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37.素敵なステップね、一曲お相手お願いできるかしら

 



 やってきました境界線の外側、ハロー魔物領域。


 ここ数日はずっとクレアのお世話をしていたので、魔物退治は休業してたのよね。

 クレアも精神的にだいぶ落ち着いたので、レベル上げ再開って訳。


 ただ、いつもと違うのは、狩りを行うメンバーにクレアが追加されているわ。

 記憶喪失だし、病み上がりだからまだ戦場は早い気がするんだけど、本人がどうしても私の傍を離れたくないって言うので。

 むふー! オル子さんモテモテ! 男の子も遠慮せずにドンドン寄ってきていいのよ!


「いい、クレア。まずは自身のステータスを確認する方法を思い出す必要があるわ。ステータスを確認できなければ、スキルも使えないから戦闘で大きく不利になってしまうものね」


 草原に降りるなり、エルザがクレアに戦闘のレクチャーを始める。

 そっか、記憶喪失だからクレアは自分のステータスの確認方法が分からないんだ。

 むふん! これはオル子先生が直々に教えてあげるしかないようね! 生活面の教師役はクビになっちゃったけど、これくらいなら私でもいけるわ!

 クレアの騎士鎧風のスカートをピコピコとヒレで引っ張り、レッツご教授!


「ステータスの確認方法は簡単よ! 『ステータス・オープン』と念じるだけでいいの! いいえ、ここは盛大に叫んでみましょうか!」

「なるほど……ありがとうございます、主殿。早速やってみます。『すていたす・おおぷん』!」


 クレアが合言葉を叫んで瞳を閉じる。どうかしら! いけたかしら!

 待つこと数秒、クレアが申し訳なさそうな表情を浮かべているところをみると、失敗っぽい。ぬう、どうして。私はこれでいけるのに。

 首を傾げる私たちに、エルザが人差し指を立てて説明を行う。


「自身の能力を確認する方法は魔物の種族によって差があるのよ。全てが同じ方法ではないわ。例えばウィッチなら、己の根源を探求するイメージを心に描くの」

「アクア・ラトゥルネでしたら、海中から水面に顔を出すようなイメージですね。これらは誰に教えられる訳ではなく、生まれた時から知識として刻まれているものなのです」

「ほへえ、そうなんだ……ミュラも特別なやり方があるのかしら?」


 私の問いかけに、頭上にライドオンしているミュラがペチペチと叩いて肯定。

 なるほどぬー。つまり、私やエルザの方法じゃクレアはステータスを確認できないってことなのね。にゅう、残念。


「一番早いのはオーガ族にその方法を訊ねることだけど、オーガ族は遥か東の、それこそ魔王城近くに生息域を持っている魔物だからね。本来なら、こんな大陸中央部にいるはずがないのよ」

「つまり、私は何らかの理由でこの地まで出向き、何者かに襲われ、そのときの大怪我により記憶を失ったとエルザ殿は見ているのだな」

「そうね。だから、他のオーガに頼ることは早々に諦めて、クレアは自分で方法を思い出さなきゃいけないわ」

「無理せずゆっくり一歩ずつ頑張るのよ! 焦る必要なんてないからね!」

「ありがとうございます、主殿……ですが、ここは一刻でも早くその方法を見つけ出せるよう、尽力いたします。そうすれば、主殿や皆の力になれるかもしれませんから。主殿や皆に命を救われ、素性も分からぬ私を受け入れて頂いた恩に少しでも早く報いたいのです」


 うう、格好いいっ! やだ、クレアの忠義が眩しくて直視できない!

 エルザもルリカもそうだけど、どうして私の周りに集まる女の子はみんな格好いいのだろう。いや、私も人化すればかなりいけてると思うんだけどね?

 みんな性格も凄く素敵だし、これでみんなが男だったら……ぬう!? これはこれで妄想が捗るかも!

 素直になれないけど、面倒見の良いツンデレウィッチ! 優しく温厚で常に私のことを思ってくれる柔らかアクア・ラトゥルネ! そして、凛とした忠義に溢れる騎士オーガ! これが全て男の子だったとしたら……?




