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47.大切な人はいつだって身近にあるもの、私に幼馴染はいないの?

 



「どうぞ、オル子様」

「むふーん! ありがとう、ルリカ! おいひー!」


 夕食を終え、自室に毛布を敷いてもらい、その上をゴロゴロ寝転がって食後のスイーツを満喫中。

 横になった私の口元に、ルリカがクッキーみたいなお菓子を運んでくれてもぐもぐ。

 私の真似をして、ミュラも横になってお菓子をもぐもぐ。ああ、幸せ。


「ゴロゴロしながら美味しいお菓子を食べさせてもらう……なんという夢のような時間、私ってば女王様みたい!」

「実際、あなたは王様でしょうに。それにしてもだらけきってるわね」


 そんな私を呆れたような瞳で見つめてくるエルザさん。

 現在、私の室内には私、ミュラ、エルザ、ルリカ、そしてクレアといつものメンバー勢ぞろい。みんな美少女だから華があるわね!

 私? 私はほら、美シャチ女だからセーフみたいなところあるし。将来人化したら美少女確定だし、ノープロブレム!


「明日から旅に出るんだから、最後に羽をしっかり伸ばさないとね! ああ、愛しき我が家とも今日でお別れか、寂しくなるわね」

「館は持ち運びできるんだからお別れにはならないでしょ」

「そうでした! でも折角なのでルリカに甘えるだけ甘えてダラダラするオル子さんなのであった。わふー!」


 私とミュラのおねだりに、笑顔で応えてくれるルリカ。

 ルリカってばあれよね! きっと彼氏をとことんまで甘やかして駄目にするタイプね! 事実、私はルリカの母性に溺れております! もっと甘やかしてくれていいのよ?


「ルリカもオル子を際限なく甘やかさないの。調子に乗って痛い目にあってもこの子は分からないんだから」

「すみません、エルザ。ですが、オル子様を見ていると我慢が出来なくて」

「分かるわ。強くて可愛くて、そのうえ頭まで良いなんていう最強チートヒロインであるオル子さんを前に、愛さずにはいられないという衝動に駆られてしまうのは仕方がないことなのよ。愛されヒロインで申し訳ない!」

「馬鹿な子ほどとは言うから、気持ちは分からないでもないけれど」


 あれえ? 今なんかエルザに婉曲的にアホの子扱いされたような気がするけれども。まあいっか、クッキーうまうま。

 五枚目のクッキーをもっしゃもっしゃと咀嚼していると、エルザが明日以降についての話を始める。


「明日は早朝からオルカナティアを出て、北東に向かうわよ。竜族の支配する竜峰、その南東に位置するラヴェーレ渓谷、そこが私たちの次なる目的地だって話は会議でしたと思うけれど」


 エルザの視線が私に突き刺さる。

 あい、ごめんなちゃい、ぐーすか居眠りしておりました。聞いておりませんでした!

 反省の意を込めてお腹を見せてヒレをパタパタさせていると、エルザは溜息つきながらも仕方ないなとばかりに説明してくれた。だからエルザってば大好き。


「ラヴェーレ渓谷は魔物領域の中央やや西に存在する支配地の一つ。鳥型の魔物を中心に、飛行種が多く生息していることで有名な場所でもあるわね」

「ほむほむ。森、洞窟、海、山ときて次は谷ですか。まるで異世界観光ツアーしてるみたい。移動式ホテルも完備だし、言うことなしね!」

「私たちの目的は渓谷をオル子の支配地として塗り替え、ある種族をオル子の配下として抱え込むことよ」

「ある種族とな?」

「ええ。ラヴェル・ウイング――私たちと同じ人型の魔物であり、空の狩人として有名な種族ね。背に生えた大きな翼で空を翔け、群れによって敵を追い詰め獲物を仕留める、集団戦闘と空中戦に長けた種族よ」


 ほほー。なんだかメッチャ強そうじゃないの。

 イメージとしては天使さんみたいな感じかしら? ふむふむ、純白の翼で空を舞う美男子……いい、凄くいい。

 しかも狩人なんて響きが素敵じゃないの。翼系男子さん、どうぞ私のハートも狩って下さいまし!


「ラヴェル・ウイングですか。確か『空王』イシュトスを輩出した種族としても有名でしたね。ですが、『空王』はラヴェル・ウイングから追放され、そこから前魔王の幹部まで成り上がったとか」

「ええ。追放された理由は分からないけれど、仮に『空王』と敵対状態にあるならば利用しない手はないわ。空を翔け、集団戦闘を得意とする彼らは是が非でも戦力としてオルカナティアに引き込みたいところね」

「彼らを引き込むことで『空王』の顰蹙を買い、狙われる可能性も出てくるのでは?」

「彼らの支配地は遥か東、境界線に位置するオルカナティアとは恐ろしく距離が離れているもの。怒りを幾ら買ったところで、『空王』は私たちに打って出られないわ。せっかく背後で魔王軍がにらみを利かせてくれているのだから、最大限に利用させてもらいましょう」

「相手が私たちを大した魔物ではないと侮っている間に、どんどん戦力を増強して気づかれぬ間に力を蓄えていくということですね」


 ぬう、エルザとルリカが何だか頭の良さそうな会話をしているわ。

 待って、ここで会話に混ざったら私も頭脳キレキレに見えるのではないかしら? 領地拡大や侵略について語る美少女……うおお! 私もまざるう!


