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68.人との縁は必ずあなたの力となるわ。出会いを大切になさい

 



 試練の間に入って三時間が経過。

 現在、私は幽霊さんから大絶賛説教中です。床に転がって反省のシャチホコポーズ! エビぞりになった私の姿に、幽霊さん怒りゲージマックス。あ、やば、謝り方間違ったかも。


「どうして! お前は! 真面目に戦うことができんのだ!」


 げしげしと私の背中ををヤクザキックしながら、幽霊さん大激怒。そんなこと言われてもにゃあ。


 私とコピーオル子のリベンジマッチ、それはそれは酷い有様でした。

 最初は真面目に戦ってたんだけど、当たらない。とにかく攻撃が当たらない。

 私ってば巨体なのに速度がバカみたいに速いから、全然狙いが定まらないんだもん。

 避けるのは速いくせに、攻撃は全部大振りだから避けやすいし。技量Eなのがここで足引っ張っちゃってるんだよね。

 『冥府の宴』を繰り出しても、お互い出す分身数が同じで相殺しあっちゃう。


 ならばと『海王降臨』を展開すれば、相手も『海王降臨』でお返し。

 速度Sと化したコピーに、普段から狙いが粗いと評判の私が当てられるはずもなく。結局互いに効果が切れるまで泥仕合。

 攻撃が当たんないんだから『山王降臨』なんて使う意味もない状態。追加効果に必中追撃ダメージを与える新スキル『キラーホエール・ダイブ』も、初撃を与えなきゃ意味がない。

 

 結局、数十分ほど追いかけっこを繰り広げたものの、互いに心をへし折られ、床に転がって雑談タイム。

 『将来結婚式をするなら洋風と和風どっちがいいか』という議論をしていたところで、コピーオル子さんが幽霊さんに戻ったというわけ。そして現在、激おこ中なの。参ったね!


「そもそも、なぜ戦いを途中で放棄した! まだまだ決着はついてなかっただろうが!」

「えー……無理無理、攻撃が一発も当たんないんだもん。オル子さん疲れました。そもそもね、思考回路も同じ、ステータスもスキルも同じ自分にどうやって攻撃当てるんですか! この試練を考えた奴は正直アホだとオル子さんは思いますよ!」

「お前にアホなど言われたくない! 互いに能力、行動が同じであるならば、それをいかに打ち破るかを考え、策を練ってこそ試練だろうが! 頭を使え、頭を!」

「馬鹿にしないでくれる!? 頭なら使ったわよ! オル子さんの華麗な開幕ヘッドバッドを見てなかったの!?」

「そういう意味じゃない! この馬鹿オルカ! 駄目駄目オルカが!」

「『山王降臨』発動! おほほほ! 無敵バリアー! いくら蹴られても痛くもなんともないですわあああ!」

「一日一回しか使えないスキルをこんな場面で使うなああああ!」


 なんだか幽霊さん、涙目になってる。

 嫌だわ、まるで私がイジメたみたいじゃないの。オル子さんは悪役令嬢ではなく愛され令嬢でしてよ!


 しかし、他のみんなはよくこんな理不尽試練を攻略できたわね。同じ自分、同じスキル、同じ発動なんてどうやっても差をつけられないんですけど。

 あ、そっか。他のみんなはオルカ化してない相手だから、そこで差がある時点で敵は別行動するのよね。クレアは記憶喪失のせいか、別人格みたいな敵が出てきて自分と戦い方すら違ってたみたいだし。

 つまり、オル子さんと同じ目にあってるのはミリィだけなのかな。ミリィがあれだけクタクタになってた意味が分かったわ。

 ミリィ、よく勝てたなあ。どうやって勝ったか訊けたらよかったんだけど、喋れないしなあ。


「ねえねえ、もういっそ戦いじゃなくて別の勝負とかにできない? 美少女さ対決とか、イケメンキャラの名前何人言えるか対決とか、アンパン早食い対決とかオル子さん自信ありよ?」

「できるか! 試練の規定は変えられん! とにかく方法や過程は問わない、どんな手を使っても分身を倒せ! それ以外の勝負など認めんからな!」

「ぬう、けちんぼめ」

「ふん、何とでも言え。出直すと言うのなら、扉に触れれば敗北扱いで外に出られるからな。どうしようもなくなったなら、良い考えが浮かぶまで、外で頭を冷やすがいい」


 本日三回目の変身を遂げた幽霊さん。目の前にはコピーオル子さんやっほー。

 とりあえず、顔を突き合わせた自分自身と相談。


「どうする? あの感じだと、真面目に戦ったうえでの勝敗じゃないと認めないっぽいよね」

「ねー。多分、八百長した瞬間、憤怒の表情で蹴ってくるよね。怖い怖い、もっと私のようにお淑やかになれないのかしら」

「全くだわ! しかし、どうしたものかなあ……コピーな私、なにか名案ある?」

「ご冗談でしょう本物の私。私の頭の中はあなたとおんなじなんだから、無理無理! 私の頭には絞るだけ智慧すらありませぬぞ!」

「ですよねー! ぬかしおるわ! こやつめわはは!」

「わはは!」


 うむ、やはり分身も良い案はないみたい。困ったね!

