表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/142

43.人の縁は大切にしたいわね。ところで息子さんはいるかしら?

 



 進化先を決めたならば善は急げ。

 オル子さんのデビル・オルカへの進化はっじまるよー!


「今からオル子さんは進化をしますが、進化の最中は決して襖を覗いてはいけませんよ? シャチに化けた美少女が恩返しできなくなってしまいますからね。おっほっほ!」

「そうなのですか? では主殿が進化している間は離れておいた方がよろしいでしょうか」

「冗談よクレア。でもオル子さん思うんです。鶴の恩返し然り、浦島太郎然り、昔の人って『やるなよ! 絶対やるなよ!』って前振りが好き過ぎじゃない? オル子さんならスマホカメラ構えて襖あけるし、玉手箱を乙姫様の目の前で開けちゃうね! 老婆と化した乙姫様、お許しください!」

「意味不明なこと言ってないで、さっさと進化しなさいな」

「あい」


 エルザに促されてみんなからちょっと離れる。

 さーて、ドキドキの進化の時間だわ。デビル・オルカ、いったいどんな姿なのかしら。

 よし、気持ちの準備は整ったわ。いざ、参ります! ふぬうう! オル子進化ああああ!


「おお、オル子の周囲に黄金の輝きが……これが魔物の進化、なんとも幻想的じゃのう」

「ああ、オル子様の進化、この光景を目に焼き付けてアクア・ラトゥルネの皆にお話しなければいけません」


 なんかルリカが異常なくらい目をキラキラさせてるけど、今は進化に集中ううう!

 きたきたきた! 体が燃えるくらい熱い! 脂肪を燃やせ、オル子さんはスリムだけども!


『おめでとうございます。オル子はセイント・オルカからデビル・オルカに進化しました』


 ぺっぺぽぺー。脳内に流れる相変わらずチープなファンファーレ。

 無事進化完了。うむ、視界は変わらないってことは、肥大化とかはないわね。見た目はどうかしら!


「進化終わったけど、何か変わった!? 顔だけ美少女に変わっていたりとかしない!?」

「その進化は逆に引くわよ。そうね、羽の形が変わっているわね。大きな変化はそれくらいかしら?」

「羽とな!?」


 ううむ、私からは背中の羽は見えない。

 ピコピコと動かす感触は以前と変わらずあるんだけど、どんな風に変わったのかしら。


「これまでは小さな純白の翼だったものが、蝙蝠のような羽になっておるのう」

「蝙蝠というか、悪魔種の羽に近いかしら?」

「にゃるほど。つまり、小悪魔ちっくな羽に変わったのね。ふむ、ちょっと安心かも。巨大化したりしたらどうしようかと少し不安だったから」

「それ以上大きくなったら館の扉を潜れなくなるわね。外にオル子専用の小屋を作ったりせずに済んで何よりだわ」

「小屋!? エルザってば今私のことを室外犬扱いしたよね!? ひどいわひどいわ!」


 ビタンビタンと跳ねて猛抗議。

 危ない、巨大化なんてしてたら首輪とリード付けて外に放り出されるところであったわ!

 まあ、無事進化できて何より。一応ステータスも改めてチェック。




名前:オル子

レベル:1

種族:デビル・オルカ(進化条件 レベル20)

ステージ:3


体量値:S 魔量値:D 力:S 速度:A

魔力:C 守備:A 魔抵:C 技量:E 運:D


総合ランク:A




 うむ、識眼ホッピングで事前に調べた通りね。

 しかし、自分のステータスながら相当凄いわね、これ。

 強い、速い、堅い。攻めてよし、盾になってよし、まさにデビルの名に相応しいステータスだわ。

 エンジェル・オルカの遠距離攻撃が欲しかった気持ちはあるんだけど、エルザやミュラがいるからね。

 頼りになるみんなと一緒に戦うんだもの。私は私の武器を磨くこの進化を選んで正解だったかもしれないわ。もしエルザたちに出会ってなくて、異世界ソロプレイを続けていたらエンジェル・オルカにしていたと思う。


 進化を終えた私を見て、ミュラがぴょこんと飛び乗ってくる。

 ミュラをしっかり受け止め、私はヒレをピコピコさせて胸を張って報告!


