製できるってことは、状況次第じゃ俺が魔物形態のまま戦うことだってありえるっつーことだ。俺の能力次第でクレアの引き出しが格段に増えることにつながるからな」

「ううん……でも、いくら進化したり『オルカ化』しても、ポメラニアンが魔物と戦う姿をオル子さん想像できませんぞ? もういっそ割り切って、オルカナティアの誇るブサカワマスコットポジションを確立してしまっても。ゆるキャラブームに乗ってですね?」

「まあ見てろや! この進化によって俺は巨大狼にでも姿を変えてやるからよ! イシュトスだろうとハーディンだろうと喉笛を容赦なく噛み千切る、最強最悪の獣にな! クハハッ!」


 ポチ丸が楽しそうにきゃんきゃん吠え回ってる。

 ううん、ポチ丸が巨大狼にねえ……ないわあ。絶対ないわあ。毎日ルリカに晩御飯の肉が少ないって愚痴零してるブサカワポメが狼など片腹痛いでござる。


 でも人が乗れるサイズのポメラニアンもそれはそれで有りじゃない? ポチ丸君! 巨大化した暁には、是非ともオル子さんを乗せてくれても構わないのよ!

 繊細な美少女を背に乗せて草原を走る巨大ポメ、メルヘンチックで実に絵になるじゃないの!





・ステータス更新(レベルアップ一覧)


クレア:レベル19→1 (ステージ3→ステージ4)

ポチ丸:レベル38→41 (ステージ1)

ミリィ:レベル3→8 (ステージ1)

ササラ:レベル1→6 (ステージ1)



 

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