 このまま泥沼の戦いを再開するのもなあ……とりあえず、互いに『山王降臨』『海王降臨』は使い切ったので二十四時間後じゃないと再使用不可。


 唯一切ってない手札である『サクリファシーワールズ』って奥の手の自爆技があるんだけど、これって人生で一回ぽっきりしか使えないっぽいのよね。説明文からして、『従魔契約』と同じで使ったら消失するスキルだと思う。

 そりゃ使ったら死ぬんだから、当然なんだけど……この負けてもリスクなしの試練で使うのはちょっと躊躇するわ。

 もしかしたら、使わなきゃいけない時がくるかもしれないもんね。いや、そんな日がこられても困るけど! オル子さんは死なぬう! どうしようもなくなったら、考慮に入れるってことにしよう。


 さて、参ったなあ、どうしたものかなあ。全然良い案思いつかないのよね。

もういっそ、幽霊さんのいうとおり外に出て、みんなの力を借りて良いアイディアを……ほむ、みんなの力を借りる?

 顔を上げると、そこにはハッとした表情を浮かべたコピーオル子さんが。多分いま、私も同じ顔してるんだと思う。


「ねえねえ、コピーオル子さん。さっき、幽霊さん言ったよね? 方法や過程は問わないって」

「言いましたね、本物オル子さん。言質は取ってますね。言い逃れはできませんね」

「あとは実際に出来るかどうかね。ちょっと試してきまふ。あ、この勝負は私の負けってことで!」

「むいむいー!」


 コピーな私に見送られ、私は部屋の入口までぴょこぴょこと飛び跳ね、ぺとりとヒレで扉に触れて転移。

 そして、みんなの前に姿を現し、元気に挨拶。


「やっほー! みんな、数時間ぶり!」

「こっちでは五分しか時間は流れてないってこと忘れてないかしら? それで、勝てたの?」

「勝てぬ! 泥仕合も泥仕合、まず第一に攻撃が全然当たんないからどうしようもないわ! いやー、オル子さんって敵として戦うとあんなに厄介なのね! 化物ですよ、化物!」

『今更何言ってんだこいつ。『海王』と『山王』ぶっ殺した奴が化物じゃなくて何なんだっつー話だろ』

「それでね、一人じゃ勝てそうもないからみんなの力が借りたいのよ! みんなで力を合わせてコピーオル子さんをフルボッコにするんです!」


 ポチ丸の突込みをスルーしつつ、私はみんなにお願いをする。

 そんな私の発言に、首を傾げるみんな。どういう意味だって困惑してるわね。

 唯一エルザだけがびっくりしたような表情を浮かべている。あ、気付いたかな? さっすがエルザ、以心伝心ね!


「主殿、試練の間には一人ずつしか入れないのでは? 他の者が試練の最中に扉に触れても、転移は発動しませんでした」

「扉自体にそういう力がかけられてるからね。部屋の奥に転移させるのは一人だけ、それ以外は対象外として弾いてるんだよ。扉を無理に開けようとしても無理だねえ、恐ろしく頑丈に造られてるからね」


 エルザパパの発言に、エルザが頷きながら意見を言ってくれた。


「つまり、弾いているのは扉であって部屋ではないわけね。オル子、恐らくいけそうよ」

「勝った! この勝負、オル子さんの勝ち確定でございます! それじゃあ試練に再挑戦してくるから、そういう訳でクレア、頼んだわよ! あなたが頼りだわ! 時間の流れが違うみたいだから、必ず私の転移とタイミングを合わせてね!」

「え? あ、主殿、私は何をすれば?」


 エルザのお墨付きを得て、私はヒレでガッツポーズ。

 状況を呑み込めていないクレアにエルザが何をするのかを説明してくれた。

 やるべきことを理解したクレアは、準備を整える。そして、私はクレアとタイミングを合わせて扉をヒレタッチ!

 そして、試練の間に移動して、水晶球をヒレで連打連打連打連打連打。元の姿に戻った幽霊さんがもこっと登場。


「どうだ? 自分を超える良い考えは浮かんだか?」

「うむ、ばっちりよ! オル子さん、今度ばかりは真面目に戦うよ!」

「ほう、自信に溢れているな。それが口先だけでないことを祈ろう――『闇の鍵』」


 またまたまた現れるおなじみコピーオル子さん。うむ、相変わらず可愛いわね! 流石私!

