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第二章 覇道の城に侵入者。とメイドさん


「……とにかく、罠の大半は何処かの誰かのおかげで起動しないと」


頭を抱えながら、導き出された結論に溜息をつく。

メイドさんの話によると、罠の大半が起動しないので、安全なちょろい遺跡と思った冒険者たちはやりたい放題。色々な部屋をあさったり、一部はここをアジトにしようと言い出しているらしい。


「不届キものです。やはり殲滅を」


「すんな!!」


「けチー」


「ケチじゃない!! とにかく、殲滅とか全滅とかぶっ殺すとか禁止!!」


彼らがいる部屋は、今現在冒険者達がいるという上層部とは全く別の階層で、更に地下深くにあるため、よっぽどのことがない限りここまでくることはないらしい。


「……害がないならほおっておけばいいんじゃないの?」


冒険者と言っても、どうやら盗賊まがいの行動ばかりをしている連中らしく、どうやっているのかわからないが、メイドさんの手から出てきたプロジェクター(?)の映像を見る限り、いかにも。


「『げへげへ、身ぐるみはいで有り金よこせよぉ、そしたらみのがしてやるぜえ、げへげへ』とでも言いそうナ連中ですネ」


「……いや、うん、それは俺もそう思ったけど。そういう言葉づかいはしないと思う」


スキンヘッドだし、目つき悪いし、ごついし。冒険者、というよりもバーバリアン、あるいはRPGに出てくるゴブリンと言った方が近いかもしれない。実力云々はわからないが、筋肉だけはあるらしく、あれが襲ってきたらとりあえず逃げるしかないだろう。


触らぬ神に祟りなし、危険物には手を触れないでください、混ぜるな危険。

ここに来ないならほおっておけばいいはずだ。


「ですガ! この場所は我が主様マイ・アディスタが世に覇を唱えるその居城となるベキ場所。そこに土足で踏み込んだもノ達を生かしておくわけにワ」


「だから覇を唱えねえって言ってんだろ?!」


「……クっ……!! ……! しかし、ここを根城に悪サをされるのは」


「う、うーん……それは、あんまりよくはない、なぁ」


別にここで暮らしているといっても、自分の家ではないし、ここにある物の大半は理解できないものばかりだ。こちらに危害がないなら、悪戯に刺激をすることもないが、モニターらしきものに映っている冒険者もどき達は、そういった考えを理解してくれるとは思えないし、ここが犯罪をするための場所になって、それを見ているだけで手を出さないというのもよくない。かと言って、草食系男子代表とも言える彼に、筋骨隆々の冒険者たちを討伐する実力はない。


視界の端に、やたらと堂に入った動きで刀を(何処から出した)振るうメイドさんが一人。

ちらちら、ちらちらとこちらに視線を向けてくるが、その刀の振り方が明らかに人を殺っちまうぜ♪という振り方なので見ないふりをする。


「――あ、そうか!! メイドさんを一時停止させて罠をもう一度再起動させれば!!」


「あッ、マニュアルが突然油ニ伸身宙返リしなガらダイブを――」


「なにやってんだてんめええええええ!!!」



突如として油の中にほおりこまれて火に包まれたメイドさんマニュアルを、何とか火を鎮火して取り出すものの、時すでに遅し。マニュアルさんは油と焔でぐずぐずになっておりましたとさ。


「……(ぐっ)」


「オイ、今ガッツポーズしなかったか」


「いエ、まったく」


半眼で睨みつけるものの、草食系の眼力ではこのメイドさんはどうやら切り崩せないようだ。睨むことを諦め、とりあえず燃えるごみの袋にマニュアルをなくなく捨てる。


どこに燃えるごみを出すんだ、というツッコミはさておき、深いため息とともにモニターを改めて見てみると――冒険者たちがたむろして戦利品を広げているフロアに、別の侵入者たちが現れた。


「あれ?」


「おヤ。あれは……この国の騎士団の物ですネ」


「騎士団なんてあるんだ……流石ファンタジー」


華美、とまではいかないが洗練された飾りがちりばめられた銀色のプレートメイル。ひらひらと、健康的な太股が見え隠れする赤のミニスカート。

凛とした切れ長の瞳に、肩口でピシッと揃えられた深緑の髪に、蒼の瞳。病的なまでに白い肌と――特徴的な、尖った耳。


尖った、耳。彼は前の世界ではそこまでヘビーなゲーマーではなく、RPGなども有名タイトルのものしかやったことがないが、その中にもその特徴を備えている種族というものは存在した。


