102.美しく、優雅に。目も離せないくらい圧倒してあげる
さてさて、ドラゴンを倒すと決めた以上、ちゃちゃっと戦闘を終わらせてしまいましょう。
こいつらを倒して、生き残った人間たちにお城へ案内させて、サンクレナ全域の『支配者』の権利をササラに譲渡させてしまって終わり!
ボスの空気まとってた竜族が『聖剣』のカウントを増やして何を狙っているのか分からない以上、人間を殺すのは極力止めましょう。
まあ既に私たちが7000もカウント稼いじゃってるんだけどね! てへ!
「それじゃ、ドラゴンたちを喰い破りますよ! 七色いっぱいいるので、好きな色を選んでぶっ殺してね! ランクはどいつもBランクくらいです! 以前戦った糸目ドラゴンよりちょい弱を想定するといいかも!」
「Bランクの竜族ね……この先、いつか竜族とぶつかることを想定して、良い練習相手といったところかしら」
『よし、クレア。俺を元の姿に戻しやがれ。あの程度の相手ならアルエがいれば十分だろうよ。俺は俺で奴らと遊ばせてもらうことにするぜ。クカカカッ!』
まあ、ポチ丸ったらノリノリね。ドラゴンVSポメラニアン、絵面的にはどう考えても絶望しかないんだけど、Bランク程度なら何とかしてしまいそうな雰囲気のあるワンコです。
ミュラも気合入ってるのか、偽オル子をペチペチと叩いてやる気表現しているし、ミリィに至っては既にハンマーを準備して牙を剥きだしにしてるし。可愛らしい犬歯ですぞ!
あれよね、こういう姿を見ると、みんな根っこは魔物っ娘なんだなって感じよね。敵を倒し、捻じ伏せて、圧倒する! それが魔物の生きざまよ!
よーし、オル子さんも久々に燃えるとするわよー!
『森王』戦ではほぼ負傷退場、『聖剣』戦では王様を水底に沈めただけで、最近いまいち暴れてないからぬー。
久々のオル子無双といきますよ! 恋もいける戦闘もやれる、何でもできる万能令嬢オル子さん、華麗にいざ出陣!
「ぬおおお! 一番槍はもらったあああ! みんなに良いところみせて後で沢山ちやほやしてもらうんじゃあああ!」
「あ、こら、ずるいぞテメエ、待ちやがれ――」
クレアの腕の中でブサポメが何か叫んでるけど聞こえませーん!
ほほほ! こういうのは早い者勝ちですよ! さてさて、どの色のトカゲちゃんを貰おうかな~っと。
よーし! 私のイメージカラーであるブルードラゴンちゃん、君に決めた! 最初の三匹で私は必ず水を選ぶのですぞ! こだわりを知る人は水タイプっ!
人間たちに向かって青い炎を撒き散らしているドラゴンの背中めがけてシャチ・ダイレクト・ボンバー!
大空から加速をつけて、思いっきりタックル。何も考えずに『ブリーチング・クラッシュ』を試みちゃうと、『森王』の時のように思いがけないカウンターが怖いからね。あれは連携の最後や安全だと確実に判明した時に撃ちましょう。
私の渾身の体当たりを受け、青竜はその巨体を一回二回と激しく大地にバウンドさせたわ。
ぬふー! きもてぃー! パワーSを舐めるんじゃないわよ! いくらデカかろうと、今のオル子さんに吹き飛ばせぬ相手などいないのです!
そして大地に寝転がった今がチャンス! 良い女は好機と出会いを見逃さない!
「一気に仕留めてあげましょう! 『キラーホエール・ダイブ』からのー、久しぶりの『冥府の宴』、かもん! おいでまし、我が分身たち!」
必ず追加攻撃発生という補助スキルをかけ、そこから『冥府の宴』のコンボ! 鬼火力の意味を教えてあげましょう!
私の周囲に現れたマイ分身たちが、次々と立ち上がろうとする青竜目がけて突進していく。さあ、存分に暴れまわりなさい!
「いかーん! らめえええ! 『聖剣』を依代としてあいつらに復活させちゃらめええええ! ほぎゃああああ! く、黒歴史が! 私の黒歴史があばばばばば! く、静まれ、静まるのよ私のソウル……」
「さっきからこのオル子が喧しい件について。何いってだこいつ」
「家庭も顧みず、死ぬまで戦いに明け暮れてた一番の武闘派オル子だからね。戦い過ぎて頭が残念になってしまったに違いありませぬ。それは……気の毒に……」
「ククク……恋ではなく戦いに生きるなど、とんだオル子四天王の恥さらしよ……乙女ですものね! やっぱり恋に愛にイケメン追っかけにと情熱的に生きなくちゃねー! 海洋乙女に浪漫の嵐ですぞ!」
「然り! 実に然り! 恋に生きずして、何が異世界転生かー! チートな力で敵を蹂躙チート無双しても、イケメンはドン引きするばかりでちっとも寄り付かないんですよ! 見なさいよ、今回のオル子の残念っぷりを!」
「仲間に誰一人として良い男がいない……うわあ、これは酷い、酷過ぎますね……かつてこれほど男運のない悲惨なオル子がいたでしょうか。というか、なんでまだ魚なの? 異世界に来ていったいどれくらい経ってると思ってるの? 馬鹿なの? アホなの? 人化しないの? オル子脳なの?」
「人生とは出会いで決まる、とはよく言ったものだね。これほど個性的な友と出会い、力を合わせ、強者を倒し、王として在り続ける……それは我らが成し得なかった未知の領域だ。此度の生涯、是非とも君にはそのまま走り続けてほしい。愛する伴侶は存在せずとも、孤高の王に非ず……か」
「え、本物オル子って生涯独身決定なの? あの、コピーオル子さん、本物から恋人の複製贈られるのずっと待ってるんですけど。待ってるんですけどー!」
よし、八回も発動! 悪くないわ! オル子ミュ兵器、いけえ!
