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第三章 覇道を邪魔する奴は(ピー・ズキュウウン・ドルウルルルル・ドギャァン)しますよとメイドさん

「ネオ・落とし穴は禁止!! というか、解体とか出荷とかダメ!! 何処にするんだよ!! もっと安全なのにしてください!!」


「プー」


「プー、じゃねえっつってんだろ!? 普通の落とし穴とかねえのかよ!?」


どうも、メイドさんはネオ・落とし穴を全米デビューさせたくて仕方ないらしい。理由としては、せっかく作ったのだから、というのが七割くらいを占めているとのことだ。

実にどうでもいい理由ではあるが。


「普通ノ落とシ穴、ですか……」


頬を膨らませたまま、渋々とだがそれがあることを口にする。まだネオ・落とし穴に未練があるようだ。


「ワカりまシた。でハ、ベッドの上に立っテくださイ」


「え、なんで?」


疑問を呈するものの、素直に靴を脱いでベッドの上に立つ。


「掌を上ニしテ両手を出シて下さイ」


「こう?」


言われた通り、掌を上にして両手を出す。一体何がしたいのかわからず、首をかしげるばかりである。

すると、メイドさんは彼から数メートルほど離れた位置に何やら直径三センチ・長さ二十センチほどの筒状の何かを数本、床に固定していく。


「なにそれ?」


「チョッとした余興デス」


とてつもなく、はてしなく不安になる言葉だ。メイドさんの余興でチョットで済んだことなど今まで何一つとして存在しないのだから。

不安しか生まない行動を見守り、それをすべて終えると、メイドさんは天井から垂れさがっている一本のロープを手に取りそれを引くと、床の一部が開いて、スタンド付きのマイクと自爆装置に使われるようなテンプレなボタンがせり上がってきた。


「え、何その素敵ギミック」


「フフ……ワタしに不可能はナイのでス。あ、ア―、アテンションプリィズ。アテンションプリィズ」


「飛行機のアナウンスか!」


突っ込みながらモニターをみると、どうやら声は直接上の階にいる冒険者とエルフ達に届いているらしく、突然響いてきたアナウンスにお互いの行動を止めて眼を白黒させている。

まぁ、聞いた通りの世界ならばスピーカーなどの知識もないだろうから、驚きしかないはずだ。


「まモなく、床ガ落下しマス。まもなク、床が落下しマす。床にお乗リのお客サマは、つり革におツかマり下さい」


「つり革ないし!! てか床が落下するアナウンスなんてねえ!!」


「でハ、ポちっとナ」


ぽぴっ、という可愛らしい音と共にボタンが押しこまれると、モニターに映っていたエルフの少女達の足元にある床が突然左右に開かれ、『へ?×3』という間抜けな声と、その後に続く長い悲鳴がフロア中に響き渡った。


突然立て続けに起こった予測を超えた事態に、冒険者たちは暫く間抜けな顔をしていたが、やがて事態の確認をするべく、エルフの少女達が落ちた穴を覗き込み――。


「てイっ」


再び圧されたスイッチは、覗きこんだ冒険者たちのケツをハリセンでフルスイングする装置で。体勢が崩れた冒険者達を、それはもうほれぼれとするフルスィングで。おもいっきりひっぱたいた。

覗き込んでいる体勢からそれを喰らえばどうなるか。言わなくてもおわかりだろう。

支えもない状態で思いっきり吹き飛ばされ、今の今まで覗き込んでいた穴の中に真っ逆さまに突っ込んでいく。


「っていうか、なんでハリセン?」


「ワタしのプロぐらむに、由緒正しイ最強ノ聖剣にも匹敵する兵器だと」


「作ったやつは絶対頭がおかしい」


「そレはともかク、もうすグでスね」


「もうすぐ?」


首をかしげて疑問符を頭の上に浮かべると、メイドさんは無言で天井を指差した。

それに反応して上を見ると、何の前触れもなく、ぱかり、という擬音が似合う音を立てて、天井の一部が突然開いた。


そういえば、あの落ちてしまったエルフの少女達とついでに冒険者たちはどうなったのだろうか。確かに、あの場は収まったが、人間は――エルフにそれが当てはまるのかはともかく、2~3メートルの高さからでも、落ち方を間違えれば死んでしまうのだ。


落ちた衝撃を和らげる、ちゃんとした衝撃吸収用のクッションでもあれば話は別――。


「―――――ぁぁぁぁあああああああああああああ」


響いてくる悲鳴。徐々に近くなる悲鳴。そして黒い空間の中に浮かび上がる白い肌と深緑の髪と―――。


「あああああああああああああああああ!?!?!」


落ちてきたのが何なのか、それを理解するころには、そろって落下してきた三つの柔らかい何かに、彼は押しつぶされていた。

幸い、ベッドがそれはもうものすごく柔らかかったのと、両手を差し出す体制になっていた為に、落ちてきた物を自然と受け止める形になり――受け止めたモノも軽かったためか、それによるけがはないが――いくら軽くても、相当な距離を落下してきたその速度と衝撃を受け止めきることはできず、もろともベッドの上に転がってしまうはめになった。


「いつつつ……あのね、こういうことになるなら前もって言ってほしかったんだけど」


衝撃に眼をまわしていたものの、落下してきたモノ――エルフの少女達はそれこそ羽毛の如く軽く、意識を失うほどではなかったので、即座に半眼になってメイドさんを睨むものの、やはり彼の眼力ではメイドさんのスーパーアーマーには傷一つつけられないらしい。


