1.ハロー、私のニューボディ
「やっぱり、私も年頃の女の子だからね? なんていうか、こう、『あ、いいな、あの娘』って感じに見られたいのね? 『わ、凄いな』って目を引くっていうか」
『ふんふんふん、つまりあなたは誰もが羨む素敵な体に生まれ変わりたいと!』
私の意見に、天使のお姉さんが熱心にメモを取ってくれている。
おお、よく分かってるじゃない! なんて話の分かる天使なの、天使だけあってバリバリできるキャリアウーマンなのね! 流石選ばれし者って感じがするわ!
「そう、そうなのよ! ほら、私、十六で死んじゃった訳じゃない? まだ恋の一つも知らないっていうか、将来は素敵な人と出会って、恋を育んで、結ばれて、家庭を持って……きゃー! そんな幸せな未来をね、手に入れるためにもね、やっぱり体って大事だと思うの。健康なことはもちろんだけど、やっぱり見た目もほら、大切な要素でしょ」
『ふむふむふむふむ! つまりあなたが生まれ変わりで望むのは、体が強くて! 可愛らしい! そんな体に生まれ変わりたいと!』
「その通りよ! できるかしら、できないと困るわ! 異世界なんてとんでもない場所に生まれ変わるんだものね! 次こそ幸せな人生を歩むためにも綺麗で、可愛くて、スタイル抜群な体を私に下さいな!」
『はいさ! 了解ですとも!』
元気の良い、気持ちいい返事をくれた天使さん。
ああ、素晴らしいわ。こんな素敵な笑顔と声に送り出されると、次に生まれ変わる世界が異世界なんてとんでもないところでもへっちゃらだわ。
何だか要求がどんどん厚かましくなっちゃった気もするんだけど、別にいいわよね? 天使さんも怒ってないみたいだし、OKってことなのよね?
『あなたの望みは全て承りました! それでは異世界で第二の人生、存分にお楽しみ下さい! グッドラック!』
「ありがとおおおお! 次は天寿を全うした後で会いましょうねえええ!」
爽やかな笑顔の天使さんに別れを告げ、私の視界は暗転した。
さあ、怖い物なんて何もないわ。最強無敵美少女に生まれ変わった私の夢はただ一つ、とても素敵な殿方に巡り会い、最高のお嫁さんになること!
さてさて、私の転生先はいったいどんなところなのかしら。
貴族のお嬢様? 有りよ、ベリーベリーグッドよ!
悪役令嬢? 何の問題もありませんことよ、フラグ全部へし折って王子様と結ばれる自信があるわ!
はたまた、一国のお姫様? 大いにあり過ぎるわ! 知識チートで国を大発展、女王にだってなってみせるわ!
期待に胸を躍らせて、私は新たな世界に飛び出した。わはー! ハロー、ニューワールド! 待ってて私の未来のご主人様―!
生まれ変わった先は、シャチでした。
びたん、びたん。びたん……なんでよ。