エピローグ
「悪魔の人形」に興味を持っていただきありがとうございます。作者の「もこー」です。いくらばかりが小説を書いてみようとして、二次創作は書いておりますが、オリジナルについてはこちらが初となります。
つたない文章かもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。
また、文章の長さにはとてもムラができる予定があり、最大で三万文字、最低で一万文字未満を予想しております。どうかご容赦ください。
君達は悪魔を信じるだろうか。人を惑わし悪行を誘発させたり、天使や神と戦ってもいる。そんな曖昧な存在を、君達は信じれるのだろうか。
その問いに対して自信を持って頷ける人が居たなら、今すぐ新しい宗教を始めるといい。
そして、俺がその質問に対してした返事はそれだ。悪魔が居るなんて、幸せのあまりに気が狂ったか、元よりそう躾けられたかじゃないと、信じれる筈が無い。
なぜなら、目に見えないからだ。
目に見えないそれが存在すると、誰が断言できるのか。それに、悪魔が居るか聞くのに、天使や神を聞かないというのも、何だか不公平な気もする。
「クロト……痛い。痛いよ、クロト……」
この声は何だろうか。いつぞやに聞かれた質問について考えていると、不意に苦しそうな幼い女の声がして少しばかり苛立った。俺は今忙しいし、そもそも女という生き物が嫌いだ。脊髄反射で回答できるくらいには嫌い。そう、女は嫌いなのだ。
しかし、そこまで強く否定しようとも、自然と俺はその声に耳を傾け、重たい瞼を開く。
そこに広がっているのは、暗雲と赤い月。あとはそれを隠すように生い茂る木々の葉。意識が外界に向けられると、とたんに異臭がすることに気付く。焦げた肉の臭いや、熟れた鉄のような、生臭さを内抱した不快感。
「あれ……?」
俺はそれを確認しようと体に力を入れたが、穴が開いた風船のようにそれらは離散する。首だけ動かして地面を見ると、見慣れた文字列と円形の何かが自分の下にあった。
そうか、魔法か。俺は今、何かしらの魔法で力を出せないのだろう。なんて間抜けなのだろうか。魔法を肯定できるのに、悪魔は完全に否定しているのだから。いや、目に見えているから、それを肯定するしかないのやもしれない。
「クロト・コンバージュ。貴方を……国家反逆罪により、特権行使による制圧を行います」
そして、二人目の女の声。これは若い女で、声が強張っていることから察するに、緊張しているのだろうか。その声は自分より上から聞こえており、そっとそれに視線を移す。
「……何で泣いてるんだ?」
そこには、真紅の髪を肩までで切った村娘風の女が、その青い瞳から透明の雫を流していた。
「なお、これには標的の生死は問わず……き、騎士には、極刑を行う権利が……!」
女は俺の言葉を無視して言葉を繋げ、懐から銀に輝く刃物を取り出す。凛々しく言おうとしている言葉は、あふれ出る嗚咽のせいでうまく出てこない。それどころか、続けば続くほど表情は苦痛に歪み、強く目を瞑った。
「発生、し、する……私は、騎士としての務めを果たす……そうしろって、貴方が言ってくれたから……!」
「……そうか」
どうやら、俺はここで死ぬらしい。誰とも知らない相手の泣き顔を拝んで死ぬというのも、いささか不幸な物だと思う。理由は分からないが、俺はそれなりに悪行をしたらしいし、それも当然なのだろう。
「クロト、クロト……!」
理由も分からないままそれを受け入れると、不意に幼い声が近づいてきた。それは俺と同じ高さにあり、衣擦れの音のする方を見る。
「マキナか……俺はここに居るぞ」
黒い髪に黒いワンピース、身長は俺の胸くらいまでしか無いように見えた。
なぜ彼女の事はすぐ分かったのだろうか。それだけ、俺にとって大切な何かだったのだとしたら、とても悪い事をしてしまった。彼女の眼は閉じられており、どちらからも赤い雫が零れ落ちている。どうなっているかなど、想像するのは容易い。
「少し、眠ろうか」
「……ごめんなさい!」
マキナが手を伸ばし、俺はそれをゆっくりと握り返す。
胸へ落ちた痛みの強さは、彼女への罪悪感と比べればどうということは無かった。
こちらエピローグとなっておりましたが、いかがでしょうか。少々短いですが、エピローグということで、ご容赦願います。
基本的に、生々しい身体損傷の描写は行いません。作者もそういった物が苦手なので、今回の文章で大丈夫だった方は、問題なく見ていただけると思います。
ただ、作者の書き物は基本的に心地よい終わり方を致しません。二次創作においては、別の投稿サイト様で投稿しておりましたが、どれも気持ちの良い終わり方をしませんでした。思考9:感性1で書いておりますので、伽羅の言動や世界観の矛盾は無いかと思いますが、それにともない、キャラがキャラらしい行動を優先致します。例えば、物語として都合のいい選択肢があっても、そのキャラが選ぶであろう、最も「らしい」選択をします。左手の法則が嫌いな人なら、右の道を通ってしまうんです。そのため、終わり方は作者本人もぼんやりとしたものしか想像できておりません。いずれそれがかたまり次第、キーワードにそういった物も追加しようかと思います。
では、次回の投稿でまたお会いできたら嬉しいです。