「さぷラいずですヨ」


「余計すぎる!」


二人が例の如くいつものやり取りをしていると、落下した衝撃で眼をまわしていた虚弱なエルフの少女達三人が呻き声と共に身体を起こそうとしていた。


それに気付いたメイドさんは――懐から何か凄い速さであるものを取り出し、眼も止まらぬ速度でそれを彼にかぶせ、更に何処からともなく巨大な椅子を取り出し、そこに座らせたうえで葉巻とワインを――。


「持つわけねえだろてめえ!! いきなりなにしてくれとんじゃ!!」


「……ワタしのデーターでは、これガ覇者の正装ダと」


「そのデータを入力した奴を連れてこい!! 正座で6時間は説教してやるから!! つーか俺は未成年だ!」


ぎゃいぎゃいと騒ぎ立てているうちに、完全に身を起こしたエルフが、茫然とそのやり取りを眺めている。


今の今まで窮地にあって、突然床が開いて落ちて、落ちた先で漫才を見せつけられているのだから、まぁ無理もないだろう。

「おヤ、気付かレタようデすよ、我がご主人様マイ・アディスタ


「え? あ! あーっと、だ、大丈夫? 怪我とかない? ごめんね、うちのメイドさんが……」


あわてて駆け寄るものの、突然のことにはっきりと怯えてしまっているのか、先頭の一人が後ろの二人を庇うように立ち塞がり、手に持っていた杖をつきつけてきている。

あの冒険者たちとの戦いで服はぼろぼろになっていて、白磁のような肌に紅い傷がいくつも走っていて痛々しい。


なんとか怪我の治療だけでもと言葉をかけるが、依然として警戒を崩さない――というか、こちらが発する言葉に対して、微妙に反応が鈍い。そして、やっと口を開いたと思ったら――。


『――! ―――、―――――!!』


「う、うぇえ?」


言葉というか、声そのものは、その麗しい外見に見合った、とても綺麗な物であったが、彼の耳に届いたのは、どうやっても日本語変換できない、不明瞭な言語の嵐だった。

英語やフランス語、中国語など、メディアが発達していれば日常生活の中で在る程度他の言語についても聞き覚えができるだろう。


だが、彼女の話す言葉は、そのどれとも合致しない――少なくとも、彼の頭の中には、その言葉に適合する言語は存在していなかった。


杖をつきつけながら、どんどんと言葉を重ねていく。が、その何一つとして彼は理解できない。


『――? ――! ――――!!』


「ちょ、ちょ、ちょちょ!! 待って待って待って!! 何言ってるかわかんないんだって!!」


「ふム、ふむ、ムム、ムぅ、な、なんト!! そんナことが!!」



「分かるの!?」


「ワっかるワケじゃナいですカー、やダー」


「あああああ!!! なっぐりてええええ!!! でもなぐれねえええええ!!!!」


身体を駆け巡る苛立ちを地団駄に変換して発散しようとするが、今立っている場所はベッドの上なので、ぼよんぼよんとはねるだけでむしろ苛立ちが募っていく。


そんな様子に、毒気を抜かれてしまったのか、二人の様子を見るエルフの少女達は警戒の視線を崩さず、けれども幾分か緊張を解いていた。


一つ、深呼吸を入れて、エルフの少女が改めて言葉を発しようとした瞬間。


「もrじゅtしぇづいおだsこmdjskvんすあおsdsこも!?!?!?!!?」


この世の全てに響くような、断末魔というか、悲鳴と言うか、形容しがたい何かを吐き出す叫びと言うか、なんというか。とにかく、有り得ない声。

悲痛とも言えるようなそんな絶叫が鳴り響いて、そのあまりの大きさに全員(一人除く)が耳をふさいで収まるまで待ち、まるまる時計の秒針が一回転するだけの時間が経過した頃、恐る恐る首を横に向けると、そこにいたのは。


「……なにアレ」


総勢10名の、先ほどまで上の階にいた冒険者たちが自分の尻を抑えて涙目になってごろごろと転がっているという奇妙な姿だった。


あまり気付きたくないことだが、気付いてしまいたくないことなのだが、彼等の傍には、メイドさんがせっせと設置していた杭が存在し、その一部には、言葉に出来ない何かの液体が付着しているものがあったりなかったり。


尻を抑えている。幅三センチほどの杭。この二つだけで、何が起こったのかを想像するのは難しくない。現に、エルフの少女達は両手をお尻に添えて、汚物を見るかのような眼でのたうちまわる冒険者たちをちらちらとみているのだ。


「……あ、忘レてまシた。いヤぁ、しまっタ、しマッた」


「ひでぇ!?」


メイドさんは、舌を出してぶりっこをしました。




















許しますか? 





YES NO








えー、まずは予定が違ってしまってすみません!!

予定では勘違い(させる)メイドの力が発揮される予定でしたが、書いている途中で長くなりすぎたため、分割することにしました。

期待していた方には申し訳ない……はぁ、予定通り書ける文章力がほしい。ほしい。切実にほしい。


……さて、メイドさんの落とし穴によって身体の一部がえらいことになってしまった冒険者たち。一部には、うっとりする奴がいたとか、何かに戸惑った奴がいたとか、いなかったとか、あったりとか、なかったりとか。


次回は、次回こそは!! メイドさんの本領が発揮される……といいなぁ。


では、次回もなるべく早く書き上げられるように頑張ります。






皆さんは、メイドさんを許しますか?

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