人間を襲うことに熱中していた青竜の脇腹に、顔面に、首元に。次々と乱れ飛ぶシャチの群れ。
あまりの威力に、青竜は叫び声を上げて暴れまわるものの、次々と決まる分身のタックルで倒れることすら許さない。ほほほほ! 鬼火力は乙女の嗜みですよ!
分身に炎を吐いてるけど、それ、ただの分身だから効きませんのだ! 何か分身から『焼き魚になっちゃううう!』とか『消防車、消防車プリーズ!』とか聞こえる気がするけど、きっと気のせいよ!
『冥府の宴』怒涛の八発、そして『キラーホエール・ダイブ』による追加の八発。
計十六回もの猛攻をくらい、青竜完全にノックアウト。手足を折り、大きな音を立てて地面へと突っ伏していく。
うむ、倒したけれど油断はしないわ! まだ気を失っただけかもしれないもんね! きっちりトドメをさしてくれる!
横たわった竜の体の上に降り立ち、そこから『ブリーチング・クラッシュ』発動! オル子スタンプをくらえい! 私ってば体重が軽いからあまり効かないかもしれないけどね! 体重軽いから、軽いから!
グシャリやらゴキリやらグチャリやら、素敵な音を響かせて青竜は完全に動かなくなっちゃった。
よし、完全勝利! とりあえず一匹倒したから、残りは六匹ね! 他の竜どもはこいつみたいに人間を狙っているでしょうし、その隙をついてみんなが各個撃破してくれれば……ぬ?
周囲をふと見渡すと、巨大竜が六匹、私を囲むように集まってじっと見下ろしていたわ。あれあれあれ、なんぞこれ。なんでこいつら、人間と戯れてないの? なんでこいつら、私の周囲に集まってるの? なんでこいつら、私に向けて口を開いて……次の瞬間、六匹の竜の口から六色のブレスが私に向けて放たれた。うん、知ってた。
「ほぎゃあああああ!? あ、あつぅいいいい! なんで、なんで私ひとり狙い!? 人間を無視して、なんで私に……ひぎぃい!?」
炎から逃げ出そうと空を飛んだところを、黒竜と白竜にガブっといかれました。
ぬおおお! 頭と尻尾を喰いつかれた! 痛い痛い痛い! 引っ張られてる! 上下から引っ張られてる! このままじゃすらりとした長身モデル体型美女になっちゃううう!
黒と白に続き、残る竜たちも私のヒレやらボディやらに噛み付きまくり。
ぬおおお! 何このドラゴン逆ハー展開!? あれなの!? 私の体から竜族好みのフェロモンでも出てるの!? もしくは秋の焼きサンマの匂いとか!?
あれかしら、もしかして私が青竜を殺したから、それが引き金となって私狙いになっちゃったの?
ぐぬう、なんてことなの……こんなことなら、無駄に張り切らずに一番槍をポチ丸に譲ってあげるんだった。
珍しくやる気を出した結果がこれですよ! もう二度とこんなことしないよ……なんて海外番組みたいなこと考えてる場合ではない! 誰か助けてえええ! びええええ!
こいつらから逃れるため、必死にジタバタしてると、空から他のみんなが! す、救いの女神降臨よ! ここよー! 捕らわれのお姫様はここですよー!
「カハハッ! 派手にやってるじゃねえか! 七匹全部相手どるなんざ、どれだけ敵を喰い足りねえんだテメエは! 流石は『六王』を三匹もぶっ殺した化け物だぜ!」
「なんと、主殿は自らの意思で六匹を相手にしておられるのですか? 私はてっきり、竜六匹に襲われているものとばかり……むむ、ならば主殿の戦の邪魔をしないことが何よりの忠誠だろうか。いや、しかし……」
「どう見ても調子に乗って失敗しただけでしょ。まあいいわ、敵が集まっているなら好都合。オル子、そのまま竜を離しちゃ駄目よ」
「いや、どちらかというとオル子さんが離してほしい立場なんですが……って、エルザさん!? 杖が何か光ってるんですけど! バチバチ唸ってるんですけど!?」
「安心しなさい、あなたに直撃はしないから。少しビリビリくるかもしれないけど」
私が制止するよりも早く、エルザさんのサンダー・ブラスター発動。知ってた。
次々と電撃が竜たちに直撃、そしてその余波で私もビリビリ。懐かしいわあー、出会ったばかりの頃、エルザとよくこんな戦いしてたわー、あががががががが。
でも、エルザの電撃のおかげで竜どもの噛み付きから解放されました。ぬおー! 脱出!
