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11.ゴーレムに抱きしめられた女って私くらいじゃないかしら

 



 大きく振りかぶり、そのままクリスタル・ゴーレムのナックルが地面へと突き刺さる。

 危なっ! シャチ特有のスピードがなければ一発でペチャンコにされてたわ。


「ボディがっ! がら空きよ! だっしゃあ!」


 拳を回避した速度を保ったまま、ゴーレムの腹部にオルカ・ヘディング!

 かなりの速度をつけたんだけど、奴の巨体は少し後ろにずれただけ。

 ぬう、なんて堅牢強固。これだからステ極振りの奴は! だったら!


「エルザァァァァ! 魔法プリーズー!」

「言われなくても! サンダー・ブラスター!」


 私の叫び声に呼応するように、エルザの電撃が在り得ない変化を見せてゴーレムに注ぐ。

 例えるならフォーク・ボールがごとき軌道を描き、私の頭上から正面のゴーレムへ。

 リフレクタ・プリズムって凄いわねえ……おわあ! 電撃くらいながら殴りかかってきた! あががががが! 帯電してる、ナックルが帯電してるから! 痺れる、痺れる!


「流石支配級ね……頑丈さは自信があるってことかしら」

「ねえ、エルザさん!? ゴーレムの拳、めちゃくちゃ電気を纏ってるんだけど! 私に電撃パンチがお見舞いされてるんだけど! 空飛ぶ魚に効果は抜群過ぎなんだけど!」

「私の魔法を武器として利用しているの……? ダメージと引き換えに、攻撃力を向上させているのかしら。興味深いわね」

「お願い、エルザ、少しでいいから私の身の安全に興味を持って! ほぎゃー!」


 帯電したゴーレムの蹴りが私の背中を直撃。

 ぐぬぬ、必死に回避をしてるんだけど、五発に一発はどうしても避けられない攻撃がきちゃうわね。しかも痛いし……ぬう、どうしよう。


「巨大樹と違って、守備が固いから通常攻撃があんまり通らないのよね……ゴーレムにコンフュ・エコロケーションが通じるとも思えないし……」


 ダメージが通るとすれば、私の必殺技ブリーチング・クラッシュだけど、洞窟内だから使うに使えない。

 あれ、数百メートルくらい空を飛ぶから、天井にぶち当たるのよね……なんて使えないの、ここがゲームの世界だったら洞窟だろうと城内だろうとドラゴン・ジャンプできるのに!


 となると、やはりここはエルザ任せでいきましょう。

 遠距離から魔法でチクチク削って、私はメイン盾としてゴーレムを押し続けてエルザに近寄らせない。隙あればヘッドバッドで攻撃、これしかないわ!

 エルザも分かっているらしく、私とゴーレムの直線状に位置取りして魔法を撃ってくれている。帯電パンチは痛いけど、シャチの動きと装甲があれば!


「見なさい! これが超接近戦での高速戦闘よ! 漫画を読み耽ってその真似をしようとして、妹にこれでもかと馬鹿にされた私の力を見せてあげる!」

「ゴァァァァ!」


 体当たりをしては攻撃を避け、時に押し返してエルザとの距離を取らせる。あの開幕にみせた急加速パンチだけはエルザに向かわせちゃいけないわ。

 敵も流石に馬鹿じゃないらしく、魔法を降り注ぐエルザが厄介だと気付いたのか、必死にあの娘のところへ行こうとするけれど、そうはさせるものですか。

 いかせはせん、いかせはせんぞおお! シャチ三千キロの体重は伊達じゃないわ!


「タゲ取り! タゲ取り! タゲ取りいいい! これが私のタゲ取り物語! はっ、実は私は実は月からやってきたお姫様、月姫だった可能性が……?」

「オル子、飛んで! サンダー・ブラスター!」

「ふひゃあ!」


 エルザの指示通り、その場で宙返り。

 すると、私のいた位置を通過するように、サンダー・ブラスターがゴーレムに突き刺さった。わお、収束型、ごいすー。

 これまでの魔法を全てリフレクタ・プリズムで反射させていたから、魔法攻撃=プリズム経由って覚えていたんでしょうね。意表をついた、まさに思考の外からの一撃だわ。


 エルザの工夫を凝らした魔法がゴーレムの体を貫いたんだけど……倒れない。

 いや、生命体じゃないからこれくらいじゃ死なないのは分かるんだけど、どうやったら死ぬのよこいつ……

 エルザも同意見なのか、眉を顰めながら文句を言ってる。


「いったい何発撃ち込んだと思ってるのよ……これで倒れないなんて、ちょっと自信なくすわね」

「エルザ、何かいい方法ないの!? ゴーレムの弱点とか、簡単に人間になる方法とか、素敵な彼氏の作り方とか、そういうの……むぎゅう!?」

「オル子!?」


 つ、捕まったああああ! エルザとの会話に意識とられて油断したっ。

 なんかゴーレムが私のこと抱きしめてきた! え、何この熱烈求愛!? 私、ゴーレムは流石に恋愛対象外……ぐえええ! 締まる、締まってる!


 あろうことか、こいつ、私を自慢の馬鹿力で絞め殺すつもりだわ。

 密着してるから、エルザも魔法攻撃で私を救出することができない。魔法使うと私に当たっちゃう……ひぎいい! 痛いいいい!