「ミュラ、お母さんもあなたと同じ悪魔っ娘になったわよ! どう、嬉しいかしら!?」


 私の問いかけに、ペチペチと頭を叩いて肯定してくれた。

 うむうむ、ミュラが喜んでいるならばよし! ささ、私は終わったから次はエルザの番ね。


「次はエルザの番よ! オルカ・ソーサラーだっけ、あなたの進化を見せてもらいましょうか! もしそれ以上美少女レベルが上がったりスタイルが更に良くなったりしたら、心折れて館に引きこもる所存! エルザばかりズルい!」

「はあ……それじゃいくわよ」


 私の苦情をスルーして、エルザも光に包まれる。

 眩い輝きが全身を包み、光が霧散したとき、そこにはニューエルザさんが!

 以前と同じ白黒トンガリ帽子に魔法使い服、ぬう、以前と違って外見に変化は無いみたい。

 でも、進化を終えたエルザの表情から、大きく変わったということが分かる。普段はクールなエルザが、心から嬉しそうに笑ってるんだもの。


「凄いわね。オルカ・ウィッチの時もそうだったけれど、まるでこの体が別の存在に生まれ変わっていくようだわ」

「ちょ、そんな気になる言い方酷い! 知りたい知りたい、エルザの能力が見たーい! 見ていい? ねえ、識眼ホッピングで見てもいい? エルザさんの、すっごくいいとこ見てみたいー! そーれ、オルカっ! オルカっ!」

「どうぞ」


 上機嫌なエルザに許可を貰い、識眼ホッピング発動! どーれどれ!




名前:エルザ

レベル:1

種族:オルカ・ソーサラー(進化条件 レベル20)

ステージ:3


体量値:E 魔量値:B→A 力:F 速度:D

魔力:A→S 守備:G→F 魔抵:B→A 技量:C 運:D→C


総合ランク:C+→B




「伸びすぎぃ! ステータス5項目も上昇とか主人公も逃げ出すほどの成長率過ぎる!」

「そんなにですか? エルザ、凄いな……」


 あまりの伸びっぷりにクレアもビックリよ。何この砲撃ぷっぱの鬼火力、魔砲少女かなにか?

 オルカ化が凄いのは知っていたけれど、エルザ伸びすぎ! 魔力もSに到達してるじゃないの!

 驚く私たちに、エルザは微笑みながらその理由を推測する。


「伸びが良いのは、恐らく私の種族が関係しているのでしょうね」

「種族?」

「ええ。ウィッチは魔物の格としてお世辞にも強い種族ではないの。出会ったばかりの頃の私の初期能力は低かったでしょう? だからこそ、オルカ化によってここまで引き上げられる余地があったのではないかと考えているわ」


 そうなの? エルザって最初から魔法ぶっぱで強かったイメージしかないんだけど……ランクはE+だったけど、ランク詐欺としか思えなかったし。

 まあ、でもエルザが喜んでいるなら何でもいいや。ただでさえ頼りになるエルザが強くなっちゃったんだもの、これから盛大に甘えまくるとしましょう! 現時点で、これでもかというほど甘えてるんだけど! 甘えんぼなオル子さんです、えへ。


「新スキルも獲得したけれど、これは追々試していきましょう」

「ほむ、ちなみにどんなスキル?」

「攻撃スキルよ。魔量値を消費してストックし、その数によって威力が変わる砲撃スキルね」

「うわあ……」


 もうそれを聞いただけで、スキルがどれだけやばいのかが分かっちゃった。

 つまり、私とクレアが前衛で足止めして時間を稼げば稼ぐほど、エルザの殲滅キャノンの準備が整うってことね。

 うむ、やはりデビルを選んで正解だったかも。遠距離攻撃はエルザに投げましょう、そうしましょう。


「主殿もエルザもお疲れ様でした。無事進化を終えられ、何よりです」

「ありがとうクレア! 山賊もぶっ潰したし、正体不明の糸目ドラゴンも倒して進化までできたし、これで安心して村に帰れるわね! オル子さんお腹ぺっこりんよ! ご飯が私を待っている!」

「ラグ・アースの村に向かうのじゃな。うむうむ、楽しみじゃのう」

「それでは今度こそ帰りましょう! マトルン村行きのシャチバスが発車しまーす!」


 みんなを乗せて、空の旅へ。

 ふむ、キャスも増えてこれで5人も乗ってるわけだけど、重さ的には何も問題ないわね。

 ただ、これ以上増えると乗るスペースがなくなっちゃうわね。シャチの乗車数制限は五人までかしら。

 そうだ、吊り篭みたいなのをササラに作ってもらおうかな? 籠の中にみんな乗せて、それを私がバルーン船のごとく運んで。うむ、ちょっと帰ったら提案してみよっと。
















 村に戻って、山賊全滅と竜狩りの件を報告すると、ササラに『何言ってんだこいつ』的な目で見られたりしたものの、村のみんなから盛大に感謝されたわ。

 まあ、これでラグ・アースのみんなが再び山賊に襲われることはないでしょう。

 もしかしたら、砦から出払っていた山賊がいたかもしれないけれど、あれだけ夥しい死体の山を見れば、この地に残ろうなんて気は失せるでしょ。村に来たら殺すだけだし、問題ないね。