『オル子、お前は自分が望むままの道を歩いていけ。お前の夢は俺が支えてやる。何があっても、な』

『オル子様、僕が願うのはあなたの幸せだけに他なりません。あなたが笑顔になれるのならば、僕はこの命すら惜しくはありません』

『主殿、我が剣はあなたのために在り、我が魂に至るまであなたの所有物です。主殿の道を阻む悪鬼どもは全て私が切り伏せてみせましょう』




「むっはーーーー! オル子ちゃんハーレムきたーーー! ちょっとエルザ、今すぐ性転換の薬を開発して頂戴! 金に糸目はつけませぬ! いざ、いざ、いざ!」

「また意味の分からないことを……魚のオスメスなんて大差ないでしょう。諦めなさい」

「私が飲んでも仕方ないでしょ! エルザが飲むの! エルザ、今からでも遅くはないわ! オル子ちゃん物語のヒーローになろう! 需要が、オル子さんのイケメン需要が!」

「それじゃ魔物狩りを始めるけど、クレアは見学よ。私たちの戦いを見ていれば、戦闘に関して何か思い出すためのきっかけになるかもしれないから」

「いーーやーー! 無視しないでえええ! エルザ私のこと好きよね!? 大好きよね!? 一度だけ、一分だけでいいから疑似美少年ハーレムを経験させてえっ!」


 私のおねだりを華麗にスルーするエルザさん。もう、ツンデレなんだからっ。














「戦場において味方殺しほど恐ろしい物はない! という訳でいっちょ混乱いってみよう!」


 熊みたいな魔獣の群れに、コンフュ・エコロケーション発射!

 ゴーレムとかには全然効果ないんだけど、生物系だと結構良い感じ。何匹か混乱状態に陥り、味方の熊に噛みつき始めた。ふふふ、私ってば魔性の女ね!

 群れの内側から襲われたことで、足が止まった熊たちに、エルザとミュラの電撃魔法、そしてルリカの水魔法が炸裂。ふむ、これなら私が殴る必要もないわね。

 熊たちが一匹残らず死んだのを確認して、熊肉回収。毛皮といい、村の人たちが喜ぶわあ。


「やっぱりこの辺の魔物は質が落ちるわね……もう少し歯ごたえのある魔物の生息域を探さないといけないかしら」

「蒼海の洞窟もヴァルガン洞も経験値美味しかったもんにゃあ。ここらの敵はF前後って感じなのばかりだから、なかなかレベルが上がらないね」


 エルザさんは魔物の弱さに不満顔。

 まあ、仕方ないね。美味しい稼ぎ場なんてそうそうあるものじゃないし。

 蒼海の洞窟や海近隣は私の支配下にしちゃったから、魔物倒してもレベル上がらないのよね。くそう、支配者だったイカをギリギリまで追い詰めて生かしておくべきだったかしら。


 そんなことを考えていると、ふと視線にクレアが。

 ぬぬ? クレア、何してるのかな。木の棒を両手で握りしめて、瞳を閉じて精神集中? なんか剣道してるみたい。


「ステータスを確認するために色々な方法を試しているんでしょう。少しでも早く私たちの力になりたいっていつも言っているものね。本当に生真面目な性格だわ」

「ソード・オーガってくらいだし、剣が必要なのかしら。とはいえ、私たち剣なんて持ってないからにゃあ……ササラに作ってもらえないかしら?」

「オーガが使うほどの剣は無理だと思うけれど……戦闘用として使えなくてもいいのなら、形だけは作れるかもね。クレアが望むならお願いしてみてもいいかもしれないわ」

「うにゅ。ちょっとクレアに確認してみるね。ほほーい! クレア、ちょっとー!」


 飛び跳ねてクレアに近づき、話しかけようとした刹那――クレアの両目がカッと見開いた。

 そして、次の瞬間、クレアの握る木の枝が紅の光を纏った。

 え、え、何、魔法剣!? 何もない空間に向かって、クレアは紅の輝き放つ木の枝を振り回し、斬撃を放っていった。


「はああああああああ!」


 一閃、二閃……まるで踊るように繰り出される紅の流星が空間に降り注いでいく。

 あまりの流麗な舞に、私は魅入ってしまう。

 剣技を放ち終え、根元から折れてしまった木の枝を握ったまま、クレアは困ったように笑う。


「能力を確認する方法ですが、どうやらこれが『当たり』だったようです。スキルもご覧のとおり、問題なく使用できましたが……やはり木の枝では折れてしまいますね」

「う、うおおおお! 凄い凄い凄い! クレアやばい、格好いい! 今の何!? 必殺剣!? ヒケンクレアスタイル!? そこんところ詳しく!」


 興奮を抑えられず、私はクレアの傍まで近づき、周囲を跳ねまわる。

 いや、だって今の凄いのよ? ぴかーん、どばーん、しゅぴぴーんて感じで!