「……え、なにあれ。まさか、まさかとは思うけど……」


その疑問に答えたのは勿論傍らに立つメイドさん。


「エルフ、ですネ。国の騎士団にいるトは珍しイです」


「どゆこと?」


「排他的カつ、閉鎖的。それガエルフです。簡潔に言ってしまえバ、滅多な事がないカぎり、里からデることはありません」


つまり、種族全体で超ド級の引きこもりであるということか。確かに、RPGなどでもエルフは得てしてそういう扱いを受けやすいのは間違いないが……ここでもそうだとは思わなかった。


「何かシラ、理由がアるのでしょウ」


その辺りは分からないが、どうやら先にいた冒険者達とは険悪な間からであるらしく、両者の視線は厳しく――特にエルフの女性達の視線は汚物をみるようなもので、明らかに相手を見下しているのがわかる。


何やら言い合いをしているのがわかる。一方的と言えるほどにエルフの女性達が糾弾し、冒険者風の男たちはどこ吹く風、といった感じで悪びれることなくふんぞり返っている。

やがて激高したエルフの一人が腰の剣を抜いたのを見て、冒険者たちも呼応して懐から大ぶりの鉈――に見えるほど巨大なナイフを取り出す。


「おヤ。アレは……」


「あのナイフ……鉈? が何か気になるのか?」


「マジック・ブレイカー。切れ味は無きに等しイですが、その代わりに魔に関する全てに対して圧倒的なアドバンテージをモつナイフです」


「んん?」


「エルフの長所ハ、その圧倒的な魔力デす。正確ニ言うのならバ、大気中に存在スル魔素と呼ばれるモノに対する干渉力の高サですネ。あのナイフは一時的ニですガ、その干渉力を無効化できマス」


いきなり難しいことを言い始めたので頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら何とかかんとか考えてみる。


「つまり……とりあえず、あのエルフ? の女の子達は危ないってこと?」


「ええ、まア。魔力はともカく、エルフは身体能力はもやシ級にへぼイです。むシろもやシに失礼なくらいへぼイです。50m走で幼稚園児ニ負けルくらいヘボいです。うっかリドジっ子部に部族全員で所属してシマうくらいヘボいです。むしろヘボいと言う言葉が彼等の為ニあるクラいへぼへぼどもです。ケッ」


「それは言いすぎじゃないかな……? 後なんで舌打ちした」


「ドジっ子は、ワタしのようなPMSパーフェクト・メイド・ソルジャーには似合わないノデ」


聞き慣れないと同時にあまり理解したくない言語が聞こえてきた気がしたので、それははっきりと聞こえないふりをして無視をすることにした。


そんなやり取りをしている間に、いつの間にやらエルフ娘達が大ピンチに陥っている。先ほど言っていた魔に対するなんちゃら的なナイフのせいで、魔法が悉く無力化されて、その間に間合いを詰められてしまっている。


モヤシ並の身体能力と言っていたが、その通りで、構えこそ堂に入っているが、そこからの動きはてんでダメだ。草食系であると自負して憚らない彼でも彼女達よりは動けるだろうと言い切ることができるほどに。


「ど、どど、どうしよう!? 拙いよね、あれ、拙いよね!?」


「ですネー。あ、我がご主人様マイ・アディスタ、ゲへへって言っテますよ、ゲヘヘ。本当に言ウとは思いませンでした」


「いやそうじゃなくてね!? まぁそれも驚きだけども!」


「むゥ……でスガ、手持ちの罠ハ……あ、一ツありまスよ。標的のホかく、禁縛、血抜き、解体、出荷をこなス」


「捕獲はともかく、禁縛? 血抜き? ……解体、出荷ってなに!?」


だらだらだらだら


と、何処からともなくドラムロールが流れ始め――大きく、まるで何処かの演説家のように両手を振り上げる。


「その名モ!!」


「その名も!?」


「ネオ・落とし穴!!」


「それぜってえ落とし穴じゃねえ!!!!」



メイドさんはやっぱり平常運転でオーバーヒート中です。作者の茨陸號です。


相変わらず名前は出てきません。もうこのままいっちゃおうかな。

さて、次の話ではついに勘違い(させる)メイドの本領が発揮される予定です。


メイドさんの容姿ですが、ポニーテールは純粋に好み、紺のロングドレス+エプロンドレス、更に編み上げブーツは大学時代に行ったメイドカフェの店員さんをモチーフにしております。

……ぶっちゃけ、私の好みです。ええ。

誰かイラストにしてくれないかなぁ……。


では。皆さま、足元にあるネオ・落とし穴にお気を付けください。

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