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11話

久しぶりの更新です。良かったら読んでください。

よろしくお願いします。

外の空気がこんなにも気持ちのいいものだと認識したのは何時だったか。

大きく深呼吸して、柚耶はそう思った。

「歩けるか?」

柚耶の問いかけに美羅依は小さく頷いた。

先程のものはさすがに怖いほどの凄惨なものだったが、以前にも似たものを見ていたし、気分が優れないくらいのことで済んでいた。

「そんなに軟じゃないから、心配しないで」

美羅依はそう言うと足取りもしっかりと歩き出した。

「今日の夕食当番俺がやる。お前は少し部屋に行って休んでろよ」

思い出したように柚耶は言うと学園に向かったのだった。

美羅依はただ頷くしかできなかった。



これは夢だとわかっているのに、どうしてもかかわってしまう。

そして、後悔するのだ。助けられなかった命を助けたいと思ってしまう。

「……い…美羅依」

肩を強く掴まれ揺さぶられ、初めて目覚めなくてはならないことに気づいた。

「…んっ」

固く閉ざしていた瞼をやっとの思いで開き、現実の世界に舞い戻る。

「魘されてた」

柚耶に言われ、呼吸がだいぶ早くなっていることにやっと気づいた。

「あ、ありがとう」

美羅依は差し出された水と起こしてくれたことに感謝した。


あ、ダメだ。


美羅依がそう思った瞬間、今まで安定していた精神が突然不安定になったことを自覚した。

「はな…れ」

「どうし…」

美羅依が柚耶を突き飛ばすのと驚いて美羅依の肩を抱こうとした柚耶の手が一瞬触れた。

「だめぇ!」

抑え込むように自分の身体を両腕できつく抱きしめて、美羅依は叫んだ。

「ちっ!」

柚耶が舌打ちをして、美羅依を背中から抱きしめた。

美羅依は後ろから抱きしめられていることに気づく余裕もなく身を震わせ、暴走し始める自分の中の能力に怯えた。

「心配するな。もう大丈夫だから。俺がついてる」

柚耶が耳元で囁くと美羅依は体を抱きしめる腕を緩め、そのまま意識も手放した。


突然、美羅依の能力が暴走した。

強すぎる能力を保持していること自体で能力が不安定になっていたところに追い打ちをかける様な今日の事件現場。

精神的にも不安定にならざるを得ないのは言うまでもなかった。

「はな…れ」

美羅依が自分を突き飛ばした時は俺自身を否定されたように感じて絶望に近い感情を持ったがそんなのは一瞬だった。次の瞬間には美羅依が自分を突き飛ばした理由がわかったから、咄嗟に美羅依の背後から抱きしめた。

「…俺がついてる」

そう言った瞬間、美羅依の身体から力が抜けた。

意識を手放したのを確認したのは能力が暴走してから数分後。

小さくため息を零す。

「…やはり、今回も安定はしていなかったんだな」

薄っすらと額に浮かぶ汗を手の甲で拭い、乱れた前髪をそっと直してやる。

前世でもその前の生でも瑠璃は能力の不安定さが強く出ていた。

「仕方ないと言えば仕方ないことだったんだけどな」

小さく嘆息してやっと収まった能力の暴走に安堵した。

このままリビングに寝かせておくわけにもいかず、とりあえず美羅依の部屋に運び、寝かしつけた。

「…で」

離れようとしたところで美羅依が小さく言った。

何を言っているのかわからず、柚耶は美羅依の口元に耳を寄せる。

「い…か…いで」

美羅依の手が何かを探すように彷徨った。

「行かないで」

はっきりと声に出して言った美羅依は柚耶の服の袖を強く握った。閉じられた眦には今にも零れ落ちそうな涙の粒が浮かんでいた。

「…俺はどこにもいかない。安心して眠れ」

美羅依の手に自分の手を添えて柚耶はそう耳元に口を近づけて言った。

それを聞いて美羅依は嬉しそうに笑みを浮かべるとまた夢の中へ微睡んでいったようだった。

ありがとうございました。

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