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25.無双ゲーはちょっと画面酔いしちゃう

 



 巨大な扉をヘッドバッドで御開帳!

 おおう、いるわねいるわね、中に魚人の魔物がゾロゾロと。

アクア・ラトゥルネと比べて、シャクル・ラトゥルネの方が魔物寄りの容貌してるのね。口なんか裂けて牙が見えてるし、獰猛な鮫っぽいわ。

 エントランスホールの兵隊五人がトライデントを構えて睨んでくるけど、全然怖くないわあ。


「なんだこの海獣は!?」

「外の連中が殺られてやがる! 武器だ、武器を構えろ!」


 ふーん、ふーん、なるほどねえ。どいつもこいつもDランク。

 隊長格っぽい真ん中の奴だけD+。まあ、敵じゃないわね。よーし、それじゃあ始めましょうか。


「こんにちは、シャクル・ラトゥルネの皆様。私の名はオル子、決しておデブでもなければ不気味でもないオル子よ。覚えてくれた? 覚えてくれたわね? ――それじゃあ、とっとと死んでくださいなっと!」

「何をい――あぎぇ」


 勢いをつけて真ん中の偉そうな魚人にタックルドーン! はい上手に死にましたー!

 魚人と一緒にお城の壁ごとぶっ壊しちゃったけど、別にいいわよね。もうこのお城は敵のお城だし、壊してもルリカに怒られたりしないわよね!


「隊長が一撃で!? くっ、殺せ、殺っぎぃ」

「ああばっ」


 私に襲い掛かろうとした魚人だけど、次々に頭が吹っ飛んじゃった。私じゃないよ! エルザのヘッドショットだよ!

 というか、エルザのシャチ銃って頭蓋骨程度なら吹き飛ばすくらい威力あるの? 魔力Aってやばいわねえ……


「くらえ、この化け物が!」


 エルザに見惚れてたら、私の背中に魚人のトライデントがブスリんちょ! なんてね、ちっとも刺さりませんヌ。槍が根元からぽきりとへし折れました。

 唖然とする魚人に、私はゆっくりと振り向く。慄く魚人さんに、優しいオル子さんは丁寧に説明をしてあげるのですわ。


「その程度じゃ乙女の柔肌は貫けないのよね。残念でした。ところであなた、今私のこと化け物って言ったわよね? よね? じゃあ、死のっか?」

「ひっ……ぎいっ!?」


 必殺、サマーソルトシャチ尻尾!

 説明しましょう! サマーソルトシャチ尻尾とは、その場で宙返りをしつつ、ぷりちーなお尻を力強く振って尾びれを敵に叩き付ける必殺技である! 顔面に叩き込むと相手の首から上は消失する!

 乙女に向かって化け物など失言も甚だしいわ! 『くらえ美少女!』とか『死ね可憐な女の子!』とか言うなら見逃してあげてもよかったのに!


 残る一匹はミュラが偽オル子の目からビームで焼き殺してた。

 まあ真っ黒焦げ、魚の焼ける良い匂い。焼き魚食べたいなあ、サンマとか。ああ、やばい、考え出したら止まらなくなってきた!


「ルリカ! 今晩は焼き魚が食べたいわ! 脂がいっぱい乗った魚をポン酢でふわふわぽん!」

「承知いたしました。今夜は腕によりをかけて魚料理をお出ししますね」

「魚料理の前に、どんどん湧いてくる魚人どもをどうするか考えなさいな」


 通路から二階から次々に魚人の増援が現れてくるけど、別に考える必要なんてないにゃあ。

 だって、こいつら倒さないとボスである海悪鬼とかいう奴のところにいけないわけで。だったらやることなんて一つじゃない!


「一匹残らず蹂躙あるのみよ! 私のことを『デブ』だの『不気味』だの『化け物』だの『彼氏いない歴十六年プラスアルファ』だの『友達には良いけど絶対彼女にはしたくないタイプ』だの言いたい放題言ってくれた連中に明日を生きる資格などないわ!」

「後半は被害妄想も甚だしいことこの上ないのだけれど、どうせ結論は同じなのだから良しとしましょうか。一匹でも残したら面倒だもの、全員ここで殺すわ」

「それでは、皆様にご加護を――水のヴェール!」


 ルリカのスキルが発動し、私たちの全身を薄水色のベールが包みこむ。

 確かこれ、物理ダメージを少しカットしてくれる奴だっけ。守備Aの私がさらにガチガチに! むふー! これぞオル子タンク! 姫騎士オル子ちゃんです!

