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5.寄らば大樹のとは言うけれど、これに体を預けるのはちょっと

 



 やばい。こいつ、めちゃ強い。


 蔓の鞭を必死で避けながら、私は何度目になるか分からない体当たりを幹に放った。

 大きく後退はするものの、巨木のやつ、表情がないからダメージあるのかどうか全然分かんないじゃない。

 そうこうしてたら、敵のヤバい攻撃が再び繰り出された。まず、また来た! 『黒リンゴ爆弾』だっ!


「ぬおおおお! 避けろおおおお! 私、超頑張れええええ! 負けえるなああああ!」


 必死で身をひるがえすけれど、全てを避けることはできない訳で。

 巨大樹が投げつけてきた真っ黒なリンゴが五つ、私目がけて飛んできて、三秒としないうちに爆発。はい、ぴちゅーん。被弾です。


「ほぎゃああああああ!」


 激しい爆発の衝撃が私の体を襲う。食用の赤リンゴだけじゃなくて、黒リンゴ爆弾なんて持ってるなんて卑怯じゃない?

 ぐぬぬ、この爆発はシャチボディでも完全ガードとはいかないみたい。痛いし熱い。

 直撃じゃないからまだこんな冗談染みて言えるんだけど、まともにくらったらちょっとシャレにならないわよ、これ。

 煤まみれになった体をブンブンと振り払いながら、私は一人作戦タイムに突入。認める!


「どう攻めたものかしら。ブリーチング・クラッシュは攻撃後の硬直を狙われて酷い目にあったし、コンフュ・エコロケーションは効果ないし……魔法使いちゃんの救出は済んだから、それは安心だけど」


 魔法使いちゃんは戦闘開始すぐに救出できているわ。

枝なんてシャチの顎の敵じゃないからね、べきってへし折って甘噛みで体をキャッチして少し離れた場所にリリースよ。


 さて、どうしよう。

 ブリーチング・クラッシュの効果は大きいけれど、攻撃後の身動きが取れない硬直中にリンゴ爆弾を投げられてしまったのよね。

 大技を封じられてしまっては、地道にコツコツとダメージを与えるのがRPGの常道だけど……むふん、いいわ。こうなれば根競べよ。


「自慢じゃないけれど、諦めの悪さとしつこさに関しては定評のある私だもの! ストーカー気質だと妹に馬鹿にされた、私の真髄をとくと見せてあげましょう! 重過ぎる女を舐めないことね!」


 意を決し、私は大木の懐へ潜り込み、全力全開の頭突き連発。

 根本も根本、地面すれすれの部分を何度も何度も体当たり。ボクシングで言えばリバーブローよ! 呼吸すらさせないくらい連打してあげるわ! デンプシーデンプシー! ローリングローリング!


 私の突然のラッシュに驚いたのか、大木は嫌そうにじわりじわりと後退しようとするけれど、そうはさせないわ。

 逃がすつもりなんてない、私は密着したままひたすら攻撃を加えていく。くらいなさい! シャチロケット頭突き! シャチヒレビンタ! シャチ噛みつき! シャッチシャチ!


 まさにやりたい放題。敵はリンゴ爆弾すら投げられない状況。

……あれ、そういえばリンゴ爆弾来ないわね。なんでだろ、今なら狙い放題なのに。

足元に落とせば私逃げられないのに……あ、そっか。ぬふふ、分かっちゃった。


「そうよね、リンゴ爆弾落とせないわよねえ? 今、私に落としたら、自分も爆発に巻き込まれるもんねえ? おーっほっほっほっほ! 弱点見つけたり! ウッディ、アンタの弱点は接近戦よ! ねえ、悔しい? 攻撃できずに一方的に殴られて悔しい? ぷふー!」

「シャアアアアア!」

「あ、ちょ、痛い! 蔓の鞭で叩くの止めて! ひぎぃ!」


 調子に乗ってたら、別の方法で攻撃してきたでござる。

なんて鬼畜! 乙女の柔肌に鞭なんて許せん! 跡が残ったらどう責任とってくれるのよ!

 ちょ、鞭打ちしてくる蔓とは別になぜか体をくすぐってくる蔓があるんですけど! 何この蔓プレイ、シャチの体に興味津々なの!? 

やばいやばいやばい、早くこいつ倒さないと何か人として駄目な方向に目覚めちゃう悪寒がする! 予感じゃなくて悪寒がする!


「倒れろ! 倒れろ! 倒れろ! 倒れて下さい! お願いします、お願いします! ぴぃ!」


 尻をひたすら蔓の鞭で叩かれながら、私は負けじと大木に頭突きを打ち込み続ける。

 異世界に来て、シャチにされて、尻を鞭で打たれ、ひたすら懇願しながら大樹にヘッドバッドしてる私……何やってるんだろう。

やばい、軽く死にたくなってきた。小学生の頃、私の将来の夢語りを真剣に聞いてくれた担任のサワダ先生元気かな……


「グォォォオオオオオオ!」

「なんもかんも天使のアホのせいで……あ、勝った」


 別の意味で心折れかけていたら、どうやら先に樹が心折れたみたい。

 悲鳴を上げながら、大木はぐらりと後ろに倒れ、激しい衝撃とともに倒木した。

 百発くらい攻撃したもんね、そりゃ限界もくるってもんですよ。大木、アンタは強かったわよ……恨むなら、このシャチートボディを私に与えたポンコツ天使を恨むことね。あ、レベルアップ。


『レベルが8から13に上がりました。条件を満たしたので、スキル『識眼ホッピング』を獲得しました』


 わお、一気に5も上がっちゃった。

ボスっぽい奴だったし、強かったし、やっぱりいっぱい経験値を持ってたのね。

 そして、また訳の分からないスキルを取得したみたい。識眼ホッピングねえ、後で試し打ちしてみないと……あれ? まだ続きがあるの?


『支配者の討伐に成功しました。『アディム・ユグドラル』の所有支配地が全て『オル子』へ譲渡されました。現在、あなたの統治する地域は1です』


 ……ほわっと? 何これ。









・ステータス(新スキル追加、支配地追加)


名前:オル子

レベル:13

種族:スカイ・オルカ(進化条件 レベル20)

ステージ:1

スキル:オルカ・ポッド(常時発動可、パーティにシャチの加護)

    ブリーチング・クラッシュ(単体:近距離:ダメージ4.0倍:力依存:発動後硬直(小):CT15)

    コンフュ・エコロケーション(複数:中距離:ダメージ0.3倍:魔力依存、魔量値消費(小):混乱付与:CT30)

    空中遊泳(常時発動可、空を泳ぐことができる)

    識眼ホッピング(常時発動可、自他ステータスおよび自スキル詳細の解析)

体量値:B 魔量値:D 力:A 速度:B

魔力:D 守備:B 魔抵:C 技量:E 運:E


総合ランク:B-


所有支配地:1

支配地名:クユルの森




 

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