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63.生まれた瞬間から女の子は誰だってお姫様なの

 



 ウィッチの里へ向け空の旅を続けること三日、だいぶ魔物領域の中央部まで来たんじゃないかしら。海も見えなくなっちゃったし。

 大地に広がるのは、森、森、大森林。なんだかクユルの森を思い出しちゃうわー。大樹に捕まってたエルザを助け出して、なんやかんやでここまできたのよね。

 

「思えば遠くまできたものね……お嬢様として第二の人生を歩むつもりが、まさかシャチ大王として戦闘民族な生活を送る羽目になるとは想像してませんでしたけども。エルザさん、私が普通の女の子になれるのはいつの日になりそうかしら?」

「そのうちなれるわよ。ハーディンの支配地は195、流石は魔王の最有力候補と言ったところかしら」


 うーん、この塩対応。籠の中で『支配地勢力図』を広げ、みんなと異世界魔物抗争談義に花を咲かせて楽しそう。

 アヴェルトハイゼンぶっ倒して、支配地が増えたおかげで、スキルがパワーアップしたのよね。確か、『魂の色』が所有する支配地数の正確な数値が見られるようになったんだっけ。


「イシュトスは98か。二番手でもハーディンとは倍近くの差をつけられているのだな」

『奴に関してその数字は当てにならねえよ。こいつは配下を各地に派遣させ、支配者を倒させることで部下に支配地を抱えさせるからな。現に俺がそうだっただろ?』

「となると、『空王』の支配地はさらにここから上乗せされそうですね」


 まるでファッション誌を見てあれこれ言いあってるみたい。

なんだかんだ魔物っ娘、支配とか征服とか強い魔物とか、そういうのに興味深々ね。どれどれ、私も会話に参加せねば。


「オル子さんは? オル子さんはいったい何位なのかしら?」

「総支配地数は25、五指にも入ってないわよ。傘下に入れた種族の支配地を譲渡させれば、さらに上乗せできるかもしれないけど」

「25あってもそんなものなんだ。ハーディンとイシュトスだけかと思っていたけど、他にも有力な魔物がいるものなのね」


 アヴェルトハイゼンの領地を奪ったから、三位だってあるかもって思ったけど、他の魔物も侮れませんな。

 まあ、私は別に魔王なんて目指してないし、目立たない意味ではその位置くらいでちょうどいいのかもにゃあ。

 そんな私の甘い考えを、エルザはきっぱりと否定してくださいました。


「心配しなくても、遅かれ早かれ上位に躍り出るわよ。他の上位層のほとんどが大陸東、つまり『激戦区』に支配地を偏らせてしまっているもの。ここに支配地を置く以上、ハーディンかイシュトスとぶつかるのは時間の問題だものね」

「魔王を目指す魔物なら、奴らとの衝突は避けられない、か。二人によって魔王候補が淘汰されていけばいくほど、主殿が否応なしに上位となってしまうのだな」

「そういうことよ。支配地だけを残して大陸中央に逃げれば生き残れるでしょうけれど、強き魔物の誇りが許さないでしょうね。ハーディンやイシュトスに背を向けるような魔物なら、最初から『魔選』に参加なんてしていないでしょうから」


 ふぬう、オル子さんならわき目もふらずダッシュで逃げるけどね!

 アヴェルトハイゼンと同格以上ってだけでもやばいのに、更には大量の配下もいるんでしょ? そんな無理ゲー断固として拒否でござる!


「大陸東には生まれつき強力な魔物や種族が多い。だからこそ、ここが激戦区になっているのでしょうけれど、私たちには好都合だわ。せいぜいぶつかりあってもらいましょう。オル子、スキルを解除してもいいわよ。ありがとう」

「ういっしゅ!」


 『支配下勢力図』を解除、ぬぬーん! ぽふんと音を立てて消えちゃった。種も仕掛けもありませんよ!

 『魔選』の状況確認を終え、エルザは帽子をかぶり直しながら、溜息ひとつ。


「……もうそろそろ里につくわ。オル子、高度を下ろして頂戴」

「わはー! とうとうウィッチの里についちゃうのね! 魅惑のインテリ系眼鏡男子の字時間だああ! やっふー! 降ります降ります! アテンションプリーズ!」

「きゅーるっくー!」


 ヒレをばたばたさせて大興奮なオル子さん! 私の上でミュラとミリィもつられるように大喜び!