 あれかしら、クレアは追撃連続突撃でエンドレスで敵を斬り殺す系乙女なのかしら! 大喜びする私に合流したエルザたちもクレアに話しかける。


「どうやらステータスは確認できたみたいね。何よりだわ」

「おめでとうございます、クレア」

「ありがとう、エルザ殿、ルリカ殿。ミュラ殿も」


 私の飛び乗って見つめてくるミュラにも、クレアは微笑み返してお礼を告げる。

 

「皆の戦いを見ていて、体の奥底から何かが疼く感覚が止まらなくて、気付けば木の枝を握っていた。そして、その感覚に身を委ねていると、脳裏に己が能力の詳細が浮かんでいたよ」

「そう。戦いの中に答えを見つける……オーガらしいわね。それでどう? ステータスはオル子の能力で分かっているから、スキルの詳細について教えてもらえるかしら」

「え、ちょっと待ってエルザ。スキルの詳細はまだ分からないんじゃないの? 全部使ってみないと、効果分からないと思うんだけど」


 確か、ステータス表記のスキルって名前だけしか出てこないのよね。

 効果の説明は私が識眼ホッピング覚えた後で記述された訳で、今の時点ではクレアのステータス画面にはスキル名しか載ってないはずだけど。

 そんな私の言葉に、エルザとルリカは不思議そうな顔をする。あれ、え、私なんか変なことを言った?


「スキルの効果はステータスを確認すれば分かるでしょう?」

「いやいや、ステータス画面にはスキル名だけしか載ってなくない? 私は最初それで、全部使ってみて初めて効果を確認できたもん。今は『識眼ホッピング』のおかげで、スキルの説明文が載るように進化したけど」

「おかしいわね……オル子、普通はスキルを得た状態なら、その効果が把握できるものなのよ。『識眼ホッピング』をしようせずとも、私たちはそれができるわ」


 な、なんですと! つまり、エルザたちは最初からスキルの説明書があるのに対し、私は説明書無しでプレイさせられたってこと!?

 ぐぬう、私だけそんな鬼設定だなんて酷過ぎる。体を張ってブリーチング・クラッシュを試した私の時間を返して!

 そんな私の哀しみをおいて、早速クレアは確認できたスキルについて説明していく。

 クレアが所有していたスキルは全部で5つ。それぞれこんな感じの能力。




・剣舞『紅』(単体:近距離:ダメージ0.8倍:3~5回攻撃:力依存、武器性能依存:発動前硬直(微小):CT30)


・剣閃『蒼』(複数:近距離:ダメージ*0.5倍:1~3回攻撃:速度依存、武器性能依存:発動前硬直(微小):CT60)


・剣輝『碧』(単・自身:速度↑技量↑効果T60:魔量値消費(小):CT90)


・転移『瞬』(味方全体:自分を含め、対象の味方を全て強制転移させる。転移距離は魔力依存:魔量値消費(大):発動前硬直(大):CT90)


・創造『剣』(単体:近距離:対象を剣へと変化させる。自分の総合ランクより遥か格下(6段階以下)の命ある相手にしか効果がない。変化させた対象によって武器の性能は変動する。性能はGからSまで存在する)




 ほむ。なんというか、前三つは分かるけど、後ろ二つが難しいわ。

 前衛戦闘をするうえで、上三つは大切よね。必殺技に、範囲攻撃、能力上昇……どれも重宝する技だわ。残り二つはこれ、どう使うんだろう。


「転移スキルの転移距離が魔力依存……クレアの魔力って確か」

「G、ですね……」

「だよね。Gって、どれくらい転移できるんだろう。ちょっと試してみてくれる?」

「分かりました。参ります!」


 クレアの転移『瞬』が発動すると、私たちの周囲を白い光が包み込む。

 そして、次の瞬間、私たちの体は浮遊感に包まれ、別の場所に……いや、あの、あんまり変わってないような。距離にして三百メートルくらい? ぬう、これは……残念移動スキル?


「悲観する必要なんてないわよ。空間転移スキルなんてかなり珍しい上に、使い手がクレアほどの実力者なら短距離でも奇襲用として十分過ぎるわ。レベルを上げて進化していけば、移動距離もさらに伸びていくでしょうしね。使う場面によってはこのスキル、さらに大化けするわよ」

「そのように言ってもらえると助かる……すみません、主殿。この能力ではまだ主殿の力になれないようです」

「いや、全然気にしてないからいいけども。それじゃ、最後のスキルはどうなのかしら? 説明を聞く限り、弱い魔物を自分の武器に変えて使うみたいだけど」


 これもよく分かんないのよね。強い武器になるならいいんだけど、ランクが6段階より下じゃないと駄目なんでしょ?

