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7.シャチとウィッチ、響きも似てるし良かったら種族交換しない?

 



「あははははっ! 何それ! 美少女になりたいって希望したら、大きな魚型の魔物にされたって、あははははははは!」


 これまでのことを事細かに説明したら、エルザ大爆笑でござる。

 いや、ちょっと笑い過ぎでしょこれ。確かに他人からすれば笑いごとかもしれないけれど、私にとっては悲し過ぎる事件なのよ。くそうくそう、またおっぱい揉むぞこのあろー。


「笑い事じゃないのよ! 私には素敵な男性と出会い、普通の恋をして、素敵な家庭を築くって夢があるのに、このシャチボディでいったいどうしろっていうの! シャチフェチの人との出会いなんて求めていないんですけど!」

「ああ、お腹痛い。でも『スカイ・オルカ』だっけ? そのオスなら寄ってくるんじゃないの? そんな種族なんて見たことも聞いたこともないけどね」

「シャチのオスなんてもっと要らないわよ!?」


 この魔法使い、マジで人の悩みを笑いの種にしてらっしゃる! 人の不幸を笑うんじゃあない! 跳ねまわって抗議するぞ!

 大笑いして満足したのか、エルザはふうと大きく息を吐く。


「でも、あなたの話で大凡は掴めたわ。魔王の眷属を単身で倒せたことといい、私のことを『人』と言ったことといい、それなら納得だもの」

「納得? 何が?」

「そうねえ……まず、私は『人』じゃないわ。私はあなたと同じ『魔物』なの」

「え、嘘、本当に? そんな目の覚めるような美少女型の魔物がこの世界にはいるの?」

「疑うならあなたのスキルで確認してみなさいな。『識眼ホッピング』だっけ? 人のステータスを強制的に読み取るなんて、とんでもない破格スキルよね」


 言われるまま、私はエルザのステータスをチェックしてみる。

 いやいや、ご冗談でしょう。こんな美少女がモンスターのわけが……






名前:エルザ

レベル:9

種族:ウィッチ(進化条件 レベル20)

ステージ:1

体量値:F 魔量値:C 力:G 速度:D

魔力:B 守備:G 魔抵:C 技量:D 運:E


総合ランク:E+






 種族、ウィッチ……本当に魔物なのね。って、おい!


「普通に女の子モンスターいるんじゃないのよ!? だったらどうして私をこういうタイプにしてくれなかったの!? 私、シャチなんですけど! 美少女希望したのにシャチなんですけど!」

「本当、おっかしいわねえオル子って。普通なら、私の姿を見たら魔物って分かるものなのよ? 桃色髪の魔法使い、となれば魔物のウィッチっていうのがこの世界の常識なの」

「いや、常識なんて知らんもん。私、今日この世界に生まれたばかりだもん」

「そうね。『生まれた瞬間に知っているはずの知識』を知らなかったからこそ、あなたの『異世界から転生した』なんて話を信じたんだけどね。年齢なんて関係ないわ、相手が『魔物』か『人』かなんて、この世界の生物なら誰だって判断できることなのよ」


 ふーん。この世界の連中って便利な能力を持っているのねえ。

 私から見れば、エルザなんてどこから見ても人間の女の子にしか見えない。

 ぽむぽむと納得していると、エルザは気分をよくしたのか、人差し指を立てて説明を続けていく。出会ったばかりだけど、エルザって説明好きのオーラがするわ。私としては助かるばかりだけど。


「そして、あなたが魔王の眷属を単身で倒せたことに納得した理由……これは推測なんだけど、あなたも魔王もしくはそれに比類する存在によって直接生み出された特別個体の魔物なのではないかしら」

「魔王? いや、私を転生させたのは天使だけど……」


 いや、待てよ。あの天使が実は魔王だったというなら、全てはつながるわ。

 あんな可愛い、純真無垢なオーラを放っておいて、実は魔王だっただなんて。つまり、私は魔王に騙されてシャチにされた被害者なのね!

 くそうくそう、話が美味し過ぎると思ったのよ! 美少女に転生させて貴族ロマンスラブストーリーさせてくれるなんて都合が良すぎると思ったのよ! 私の純情を弄んで、許せないわ!