 ふふ、まだ見ぬイケメンとの出会いにミュラたちも興奮しておるわ! 小さくたって立派なレディね!

 さあ、知識男子たち、遠慮はいらないわ! このオル子さんにガンガン群がってくださいまし!















「ぬわああああん! 止めてよう! 群がるの止めてよう!」


 ウィッチの里へ続く森の中、十五センチサイズの蜂どもにこれでもかと群がられました。止めなさい! シャチを虐めるのは即刻止めなさい! 竜宮城に連れて行かないわよ!?

 うっひょー! 背中がなんかチクチクするんですけど! 針でブスブス刺すんじゃないわよ! 痛くないけど、気持ち悪いじゃないの!


「離れろ、離れろっ! おらっしゃー!」


 必死に飛び跳ねて潰そうとしても、蜂どもはサッと避けて私の攻撃を回避する。あ、当たらぬう! うがー!

 向こうの群れが片付いたのか、離れて戦っていたクレアが駆けてきてくれる。


「主殿!」

「うわああん! 助けてクレア! 蜂が小さすぎて私の攻撃が当たんないいいい!」

「御意! ポチ丸、ゆくぞ! ――剣閃『蒼』!」


 クレアの剣が青く輝き、周囲の蜂をまとめて一太刀に叩き切ってしまう。

 あれだけ群がっていた蜂を一瞬で! まさに二の太刀いらず、格好いい! 素敵!

 ヒレで自分のお腹を叩いてパチパチとクレアを賞賛していると、他のみんなも合流したわ。


「敵は全て片付け終えました。オル子様、ヒーリングを行いますのでお体を」

「ありがとーう!」


 ルリカの傍までぴょこぴょこ跳ね、背中にヒーリングしてもらう。

 シャチート装甲のおかげでダメージゼロみたいなもんだけど、一応ね! お肌に傷が残ったりしたら嫌だもん!

 

「でも、あの蜂は厄介ねえ……弱っちいくせに、十匹以上群れてやってくるんだもん。ウッド・ビーだっけ。小さすぎてオル子さんの攻撃が当たりませんよ!」

「あなたは攻撃の仕方がいつも雑なのよ。落ち着いて、敵の動きを予測して攻撃をしないから外しちゃうの。攻撃が当たらないのはあなただけよ?」


 ぬー、どうにもそういう考えて戦うのは苦手でございます。

 戦いってのはあれよ、ガーン! ドーン! ズババーン! って感じでしかやってないもんね。感性勝負なんですよ。

 それをエルザに訴えると、全力で呆れられました。ぐぬう。


「もし、次にウッド・ビーが出たら『コンフュ・エコロケーション』でも撃っておきなさい。範囲攻撃ならいくらか当てられるでしょう」


 そう言いながら、エルザは片手で杖銃を持ち、遠くにいる蜂の生き残りを射殺した。ほええ、なんて命中精度、わんだほー。

 戦闘終了し、私の上にミュラとミリィがいつも通り飛び乗る。うむ! しっくり!


「あれ、そう言えばミリィ戦闘に出しちゃってるけど、危なくないの? レベルもステージも1だし、館に戻してあげたほうがよくない?」

「むしろ積極的に戦闘に参加させるべきだわ。ステージ1で既にランクD、それも強さにおいては定評のある竜族だもの。オルカ化させれば、更に大化けするかもしれないものね」

『こいつ、意外とやるぜ? さっきも炎のブレス吐いてウッド・ビーを燃やしてたしよ』

「きゅっくるる!」


 んまっ! ミリィってば可愛い顔してブレスなんて吐けたのね! 小さくでも立派なドラゴンってところかしら!