「フフッ、そういうこと――つまりエルザはこう言いたいのね。カレーは三日目が一番美味しい、と」

「全然違うわ。そういう訳で、明日から遠出することになるんだから、しっかり体を休めておいて頂戴」

「あい」


 ヒレをパタパタさせて了承の意。

 まあ、休めるも何も、最近のオル子さんはゴロゴロしまくりで毎日体を休めているようなもんですからね。

 王様になったけど、実務はキャスがやってくれてるから、私はミュラと遊んだり、子どもたちと遊んだり、食っちゃ寝したりしてただけだしね。あれ、なんか私乙女としてやばくない?

 いや、大丈夫、明日から本気出すから。明日から冒険再開で、オル子さん大活躍だから。ですので、今日までは全力でだらだらするのである! お菓子うまー!


「あの、主殿、少々よろしいでしょうか」


 ごろんごろんと転がってルリカに甘えていると、これまで沈黙を保っていたクレアがおずおずと話しかけてきた。

 ぬ? なんだかクレアの雰囲気がいつもと違うわね。なんだか言い難そうというか。どしたのかしら。


「どうしたのクレア? なんだか困ったような、言い難そうな表情してるけど。オル子さんならいついかなる時でも相談に乗るよ! なに、もしかして恋の悩み? むふー! そういう話なら百戦錬磨のオル子さんに任せなさい!」


 妄想の世界においては常勝不敗を築き上げた恋愛王オル子を信じるのよ!

 生徒会長も、幼馴染も、勇者も騎士も魔王だって私の前で愛を囁かずにはいられなかったのよ、イマジネーション・ワールドで!


「あの、実は……剣について相談をさせて頂きたいのです」

「ケン? ああ、ケンね! 『暗黒翼学園』に出てきた隠しキャラだったかしら。あのキャラは攻略するのに相当難儀してね! でも、そこは恋愛のプロたる私、攻略サイトなんて一切見ずに見事おとしてみせたわ! でも私的にはケンよりもアキラの方が好みかな!」

「あなたはいったい何の話をしているのよ。武器の話よ、武器の」

「ほむ?」


 首を傾げる私に、クレアはぽつぽつと相談内容について説明し始めた。


 なんでも、クレアさんのスキルで生み出される剣が弱くて困っていると。

 現在使用している熊おこ剣では竜鱗すら斬れず、これから激しくなる戦いにおいて足を引っ張ってしまいかねない。そんなことにならないためにも、新しい剣が欲しい、と。


 でも、クレアのスキルで生み出す剣で高性能な武器を生み出すためには、厳しい条件があるらしく、強い剣をなる生き物を探すのは困難を極めて途方に暮れてしまっている。それがクレアの相談内容だった。


「つまり、ランクがE+以下で、強い魂を持つ存在を探す必要がある、と」

「弱さを武器の責任にするのは、武人として情けないことは重々承知しているのですが……恥よりも、私は主殿の力になれないことを恐れます。ですので、もしよろしければ、そのような存在に心当たりはないでしょうか」

「心当たりねえ……」


 私はチラリとエルザを見つめる。エルザはチラリとルリカを見つめる。そしてルリカは私に視線を。あらま、視線が戻ってきちゃった。

 私たち三人の心は完全に一つとなっていた。

 弱くて、けれど魂だけは強者のそれで、戦いに飢えた生き物。そんなの、心当たりありまくりなんですけど。


「クレア、クレア。オル子さん、そんな存在に心当たりありまくりです」

「ほ、本当ですか!? 主殿、よろしければその生き物を私に紹介してくれないでしょうか!」

「ぬー、いや、紹介するのは吝かではないというか、そもそも紹介する必要ないのではというか……とりあえず、連れてくるね」


 クレアの求める生き物を連れてこようとした時、部屋の向こうから私たちの求める生物が自らの足でやってきた。

 トコトコトコと小さな小走り音が近づき、体当たりで扉を開いて入ってきたその小型生物は、目を釣り上げてキャンキャンと咆哮。


「おら! ルリカ、てめえ俺の飯にまた野菜なんぞ混ぜやがったな! 俺は肉だけが喰いてえんだよ! あんな不味いもん食わねえって何度言ったら分か――」

「ぬおおおおおお! 被疑者ぶさポメゲットオオオオオオオ!」

「ぎゃああああああああ!?」


 室内に飛び込んできた白ポメことポチ丸に、私はヘッドスライディングを敢行してヒレでがっちり確保。

 そして、ぴょこぴょこと飛び跳ねながらクレアの前に近づき、ポチ丸を差し出してにっこり笑顔。


「はい、クレア。この子があなたの探していた最強の剣よ!」

「あの、主殿、ビックリし過ぎてポチ丸が白目を剥いて気絶してるのですが……」


 ポチ丸を受け取ったクレアは、それはそれはとても言葉にし難いくらい困惑しきった表情でした。

 いや、本当なんだって。姿は変わり果てちゃったけど、魂だけならこいつ、我が家で最強だと思います。

 元の姿だったら、ポチ丸、あの竜族すらタイマンでぶっ飛ばせるくらいヤバいんですよ? 今がこんなポメラニアン姿だから説得力皆無ですけども!



 

 

黒塔真実様より、ファンアートを頂きました!

三章最後および活動報告に掲載させて頂いております! とても素敵な妄想オル子です! 可愛い! 宝物にしなくちゃ(使命感)

黒塔真実様、本当にありがとうございましたー! 感謝です!

 

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