 クレアがC+だから、そこから六段階……E+以下の魔物を武器にして使用、ううん……強いイメージがあんまり……大ガエルとかタニシとか剣にしてもにゃあ。

 とりあえず、物は試しとばかりに、さっき戦った奴と同じ熊の魔物を見つけ出し、クレアの近くまで誘導。襲い掛かろうとする熊に対し、クレアのスキルが発動する。


「汝の強き魂、その銘を我が身に刻め! 創造『剣』――熊おこ剣!」

「くっ、熊おこ剣とな!?」


 白い霧が熊を包み込み、あっというまに霧がクレアの右手に収縮していく。

 そして、生み出されたのは茶色に鈍く輝く銅の剣。鍔の部分にクマの掌肉球マークがキュート。

 名前も見た目もあまり強そうとは……いいえ、全然強そうとは思えない剣を一振り、二振りして、クレアは微妙そうな表情を浮かべる。あ、やっぱり名前に負けないくらい性能も微妙なんだ……熊おこ剣って。もっとこう、何かあるでしょ。


「性能ランクはF……間に合わせではありますが、武器には変わりありません。これで私も主殿と共に戦いに加われるかと」

「ああ、うん、それはありがたいんだけど、それよりも熊おこ剣って、クレアが考えたの?」

「いえ。このスキルで生み出した剣は自動的に『銘』を与えられる仕組みのようです。もし私に命名が許されるなら、主殿の名をお借りしようと考えていたのですが」


 え、何それ怖い。熊の剣なのにシャチの名前をつけるの? 強くなると魔剣オル子とか究極剣オル子とかオル子++とかになるの? 我が剣オル子の名にかけてとか言っちゃうの?

 鍔の熊肉球をぷにぷにしていると、エルザが考え込むように顎に手を当てる。


「スキルのルール上、剣にする魔物は低ランクでなければならない。だけど、弱い魔物では強い剣になり得ない。クレアが成長して、高ランクになった後にBランクの魔物を武器化すれば化けるスキルなのかしら。それとも、すっぱり諦めて剣を調達したほうが……」

「でも、良い武器なんて簡単に手に入る物なのかな。村にはササラが手作りで作った石槍くらいしかないし」

「海王城の宝物庫から持ち出したものに剣はなかったと記憶しています」

「大丈夫です、主殿。私はこの熊おこ剣と共に、主殿のために戦い抜くことを誓いましょう」

「熊おこ剣と誓っちゃうんだ……まあいっか。うむ、頼りにしちゃう!」


 できればもっとムードの出る剣でその台詞を聞きたかったんだけど、仕方ないね。

 とりあえず、クレアがスキルを使えるようになったし、今日は大収穫ね。

 レベルは上がらなかったけど、来てよかったよかった。


「それじゃエルザ、今日はもう帰りましょう! 村に戻ったらそろそろお風呂が完成していると思うの! 今日は記念すべき初入浴の日よ! むっふー! 楽ちみ!」

「ああ、ラグ・アースの子どもたちに作らせていたアレね。全く、ちょっと目を離したら遊ぶことばかり考えて、あなたはもう少し……」


 エルザがお説教を始めそうだったので、地面にうつ伏せになって全力ガード。

 おほほ! これぞ私が考えに考え抜いたエルザの説教対策よ!

 私だって反省するの、毎日エルザに怒られて『怒られた時にどう耐え凌ぐか』を頑張って考えた結果がこれよ!

 我が無敵チート、破れる物なら破ってみなさ……おふ! 横腹を杖でめいいっぱい突くのは止めて、ひぎい!
















 今日の魔物狩りを終え、私たちはマトルンの村へと戻ってきた。

 村を出る前にお風呂はだいぶ完成していたからね! 職人肌のササラのことだもの! きっと仕上げてくれているに違いないわ!


「おっふろ、おっふろ、おっふろんろん! さあみんな! 早くササラのところへ行くわよ! みんなには是非ともお風呂の素晴らしさを共有してもらわなくちゃ!」

「分かったから落ち着きなさい。焦らなくてもササラたちは逃げないわよ」


 ぴょんこぴょんこと飛び跳ねながら、村の奥へと進んでいく私たち。

 ぬ、なんか今日は村人少なくない? いつもならこの辺りで農作業してる村人とかがいるはずなんだけど……みんなお出かけ?