 人間であるキャスを連れて帰ってきたことも、特に何とも思われたりしなかった。

 ラグ・アースって人間たちから迫害受けてるし、山賊の件もあって反対されたりするかなとちょっと心配だったけど大丈夫だったのよね。

 ササラに本当に大丈夫か、無理をしてないかと訊いてみたんだけど、


『俺たちだって人間の血が入ってるんだぞ、人間だからって拒絶したりしねえよ。それに、その……俺たちを助けてくれたお前が決めたことだからな。お前がその人間を傍に置きたいなら、そうすりゃいいんじゃねえの』


 って感じでそっぽ向かれて言われました。

 ぬふー、エルザとはまた違ったタイプのツンデレちゃんだわ。可愛い!


 という訳で、キャスも無事に村の一員に。

 まあ、キャスの前にクレアを村に連れ込んでるから、『こいつは人を連れてくるんだな』って思われてるのかも。人攫いシャチじゃありませんのよ?

 キャスにはオル子ハウスの一室を用意して、私たちと共同生活をしているわ。もちろん、キャスは戦えないから、境界の外に行くときはお留守番だけども。


 この村で生活を始めてから、キャスは毎日楽しそうにしているわ。村のあちこちを見回っては感動したり、アクア・ラトゥルネや村人と一緒に仕事をしたり。

 昨日なんか、メイド服を着たキャスが『どうじゃ、妾もなかなか捨てたものではなかろう?』なんてはしゃいでたけど……どうせなら美少年の執事服がみたいわ。

 キャスとても似合ってたんだけどね。お姫様にメイド服が似合うって褒め言葉なのかしら? まあいっか。




 そんなこんなで、山賊壊滅アーンド竜退治から三日。

 私は今日も元気にマトルンの村で異世界生活を充実させておりまふ。


「あああ……良いわ、とても気持ちいいわあ……」


 太陽が落ちかけている夕暮れ時。

 私は紅に染まる空の下、ササラの作ってくれた岩風呂で入浴中。私だけじゃなくて、ミュラも一緒よ。バシャバシャとお湯を叩いて楽しそう。

 とうとう完成したササラの芸術品。山賊ぶっ殺しデーから私は毎日のように活用させてもらってます!

 ちなみにお湯はエルザのウィッチ式生活魔法スキルで用意してもらっています。文句を言いながらも毎回お湯を用意してくれるエルザが大好きです。

 露天風呂ならぬ露店バスユニットに浸る私に、ササラは呆れるように言葉を紡ぐ。


「だらしねえ顔してんなあ……山賊を容赦なく殺しまわった奴が『これ』だもんな」

「オンオフしっかり切り替えられるのが良い女なんですう……むふー、生き返るううう。ササラも恥ずかしがらずに入ればいいのに」

「こんな公衆の面前で素っ裸になんかなれるか!」


 公衆の面前って、館のすぐそばに用意してもらったんだから、言うほど人なんていないけど。

 まあ、年頃の女の子だから仕方ないね。

 オル子さんも年頃の乙女だけど、お風呂の気持ちよさの前にはどうでもよかろうなのだー。人化したら恥じらいを思い出しましょう、そうしましょう。


 でも、庭のお風呂だからエルザもルリカもクレアもキャスも恥ずかしがって入ろうとしてくれないのよね。露天風呂気持ちいいのに。

 なんとしてもみんなにお風呂の素晴らしさを知ってもらうためにも、次のステップを踏む必要がありそうね。


「よし、ササラ、次は館の周囲に壁を作るわよ! 周囲に覗かれたりしないよう、囲いを作ってしまえば、きっとみんなもお風呂に入ってくれるはず! オル子さんあったまいいー!」

「よくねえよ! みんなに入ってもらいたかったなら、普通は先に用意するだろ!」

「ほら、私って服を着なくなって久しいからそのあたりの感覚が。ああ、でもそうするとオル子さんのセクシーシーンを楽しみにしている村の男の子たちが悲しみに暮れちゃうかな!? どう思う!?」

「こいつマジで頭悪いなとしか思わねえよ……」


 むっふっふ、夢が膨らむわ。みんなまとめて風呂女にしてくれる!