「魔王と同等の存在に生み出された眷属……それも最高クラスの魔物だからこそ、生まれたばかりのあなたでも、ステージが格上である魔王の眷属を倒せたのだと思うわ」

「そのステージって何? ステータス画面にも表記されているんだけど、これの意味が分からなくて」

「魔物の進化状態のことよ。レベルが上がれば、魔物は進化して強くなり、ステージが上にあがるの。あの魔王の眷属はステージ3くらいと予想しているわ」

「あいつならステージ4だったわよ。総合ランクはC-だったかな」

「ステージ4!? ランクC-!? ちょ、ちょっと、あいつってそんなにとんでもない魔物だったの!?」

「ひえええ!? え、え、何、そんなに驚くところなの!?」


 目の色が変わったエルザ、ちょー怖いんですけど。

 興奮しながらエルザはそれがいかに凄いことかを語り始めちゃった。


「驚くも何も、ランクC-って魔物としてかなり上位の力を有しているってことなのよ?」

「ふうん、何だかよく分かんないけど、凄いのね。ねえ、お腹空いたからリンゴ食べてきていい? もう私、お腹ぺこぺこぽんで」

「でも、それをステージ1で倒せるあなたって、いったいどんな化け物なのよ。オル子、あなたの総合ランクって何?」

「あ、無視ですかそうですか。私の総合ランクはえーと……B-ってなってるわね。分かったらほら、リンゴ食べよう、リンゴ」

「B-っ!? あなた、それって魔王軍でもかなり上位クラスじゃないのよ!?」


 いや、だから魔王がどうこう、幹部がどうこう言われても分かんないってば。

 そもそも、この世界って魔王がいるの? 魔王=天使なの? 眷属って何?  そんな基本的なことすら私は分からない訳で。というか興味もないわけで。どーでもいーですよ。

 ぶっちゃけ、私はエルザみたいな美少女になれるスキルや進化先を見つけて、異世界ラブライフを謳歌したいだけなのよ。

 そういう魔王とか弱肉強食の世界は別のところでやってちょうだい。


 拾ってきたリンゴをモシャモシャ食べながらそんなことをエルザに伝えると、心底呆れられた。なんでよ。


「眷属を倒したってことは、この森はあなたの支配地域になっているでしょう? この森で生まれた魔物は、全てあなたに絶対服従になったのよ。これを機に、支配地域を増やして魔王になろうって思わないの? 先代魔王が死んだばかりだから、今は群雄割拠の時代、強い魔物が我先にと争って支配地域を奪い合っている最中なのに」

「いや、魔王とかそんな物騒なものに興味ないもん。魔王とか嫌でござる、恋がしたいでござる、中二病より恋がしたいのよ! という訳でエルザ、あなたみたいな美少女になる魔法とかスキルとか知らない? もしくはシャチの進化先に人化とかあるか知らない?」

「『スカイ・オルカ』なんて初めて知る種族だもの、流石に進化先のことは知らないわ。ただ、人化に関しては可能性があるかもしれないわね」

「え、マジで!?」


 私はリンゴを丸呑みし、ずずいとエルザにすり寄る。教えてください、おねーしゃす!

 ぐりぐりとお腹に押し付けられた私の頭をぺちぺちと叩きながら、エルザは知っていることを教えてくれた。


「ドラゴンやマーメイドなんかは、ステージが上がると人化するスキルを身に着けるって聞いたことがあるわ。そういうスキルが存在する以上、あなたにも可能性はあるんじゃないの? なにせあなた、特別っぽいし」

「ぬわああああ! 燃えてきたああああああああ! つまり、私はレベルをガンガン上げれば夢見たスイート・ラブが手に入るのね!? 甘酸っぱい青春の日々を送れるのね!?」

「まあ、可能性だけなら」


 それでもいい! 可能性でも、欠片でもあるならそれに賭けるには十分過ぎるわ!

 目的は完全に固定されたわ。私はこの異世界で、とことんまでレベルを上げる! そして人になる! 人になって恋をするの!


「ありがとう、エルザ。あなたのおかげで私は答えを得たわ。私、強くなる! レベルを上げて、ステージを上昇させて、あなたに負けないくらいの美少女になる! 結婚式には友人代表として呼ぶから、スピーチを考えておいて!」

「いや、全然意味が分かんないんだけど……でも、その感じだと、オル子はこれから魔物退治に各地を回るのよね?」

「ええ、そうなるわね。一日でも早く美少女になって、このシャチボディとおさらばするためにも!」


 うむ、魔王なんぞどうでもよろし。

 一日も早く人になって、私の第二ステージを恋愛物語に切り替える、それだけが私の望みなのだから。

 選手宣誓ばりに誓いをあげる私に、エルザがにっこり笑って口を開く。


「じゃあさ、その旅に私も同行させてもらって構わないかしら? 私、色々と魔法が使えるから役に立てると思うわよ」


 異世界転生初日、美少女のお友達ができました。まる。






・ステータス更新(仲間追加)


名前:エルザ

レベル:9

種族:ウィッチ(進化条件 レベル20)

ステージ:1

スキル:サンダー・ブラスター・放射(複数:遠:ダメージ0.8倍:魔力依存、魔量値消費(小):CT10)

    サンダー・ブラスター・収束(単体:遠:ダメージ1.0倍):魔力依存、魔量値消費(極小):CT5)

    ウィッチ式日常魔法(アイテムボックス、洗浄、発火、製水)

体量値:F 魔量値:C 力:G 速度:D

魔力:B 守備:G 魔抵:C 技量:D 運:E


総合ランク:E+




 

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