 くっ、私は格好良くて素敵な男の人以外には屈さないわよ! だから素敵な男性は会いに来てください!


「殺せ! 侵入者を排除しろ! グラファン様のもとへたどり着かせるな!」


 シャクル・ラトゥルネたちが一斉に襲い掛かってくる。

 むう、男の人に群がられる、悪い気はしないけど、どの人もちょっとワイルド過ぎるっていうか、魚顔過ぎるっていうか。

 私、魚みたいな人はちょっとね。見た目じゃないとは言うけれど、流石に魚は問題外よね。魚は本当にねえ……本当にもうね……


「ぬわあああ! なによなによ、魚で悪かったわね! 好きで魚になったんじゃないわよ天使のバカ! くわっ、全員そこに並べ! オル子さん怒りのヒレビンタ・カーニバル!」

「ぐああがが!」


 先頭を走っていたシャクル・ラトゥルネを捕まえて頬に全力ビンタ。首が270度くらい回っちゃってゴキリなんて鈍い音したけど、まあいいや。次!

 近づいてきたやつを片っ端からヒレビンタ、ヒレビンタ! 撃ち漏らしをエルザとミュラが銃とビームで掃討。うおおお! シャチをバカにするやつは全員ビンタの刑に処す!


「そこのあなた! 今『シャチのくせに恋愛相手に高望みし過ぎだろ』って思ったわね!? ギルティ! ヒレビンタ!」

「ぎえあ!」

「そこのあなた! 今『シャチの分際でドレス着飾りたいなんて頭おかしいんじゃねえの?』って思ったわね!? 断罪! ヒレビンタ!」

「あばっ!」

「そこのあなた! 特に理由はないけど、とりま処刑執行! ヒレビンタ!」

「そんなあびゃっ!」


 私は怒りの炎を心に灯して敵を次々と倒していく。

 これはルリカのお父さんの怒り! これはアクア・ラトゥルネの民の怒り! 決してオル子さんの理不尽な八つ当たりではないの、あくまで愛と正義の刃なのよ! 仲間の為に悪を討つのよ!

 ビンタ一発で泡を吹いて死にきれない相手も、エルザが容赦なく追撃の銃弾で射殺。

 無慈悲に思えるけれど、経験値って大事だからね。HP1だけ残して魔物放置しても意味ないからね。エルザさんシビア過ぎて痺れるう。


「な、なんて強さだ!? 俺たちが、シャクル・ラトゥルネが手も足も出ないなど!」

「ええ、その気持ちは痛いほどに分かるわ……私も昔、妹の宿題を手伝ってあげようとしたとき、手も足も出なくて惨めな思いをしたものよ。『お姉ちゃん、もういいよ。アホなお姉ちゃんに期待してなかったから』と哀れんだ妹の視線が今も忘れられません。という訳でさくっと死んでみよう! さよならだドーン!」

「ぐげ」


 相手の哀しみを知ることで、私はまた強くなれた気がしたわ。

 名も知らぬ魚人、あなたの哀しみは私の中で生き続けるわ。数学だったのが悪かったのよ、私数学嫌いだもん。国語なら絶対解けたはずだわ、ありをりはべりーべーぼくのふねー。


 よし、増援の敵も全て一掃したわね。私のレベルもいつの間にやら9まで上がっちゃった。

 それじゃ、ボスの海悪鬼の部屋に向かいましょうかね! ええと、上への階段と下への階段があるんだけど、どっちだろ。ふむう。


「上への階段ね! 王様は高いところで敵を待ち受けているのが古来よりの仕来りよ! きっと上に玉座と宝物庫があって、そこにグラファンの奴がいるに違いないわ! オル子さん名推理! 伊達に探偵漫画を読み耽ってなかったわ!」

「ルリカ、玉座と宝物庫ってどっち?」

「地下ですね。おそらくそこにグラファンがいるかと」

「ほらみなさい! やっぱり私の予想通り敵は地下にいるようね! ボスは地下深くで主人公を待ち受けているのがゲームの王道よ! オル子さん名推理! 伊達にRPGをやりまくってた訳ではないのよ!」


 エルザの視線がブリザードのごとく凄く冷たいけど気にしない。気にしないったら気にしない。

 雑魚のお掃除はだいぶ進んだようだし、敵の本丸を落とさせてもらいましょうか!

 そしてボスを倒して、私は翡翠の涙結晶を手に入れて美少女になるの! ふふ、このシャチボディとお別れのカウントダウンの音が聞こえ始めてる! 待ってて私の美少女恋愛薔薇色ライフ!



 

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