 特にクレアなんか、いつもちらちらとお風呂が気になるような視線を向けていたものね。

 私には分かるわ。あれはお風呂好きになる資質を秘めた戦士の瞳よ! 長風呂し過ぎてふやけてしまうといい!


 お風呂に浸かりながら、ササラと何気ない雑談に花を咲かせていると、館に近づく人物が。

 ううんと、ラグ・アースの村長と……あれ? 人間?

 黒を基調とした軍服みたいものを身に纏った、五十代くらいのおひげがカールした茶髪オールバックなおじさん。

 顔立ちは整っているけど、私おじさん趣味じゃないから心惹かれませんヌ。三十年若返ってくれないかしら。

 いや、そうじゃなくて、なんで人間が村に? 考えても分かるわけないので、ササラに質問してみる。


「あれって人間よね? なんで人間がラグ・アースの村にいるの? 山賊の仲間?」

「馬鹿、あれは領主様だろ。山賊なんて言ったら怒られるぞ」

「え? 領主ってラグ・アースじゃないの?」

「そんなわけないだろ。ラーマ・アリエは名目上こそラグ・アースの国となっているけど、その実はサンクレナの属国、一地方って扱いだからな。領主はサンクレナから派遣されたお貴族様に決まってる」

「ほへえ、そうなんだ」

「領主様は人間なのに、俺たちラグ・アースを守るために奔走してくれる凄い人だからな。キャスのことだって、あの人のことを知っているから俺たちは簡単に受け入れられたんだよ。人間がみんな悪人ばかりじゃないって知ってるからな」


 なるほどねえ。領主様、ラグ・アースに信頼されてるのね。

 しかし、その領主様が村までいったい何しに来たのかしら。


「たぶん山賊の件だろ。あいつらに襲われたことや返り討ちにしたことを報告して、その確認に来たんじゃないか?」

「なるほどねえ、じゃあ私は関係ないかにゃあ」

「いや、大有りだろ! 山賊を返り討ちにして、しかも根城までぶっ潰した奴が無関係なわけないだろ! ったく、どういう思考回路してるんだよ……」

「お風呂の最中だから面倒事は勘弁してほしいんだけど……ササラ、私の代わりに対応してくれない? このあとご飯が待ってるから長話は勘弁でござる!」

「無理だろ。オル子たちのこと、根掘り葉掘り訊いてくると思うぞ。笑えるくらい高ランクの魔物が領内の村を拠点に暮らしているんだからな」


 あー、そうよねえ……よし、こうなったらエルザに全部投げよう。もしくは同じ人間のキャスに適当に説明してもらいましょう。

 む? お髭の領主様、私たちを見て呆然としてるわね。どうしたのかしら。

 そして、村長さんに耳打ちされて、困惑顔のまま私に近づいてきて、その場で深く一礼。


「厳かな儀式の最中、失礼いたします。私の名はアルベール・ヴァルド・ガルガン、このラーマ・アリエの領主を務めております」


 おお、礼儀正しい人なのね。

 さて、この領主様の話、短く終わればいいんだけどなあ……お願いだから難しい話だけは勘弁よ!

 私、授業中の居眠りには定評があるんだから! ノートを涎まみれにした回数、百より先は覚えておらぬ!




 



・ステータス更新(オル子進化・新スキル獲得、エルザ進化・新スキル獲得)



名前:オル子

レベル:1

種族:デビル・オルカ(進化条件 レベル20)

ステージ:3


体量値:S 魔量値:D 力:S 速度:A

魔力:C 守備:A 魔抵:C 技量:E 運:D


総合ランク:A


獲得スキル:冥府の宴(単体:近:ダメージ0.5倍×2~10回:力依存:CT20)




名前:エルザ

レベル:1

種族:オルカ・ソーサラー(進化条件 レベル20)

ステージ:3


体量値:E 魔量値:A 力:F 速度:D

魔力:S 守備:F 魔抵:A 技量:C 運:C


総合ランク:B


獲得スキル:アビス・キャノン(複数:遠:ダメージ2.0倍×ストック数。CTごとに砲撃かストックを選択可能。ストック数は最大で3つまで。ストックMAX状態のままT90経過でストック消滅:魔力依存、ストックごとに魔量値消費(小):CT30)



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