「くっ、どうすれば……オル子を完全に盾代わりにしてるから、魔法の撃ちようが……」

「あばばばばば……」


 いかん、いかんですよ、意識が段々薄れてきた。

 ぐるじい。力が強すぎて、どうやっても逃げ出せない。あ、詰んだ、これ。

 まさか、こんなところで私の第二の人生が終わるなんて……人じゃないんだけど、シャチなんだけど……

 もし、このまま死んだとして、天使に会えるのかしら。会えた時は、全力でクレームをつけよう。今度こそ美少女にしてもらおう。エルザに負けないくらいの美少女になろう。

 そんなことを考えながら抵抗を諦めかけていたとき、エルザから指示が飛んできた。


「オル子! 飛びなさい! ブリーチング・クラッシュを発動させなさい!」

「ほえ……いや、エルザ、あれ、洞窟じゃ使えな……」

「いいから早く!」

「ひゃい! 『ブリーチング・クラッシュ』!」


 切羽詰まったエルザの声に押され、私は思考停止してブリーチング・クラッシュを発動させた。

 その瞬間、私は超高速で空を飛びあがり、当たり前だけどそのまま天井に突き刺さった。ただ、突き刺さったのは私じゃなくて。


「ゴ、ゴォオォ」

「……わお!」


 そう、突き刺さったのは私じゃなくて、私をホールドしてたゴーレムだった。

 私を抱きしめていたゴーレムは、見事に顔から天井へ突き刺さり、ぶらんと垂れ下がった状態になっていた。何この前衛的芸術。

 抜け出そうともがいているけれど、顔がガッチリ天井に突き刺さって抜けないみたい。

 あれ、これってもしかして大チャンスなんじゃ……その様子を見上げ、私はエルザとアイ・コンタクトを交わし、頷きあった。


「サンダー・ブラスター! サンダー・ブラスター! サンダー・ブラスター!」

「ブリーチング・クラッシュ! ブリーチング・クラッシュ! ブリーチング・クラッシュ!」


 天井のゴーレム目がけ、これでもかとレッツお仕置きタイム。

 エルザ遠くからサンダー・ブラスターぶっぱ、私はゴーレムの真下から逆ブリーチング・クラッシュぶっぱ。チャージタイムが溜まり次第容赦なく発動させまくる。

 敵が動けないのをいいことに、そりゃあもう、無慈悲に撃ちまくったわ。三分後、そこには微塵も動かなくなったゴーレムが!


「やっと機能停止したみたい。天井に突き刺さってくれて助かったわね」

「全くよ! こんなスタミナお化けと消耗戦なんて考えるだけで恐ろしいわ!」

「ちなみにこのゴーレムのステージとランクは幾らだったの?」

「ステージ4でランクはCちょうど」

「やっぱり高ステージ高ランクなのね……ステージ1でひっくり返すんだから、オル子って本当に規格外過ぎだわ」


 いや、私だけじゃなくてエルザも大概だと思うんだけど。

 エルザもゴーレムに負けないくらいランク詐欺よね。E+って絶対嘘だわ。


「まあ、何より勝てたことを喜ぶべし! そろそろくるわよ、きっとくるわよ!」

「くるって、何が……ああ、レベルアップね」


 ワクワクしていると、脳内にファンファーレが鳴り響く。やっぱりきたー!

 当然ね! あれだけ格上の敵を倒したんだもの! 上がらない方がおかしいわ!

 こい、一気にレベル20こい! 進化条件を満たしてくださいな!


『レベルが18から20に上がりました。条件を満たしたので、ステージ2に進化可能です。進化先はセイント・オルカになります』


 セイント・オルカとな。

 ふむう、どう考えても、人型じゃなくてシャチの進化って感じね……残念。

 まあいいわ、私の狙いはあくまでもスキルによる人化だものね。この調子で進化を重ねていけば、いつかは人化のスキルを獲得できる……できるわよね? ふ、不安なんて考えない!

 進化条件を満たしたことを、早速エルザに報告せねば。


「私はレベル20になって進化条件満たしたわよ! エルザはどうだった……ぬ?」


 エルザの方を見ると、何やら難しい顔をしてる。眉を寄せて考え込んでいる。何事?

 私の視線に気づいたのか、エルザは考え込んでいる理由について話してくれた。


「私もレベル20になったわ」

「そうなんだ。じゃあ進化できるのよね? 何か悩んでいるみたいだけど」

「……進化先が、二つあるのよ」


 二つとな? え、そんなことあるの? 進化先って一本道じゃないんだ。

 エルザが言うには、一つは予想通りハイ・ウィッチらしい。ウィッチ族のステージ2は誰でも例外なくこれになるとのこと。

 つまるところ、もう一つの進化先は常識外、エクストラ・クラスとも言えるらしい。


「なるほどねえ。もしかしたらエルザ、特別なウィッチなのかもしれないわね。むむ! 美少女で特別キャラだなんて、物語のヒロインっぽくない? お願いします、結ばれるであろう王子様の親友ポジションキャラを私に紹介してください」

「特別なのは私じゃなくてオル子でしょ。進化先が増えたのって、絶対オル子が原因だもの」

「んま、失礼しちゃうわ。何でもかんでも私のせいにするってどうかと思うの。進化先なんて私、干渉できないもん! 今回の件に関しては、私は絶対に無関係だって断言しちゃう!」

「進化先の名称がオルカ・ウィッチなんだけど」


 私はその場で全力土下座した。尾びれを折ってこれでもかと頭を下げた。

 これ、どう考えてもめっちゃ私のせいですやん……なんというオルカの罠。いいえ、この場合、天使の罠なのかしら。

 いけない、このままでは世界中にオルカ・ウイルス、O-ウイルスが感染拡大しちゃう! 誰かマグナム用意して!



 

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