7話
短いですが、投稿します。宜しくお願いします。
七つの珠は七家に宿る。
この世界の命運を分ける戦いが始まるときに、自ずと珠は人を選ぶ。
珠に宿りし魂が自らに合う者を選ぶのだ。
それは本家、分家にかかわらず選ばれるため、七家は能力の高い者を当主とし、代替わりをしてきた。
その代替わりに異議を申し立てるものも少なくなく、いさかいは絶えなかったのが実情である。だが、それをすることで七家は恩恵を受け、現在の地位を得たのも事実であった。
特に珠を有した者が産まれるとその家族は本家となった。当主はあくまでも珠を有する者。その家族は盾となる存在。
抵抗する者も少なくなく、家族で逃亡を図った者たちもいた。だが、例に漏れず、珠の記憶を持つ者達はこの世を守るために自らの命を削り戦いに赴いた。さも当然のように、決められた運命にしたがって命を投げ出した。
現代、七つの珠は運命に導かれ、この世に顕現し、今なお続くいさかいを止めることもできずにいた。
「ある意味、魔界の者を相手にするより厄介だよ。相手はただの人。本来俺達が守るべき存在のはずなのに、敵対しなければならないのだから」
柚耶がため息をついて近くにあったビスケットを頬張った。
今は外出から戻り一息ついたところで、柚耶が淹れた紅茶を飲んでいた。美羅依の足元には先程買った物が袋から出されずに放置されている。
美羅依が七家について聞きたがったため、荷物もそのままに一息つくことになったのだった。
「私の家族もその犠牲ということ?」
なんて理不尽な話だろうか。転生のために犠牲になる者達のことなどお構いなし。自分が記憶を失くした理由が少しわかった気がした。
柚耶は無言で頷く。
柚耶も普通の人生など送れていないのはその表情を見ればわかる事だった。
「高梛は秘密主義な家系でね、今は弟が俺の代理をしているんだ。あいつもそれなりの能力者で、強いからってだけでさ。あいつは一言も愚痴なんて言わないんだ。それよりも現当主を差し置いて両親を独占していることに罪悪感さえ抱いている。おかしな話だろう?」
ああ、だからこの制度に不満があるんだね。大切にしようとしていた弟に逆に守られなければならないこの現状に不満がないはずはない。
美羅依もなんとなく理解できた。
「私には姉弟がいない。だから私の代わりは父がなるしかなった。今は母がその役目をしてくれている。私も家族を守りたい。どんなに流れる時間が違うとしても今の時代を私は生きているのだから」
遠い記憶を自分は持ってはいない。前世の事も五歳以前のあの時のこともすべて覚えてはいない。けれど、珠が教えてくれる。自分は古から続く戦いのために今、この場にいるのだということを。
ありがとうございます。