 首を傾げていると、他のみんなも気づいたのか、表情を顰めて疑問を口にし始める。


「村人がいないわね。どこかに集まっているのかしら?」

「何か集まり事などがあるとはお聞きしておりませんが……」

「ふぬう……まさか、オル子さんに隠れて誕生日を祝う準備をしてくれているとか!? サプライズでお祝いなんて嬉し過ぎるじゃないの! どどど、どうしましょ、そんな心の用意がまだできてないわ! ふぬう、エルザ、私の服や髪は乱れたりしてないかしら!?」

「ないものは乱れようがないでしょう。あなたは常に全裸で毛髪ゼロじゃない」

「わあああああ! エルザが私のこと露出狂のハゲ扱いしたあああ!」


 地面にヘッドバッドを繰り返しつつ号泣。酷いわ酷いわ、私女の子なのにこの扱いは酷過ぎるわ。

 頭をぽむぽむと撫でて慰めてくれるミュラだけが私の癒しだわ。お母さん、負けない。今度ササラに鬘を作ってもらうもん。ブロンドサラサラヘアのシャチになるんだもん。

 そんな決意を内心で固めていると、これまで黙していたクレアが瞳を鋭くしてぽつりと呟く。


「――子どもの悲鳴が聞こえる。それと、男の笑い声もだ」

「え、マジで!?」


 私には全然聞こえないんだけど、クレアのエルフ耳には何かが聞こえたらしい。

 凛とした表情に怒りを湛えながら、クレアは状況説明を続けていく。


「子どもの声は、ササラです。男の方は聞き覚えがありません。恐らく、村の者ではないでしょう」

「驚いた。そこまで分かるの?」

「記憶がないからな。この村で過ごし、村の皆と過ごした日々が私を形成している。その村人の声を私が間違えるはずがない。主殿、ここは急ぐべきかと」

「ササラの悲鳴と聞いて黙っておれませぬ! 行くわよ、みんな! もしかしたら戦闘になるかもしれないから、戦闘になったら各々で判断! 村人が危険そうなら村人救助を第一に! ルリカはヒーリングの準備よろしく!」


 バタバタとヒレを上下させて、私は村の奥へとすっ飛んでいった。

 いったいどこのどなた様が来ているのか知らないけど、私のホームタウンに、何よりササラたちに手を出すなど絶対に許さぬううう!


 ……はっ、もしや村に美人の魔物が住み着いた情報を耳にした人間の貴族青年がササラたちに素性を問い詰めているのでは!? 『こいつは俺が側室に連れて帰る』といって攫いに来たのでは!?

 そして、あれよあれよという間に仲を深めて、いつのまにか私が正室になるという流れでは!? 間違いない! そろそろ私の物語に恋愛展開があってもおかしくないはずだもの!


「うおおおおおお! ここにいるぞおおお! あなたの凍て付いた心を溶かすことのできるスーパーぷりちーヒロインはここにいるぞおおお!」


 のんびり空なんて飛んでる場合じゃねえ!

 びょこんびょこんと飛び跳ねて、私は全力ダッシュで村の中央を目指すのだった。








・ステータス更新(仲間追加)


名前:クレア・グーランド

レベル:6

種族:ソード・オーガ(進化条件 レベル20)

ステージ:3

スキル:剣舞『紅』(単体:近距離:ダメージ0.8倍:3~5回攻撃:力依存、武器性能依存:発動前硬直(微小):CT30)

    剣閃『蒼』(複数:近距離:ダメージ*0.5倍:1~3回攻撃:速度依存、武器性能依存:発動前硬直(微小):CT60)

    剣輝『碧』(単・自身:速度↑技量↑効果T60:魔量値消費(小):CT90)

    転移『瞬』(味方全体:自分を含め、対象の味方を全て強制転移させる。転移距離は魔力依存:魔量値消費(大):発動前硬直(大):CT90)

    創造『剣』(単体:近距離:対象を剣へと変化させる。自分の総合ランクより遥か格下(6段階以下)の命ある相手にしか効果がない。変化させた対象によって武器の性能は変動する。性能はGからSまで存在する)


体量値:C 魔量値:D 力:C 速度:A

魔力:G 守備:D 魔抵:F 技量:A 運:C


総合ランク:C+




  

 

ご感想200件突破、心より感謝申し上げます! 本当にありがとうございました!

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