ヒレを必死にパタパタさせて宙に浮いたところで、動きの鈍った竜たち目がけて次々と襲い掛かる愛する仲間たち。
「主殿に牙を向けたその対価、命によって贖ってもらう! はああ! 『剣豪「紫黒」』!」
「感謝するぜ! テメエらが出てきたおかげで、進化で得た俺の新たな強さを試せるんだからよ! 『ワイルド・ワン』! 喰らいやがれ!」
「たおす! つぶす! 『おるけいん・くらっしゅ』!」
クレア、ポチ丸、ミリィの前衛トリオが竜たちに牙を突き立てていく。
そんなみんなを援護するように、上空から残るメンバーの援護射撃が。
「ミュラ、ルリカ、合わせて。仲間を巻き込むことだけは避けるのよ――『ライトニング・フレア』」
「心得ています。威力こそ低いですが、狙いは丁寧に、正確に――『アクア・アロー』!」
エルザの魔法、ミュラの乗った偽オル子の眼からビーム、そしてルリカの水の矢。
上空から次々と竜たちに突き刺さり、動きが乱れた竜が次から次にトリオの餌食に。うわあ、私の仲間ってば強過ぎ……?
というか、ランクB程度じゃ群がられても止められないくらいの強さなのね、みんなって。『森王』の時のように、無制限無尽蔵に湧かれて行動されると流石に危ないけれど、この数このランクなら乗り切れるわね。ごいすー。
おっと、のんびり観戦している場合じゃないわ!
みんなが頑張っているんだもの、私も張り切らないとね。さあ、奥の手を使いますよ!
「『聖剣』攻略も終わったし、出し惜しみは無しよ! いらっしゃいまし――『森王君臨』!」
私がスキルを発動すると、周囲が一気に『青き世界』へと変貌する。
おほほほ! これがオカマさんをぶっ殺して手に入れた最強最悪極悪スキル、『森王君臨』よ! 効果はこんな感じ。
・森王君臨(特殊な領域を生み出し、その範囲内であれば、所有する二つの異なるスキルを合成し、新たなスキルとして使用することができる。消費魔力量は合成に用いたスキル二つの合計値となる。領域の広さは魔力ランクに依存する。効果T600:CT86400)
つまり、私の生み出した青いフィールド内では、特殊な合成スキルを使用できるって寸法よ! 流石に『海王降臨』とか特殊なやつは合成できないみたいだけど!
さてさて、早速スキルを作りませう! 前回は『冥府の宴』と『ブリーチング・クラッシュ』の合成で『冥府の流星』って全体攻撃技ができたのよね。なら次は……
「よし! 『レプン・カムイ』と『冥府の宴』、君に決めたっ! 合成!」
二つのスキルを選択し、合成開始!
私の脳内スキル画面に新たにホップされたおニュースキル。おお、できたわね! どれどれ、効果はどんなものかにゃ?
・シールド・ポッド(単体:中距離:自身の周囲を飛び回る分身を一体だけ発生させ、 敵のターゲットを生み出した分身に集中させる。敵の攻撃を二回まで分身は耐えることができる。分身が消えるまで、次の分身を生み出すことはできない:CT120)
「いやあああ! 止めてええ! このシャチ殺しいいいい! 痛みとかは皆無だけど、敵に狙われて殺されるのは気持ち的に嫌なのおおおお! らめえええええ! 私を襲わないでえええ!」
「うるさいいいい! スキルなんだから仕方ないでしょ! 観念して私の代わりにきりきりとタゲ取りしなさい! ほらほら、ドラゴンのブレスが飛んできたわよ! 二回だけ受ければ消えるみたいだから、それまで頑張って!」
「くそうくそう、ババ抜きに、ババ抜きにさえ負けなければ! あのとき、右のカードを選んでいれば別のシャチが盾役だったのにい! ぬわーーーーーっ!」
落ち着きがなくて騒がしいのは欠点だけど、物凄く便利なタゲ取りスキルだわ、これ。
分身シールドを上手く利用し、みんなと連携して無事ドラゴン全てを片付け終えました。今度こそ大勝利よー! 分身、あなたの尊い犠牲は忘れないからね!
お気に入り5000件突破、そしてポイント15000突破、そして300万アクセス達成、本当にありがとうございましたー! 嬉しい、嬉しい!(ジタバタ)
これをパワーに、これからもオル子のおバカ劇をいっぱい描いていけるように頑張りますっ!