 やっほーとヒレでハイタッチを交わして、私たちは頷きあう。

 そして、互いに距離を取ったところで、私の背後に突然現れた乱入者――当然、扉の向こうで待っていたはずのみんなよ!

 ほほほ! ちょっと時間差あったけど、無事に大成功! クレアのスキル『転移『瞬』』によって部屋の向こうから転移してきたみんなの力でコピーオル子をフルボッコ! これぞ私の描いた計画よ!


「転移成功ね。しかし、オル子が二匹というのは……酷い光景ね」

「酷いってどういう意味!? ちょっとエルザさん、説明を要求しますぞ! 場合によっては『冥府の宴』でオル子数を増やすこともいとわぬ所存であります!」

「そうよそうよ! こんなに可愛いぷりちーな美シャチが揃っていて何が不満なの! あなたが泉に落としたのは白黒のシャチですか? それとも黒白のシャチですか? どうも、泉の女神です」


 エルザさん、本気でげんなりしてる。

 なんでよ! もっと嬉しそうな顔しなさいよ! ルリカを見なさいよ! 恍惚として意識とびかけてるじゃないの!

 対照的に、ミュラは分身に無反応。私に抱き付いて、分身に目もくれようとしない。

 わはー! さっすがミュラ、本物が分かる愛しの娘ね! ミリィは困惑してキョロキョロと私と分身を何度も見比べてるあたり、まだまだね!


「ミュラに嫌われてつらい……いくら分身とはいえ、中身はオル子だもん。もう何か死んでもいいかなって」

「おほー! 戦う前から戦意を削ってる! 素晴らしいわ、ミュラ! なんて策士なの!」

「でも戦いに手は抜かないよ! 手を抜いちゃうと試練って認めてくれないかもしれないもんね! 大好きなみんなに攻撃するのは無理だけど、自分を倒すことだけ考えるよ!」

「むふー! 流石私! なんて鋼メンタルなのかしら! それでこそ令嬢を目指すレディ、不屈の闘志だわ!」

「……酷いわね、本当にこれは酷いわ。さっさと分身を仕留めましょう、早急に、私の精神が持たなくなる前に。一匹でも持て余してるのに……オル子は一匹だけで十分よ。他のオル子なんていらないわ」


 さっきからエルザさんの発言が酷過ぎる件。ツンデレかな?

 まあ、そういう訳で幽霊さん。悪いけれど、本気で勝たせてもらうわよ! 幽霊さん言ったもんね!

 仮定や方法は問わないって! みんなで力を合わせて敵をぶっ叩く! これが私の誇る真の力よ! 多対一こそRPGの基本なんだからね!


「さあ、いくわよみんな! 敵はもう『海王降臨』も『山王降臨』も使えないただの世界で一番可愛くて素敵な美シャチよ! やーっておしまい!」


 その後の光景、それはそれは酷いものでした。

 レプン・カムイでタゲを私に固定され、クレアの動きに翻弄され、隙を抜かれてオルキヌス・サイザーでステータスを下げられ。

 ミュラ変身による『ドラグ・グラビディ』で動きを縛られ、逃げられなくなってからの『アビス・キャノン』『冥府の宴』『剣舞『紅』の総火力でボコボコにされ。

 最後の抵抗として発動させようとした自爆技『サクリファシーワールズ』はミュラのスキル封印によってキャンセルされて。山王と同じくらい全力でボコってようやく私のコピーは止まったわ。


「み、見事よ本物オル子……だけど、忘れないで……たとえ私を倒しても、第二、第三の私が美少女令嬢逆ハーレムを求めてこの世界に……ああ、一度でいいから彼氏に『あーん』ってしたかった……ぐふっ」

「さようなら、もう一人の私……あなたの夢は、私が絶対に叶えてみせるわ! 美少女になった暁には、『あーん』した後に『あーん』されちゃうんだから!」

「え、何それズルい。やっぱり私、死ぬのやめまーす! むふー! コピーオル子さんは死なんぞお! でも本物オル子さんの彼氏のコピーを私にくれるなら、大人しく死ぬことを考えなくもないかな! はよ! イケメンの彼氏のコピーをはよ! プリーズ!」

「いいから早く死になさい」

「あふん!」


 エルザのサンダー・ブラスターをくらって、今度こそコピーオル子さんは眠りにつきました。

 ふう、我ながら恐ろしい強敵だったわ……何はともあれ大勝利―! わっはーい!









・ステータス更新(スキル強化)


 スキル『冥府の宴』の最大攻撃回数が10から11に増加

冥府の宴(単体:近:ダメージ0.5倍×2~11回:力依存:CT20)




 


 

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