 ミリィが進化したら、どんな風になるのかなー。オルカ化のせいで、ピンク・ドラゴンから白黒パンダドラゴンになっちゃったりしないよね? 少しだけ心配なオル子さんです。


「クレア、ポチ丸、そしてミリィのオルカ化が戦闘における当面の目標よ。ポチ丸は条件を満たしているのを待たせて申し訳ないけれど」

「すまぬな、ポチ丸……私の不甲斐なさのせいでお前に迷惑をかけてしまっている」

『んなの気にしてねえよ。申し訳ないと思うなら、少しでも強くなってくれりゃあいい。相棒が強けりゃ、それだけで誇らしいってもんだろ?』

「ポチ丸……ありがとう」


 やだ、まーた目つき悪ポメが無駄にイケメン発言しちゃってる。

 クレアのレベルが19ということで、オル化を済ませるまでポチ丸の進化を差し止めしてるのよね。理由は、ポチ丸の進化によって、ランクが上がって剣化できなくなる可能性が出ちゃってるから。

 ポチ丸はランクG-なので、オルカ化してもE+以上になることはないと思うけれど、念には念を入れて、ね。クレアが進化すれば、剣化できるランクもあがるし。

 クレアのオルカ化、私たちで初めてのステージ4ということもあり、みんな期待大よ。楽しみ楽しみ。


「……少し待って。解除するわ」


 みんなで一緒に森を進んでいくと、エルザが立ち止まり、何もない宙に手を翳した。

 すると、一瞬空間が歪み、一面ただの森だった場所が木製の家が立ち並ぶ集落へと変わってしまった。わお、びっくり魔法!


「ウィッチは強い魔物ではないから、他種族から襲われないように色々と工夫しているのよ。まあ、単に他種族と関わるのが面倒なだけという理由もあるけれど」

「あ、相変わらずウィッチ族に対して辛辣ね……でもまあ、これで彼らに会えるというものよ! さあ、行くわよエルザ!」

「はあ……」


 うわあ、本当に嫌そう。まるで家出から出戻りする女の子のよう!

 エルザと私を先頭に、村の中へ進んでいくと、第一村人発見。んま、エルザのような魔導士ファッション。まさしく魔法使いのクラシック・スタイルの女性ね!

 洗濯をしているウィッチ族の女性が、私たちをまじまじと……いや、違うわね。エルザを凝視して、そして大声。


「お嬢様!? エルザお嬢様ではありませんか!? お戻りになられたのですか!?」

「お、お嬢様ですって!? ちょっとエルザさん、どういうこと!? 聞いてないんですけど!? オル子お嬢様の間違いではなくて!?」 


 女性の口から飛び出したエルザの呼び方に、私はぴょこんぴょこんと飛び跳ねて追及。エルザってウィッチ族の村娘じゃなかったの!? お嬢様って何ぞ!?

 今日何度目か分からない溜息をつきながら、エルザは渋々ながら白状する。


「……別に大したことじゃないわ。私がウィッチ族の長の娘ってだけよ、それだけ」


 あの、つまりそれって、エルザはウィッチ族の令嬢ってことなんじゃ……言い方を変えれば、ウィッチ族の姫ってことなんじゃ……退屈が嫌で里を飛び出した少女の正体が、実はお姫様だなんて……そ、それは私の為のシチュエーションでしょう!?


「くっ、まさかエルザがルリカやキャス側の勝ち組だったなんて! お姫様ってことはつまり、将来イケメンの王子様との結婚が約束された身! どうしてその立場をオル子さんに譲らないの!」

「譲も何も、あなたはオルカナティアの王でもっと格上じゃないのよ。それに、私は姫なんて大層なものじゃないと言っているでしょうに」

「ぬぬう……こうしてはいられないわ! 私、ミュラ、クレア、ミリィの四人で、『姫になれなかった一般乙女連合』の結成を宣言します! 我々はエルザ・ルリカ・キャスの『お姫様同盟』に対してイケメン貴族の紹介を要求します! 私たちだって成り上がって恋がしたい!」


 こうなったら、是が非でもエルザにウィッチ族の男の子を紹介してもらうしか!

 でも、エルザ、確かに気品も落ち着きもあるもんね。私、エルザと出会った時、本物のお姫様を助け出していたのね……

 というかね! エルザにクレアにキャスに、私ってば、どれだけお姫様の救助活動やってるんだって話よ! 私は異世界から来たシャチの王子様か何か?

 やだやだやだ! 私だってお姫様がいいんだもん! くそうくそう、今夜はミュラ、クレア、ミリィの四人でどうすれば姫になれるかの作戦会議だからね!




 

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