愛の形
私には好きな人がいる。
週に一度、金曜日の午後になると必ず現れる彼のことが気になりだしたのはいつからだろう。
でも、その気持ちを表に出すことはできない。それをするのは禁忌だから。
金曜日の午後、店で彼の来店を心待ちにしている私。そんな自分が嫌になる。
彼が来た。胸が高鳴る。でも、表には決して出してはいけない。なぜなら私は・・・
「また来たの?毎週毎週のこのことやってきて、暇なわけ?他にすることないの?」
私は、ツンデレ喫茶のメイドだからだ。
「はい、水」
本当の気持ちを隠しながら、とにかく業務に徹する。別に彼のことなんか・・・。
「今日はいつにもまして服装に気合いが入ってるわね。馬子にも衣装とはこのことだわ」
内心では全く逆のことを考えているのに、本当の気持ちを伝えたい。でも、それはできない。
「ああ、やっぱり分かりますか?実はこの後デートなんですよ」
頭が真っ白になった。付き合っている人がいたなんて・・・。
「・・・ふーん、あんたなんかと付き合おうなんて、奇特な女性もいるのね。たで食う虫も好き好きといったところかしら。で、ご注文は?さっさと決めてよね」
注文を聞き、厨房へ戻る。
さっきの彼の言葉が頭から離れない。もう彼の前に姿を見せたくないとさえ思えてきた。
それでも私は彼のもとへ行く。つらいけれど、やらなければならないことだから。
「はい、他のお客さんもいるんだからさっさと食べなさいよね」
「ありがとう」その笑顔が辛い。
「・・・別にあんたのことなんて何とも思ってないんだけど」口が自然と動き出した。
「恋人がいるのにこういうところに来るの、どうかと思うわよ?その子のことが大事ならなおさら」
なにを言ってるんだろう。彼の顔を見ることもできない。
「あんたなんか馬に蹴られて死んじゃえっ」
まるで捨て台詞のように言葉を発し、私はその場を去る。許されるのなら店から出たいくらいだ。
私の彼への思いは一方通行。決して叶うことはない。
来週の金曜日、彼はいつものようにやってくるのだろうか?
出来ることならばもう彼には会いたくない。
だから私は彼のいない世界に行くことにする。
別に、彼のことが好きだからとか、そういうのじゃないんだけど。
最後は暗い感じになりましたが・・・。
お題を指定されると書きにくさを感じますね。