Oops am almost forgetting this
道端で会ったのは、大きな荷を牽いた馬車だった。最初は道の先の方で点だったのが、だんだん近づいてくる。6人のほうが早いのだ。すれ違う時には、表面上おだやかに挨拶を交わす。相手が追い剥ぎやなんかだったりしたときを考えて、お互い緊張の一瞬だ。今回より怪しいのは身軽な6人のほうだが、油断はできない。だがその瞬間は何事もなかった。
「おい、あんたたち」
やや過ぎてから馬車のほうから声をかけられた。御者台にいる商人風の丸い帽子を被った青年だ。カーリデュルアたちは振り返って、すこし足を緩める。
「あんたら、どこへ行くんだ」
「先の町にさ、仕事をもらいにだよ」
もっぱら集団の顔はカーリデュルアが務める。当人は皆を率いている気はないが、周囲の信頼の表れだった。ソアフェイムは儀式が終われば今後の方針には口を出さないつもりのようで、若者たちの話し合いにも参加しなかった。
「出稼ぎかい?」
「ああ、まあ帰る場所はねえけどな」
すると青年は世を憂えた様子で溜息を吐いた。最近ではこう言えば通じるほど珍しいことではない。騒乱で土地を失う人々のことは方々で、よくある不幸のひとつと語られていた。
「じゃあちょいと同道してくれないかい。手伝い兼、護衛ってとこだ。賃金はすずめの涙しかあげらんねえけど………、このまま町に行くよりは得したと思ってさ。急いでないのなら」
カーリデュルアが戸惑いの表情を浮かべると、青年は続けた。
「あんたらみたいのに仕事にあぶれて、山賊のまねごとをやられても困るんだよ。体は丈夫そうだし、もったいない。おっと、爺さんは違うな。乗るかい?」
ソアフェイムは一行の顔を見回すと、一つ頷いてさっさと荷台に腰かけてしまった。
「若いのに、老人への礼儀がなっておるようだな」
「商人が知識と経験に敬意を払うのは当たり前でさ」
魔術師が若者顔負けの体力でずんずん歩いていたことを知る一行にしてみれば納得がいかないが、扱いとしては間違っていないらしい。遠まわしに青年に礼を言い、カーリデュルアたちを詰っているようでもあるが、冗談にしか聞こえない。
一人付いていた本職の護衛役とも自己紹介して、結局道を同じくすることになった。