6話
久しぶりに連載再開です。
宜しくお願いします。
日曜日の昼下がり。外は晴れ渡り、気持ち良い風が時折頬を撫で付ける。
「気持ち良いね」
美羅依は柚耶を振り向いて言った。風の精霊も楽しそうに美羅依に挨拶をしていく。
「…そうだな」
柚耶は瑠璃の面影をみた気がして、一瞬戸惑いながらも頷き返した。
瑠璃も風が優しく吹く日は嬉しそうにしていたのを思い出した。
以前の記憶がないことでこんなに辛く思うのは初めて。
美羅依はそんな柚耶を横目で追いながら、瑠璃であった頃の自分にモヤモヤとした言い様のない感情を抱いた。
どちらも私のはずなのに、どうしてこんな気持ちが生まれるんだろう?
だいたい、彼とは会って間もないのに、可笑しいじゃない。
なんだか悔しくて、少し苛立つ自分がおかしい感じがした。
柚耶はそんな美羅依に不思議そうな表情を向けていた。
「どうしたんだ?」
柚耶は七面相している美羅依に聞いた。
「…何でもない」
美羅依はそう答えるしかなくて、俯き加減に言うと気持ちを切り替えるように頭を横に振ると正面を見てひとつ頷いた。
「うじうじ考えるのは止めた。柚耶、私はいつか以前の記憶を思い出すかもしれないけど、思い出さないかもしれない。だけど私は私。以前の私じゃなく、今の私をみて」
柚耶を振り仰いで美羅依はまっすぐにみつめた。
ああ、やはり瑠璃なんだね。
柚耶は美羅依にみつめられながら、遠い記憶を呼び起こされていた。
何度目の転生をしたときだろう。転生前の記憶を話していたときに言われた言葉を思い出す。
『私は私。以前の私も瑠璃だけど、今の私をみて』
まっすぐに見上げる瑠璃の表情は今のそれと一緒で、苦しそうに、辛そうに、真剣な眼差しを向けていた。
それに答えないわけにはいかないよな。
柚耶は立ち止まり、軽く頭を下げた。
「ごめん、美羅依の気持ちを考えてなかった。赦して欲しい。でもやはり瑠璃は君だと確信した。俺は不器用だから、面影を追い求めてしまうこともあると思う。けれど、今の君だけをしっかり見ていこうと思うよ」
柚耶の言葉に美羅依は恥ずかしそうに顔を赤らめるしかなかった。
そんなこと言われたら、何て答えて良いかわからないんですけど…!
恥ずかしい顔を見られたくなくて、美羅依は柚耶から視線を外すと先を急ぐように歩き出した。
「先に行っちゃうよ!」
恥ずかしいけれど、嬉しそうに口元を綻ばせて、美羅依は先を歩いて行った。
ありがとうございます。