第24話:地獄の義父・マウント合戦〜本音(まご)はすべてを見ている〜
シグルドが「パンの耳・樹脂固め事件」により地下霊廟で反省文を書かされていた、その翌日のこと。
重厚な空間転移の門がリビングに開き、漆黒の外套を翻した男が現れた。
元魔王、ガルドス。リアナの父であり、かつて世界を震撼させた絶望の象徴である。
「我が愛しき孫、レオナよ! じいじが来たぞ! そして……**娘を汚す不浄なる義理の息子**はどこだ。首を洗って待っていたか?」
殺気立つガルドス。だが、レオナと目が合った瞬間、その厳格な仮面はあっけなく崩壊した。
1. 聖なるスピーカー、再起動
ガルドスはレオナを抱き上げようと、仰々しく膝をついた。
「おお、レオナ。今日もなんて愛らしいのだ。このじいじが、この国の王都を丸ごと買い取って庭にしてやろう」
表面上は「威厳ある祖父」を演じるガルドス。しかし、レオナの瞳が怪しく光る。
「……じいじ、いま、『レオナが まぶしすぎて、ぼくの めは もう いらない。レオナの あるく みち に しきつめられる じゅうたんに なって、その どろだらけの くつ で ずっと ふみつけられて いたい』って、いってるよ?」
「…………は?」
リアナが茶器を落としそうになる。
シグルドが地下から這い上がり、勝ち誇ったような笑みを浮かべて現れた。
「お義父殿。ようこそ、『レオナ・放送局』へ」
2. 泥仕合:変態 VS 変態
「き、貴様、シグルド! 孫になにを吹き込んだ!」
「いいえ、彼女はただ、貴殿の深淵を翻訳しているだけです。……ですよね、レオナ?」
レオナは無邪気に頷き、今度はシグルドを指差した。
「パパはね、『じいじの かお が ママに にてて ムカつく。じいじを ちいさく 圧縮して、ママの おまもりの なか に つめて、じゅうにんに してやりたい』って!」
「ほう、私をリアナのアクセサリの一部にするだと……? 望むところだ! いや、むしろ私がリアナの影になりたいのだ!」
「何を仰る、私はすでにリアナ殿の『踏み台』としての徳を積んでいる最中だ!」
元魔王と氷の貴公子が、レオナを挟んで**「どちらがよりリアナの所有物になりたいか」**という、次元の低い高次元バトルを繰り広げ始める。
3. レオナ、真実の爆撃
「……二人とも、いい加減にしてください」
リアナの冷え切った声が響くが、暴走する愛は止まらない。
そこで、レオナが決定的な「放送」を開始した。
「パパと じいじ、ふたりとも、おんなじこと おもってるよ!」
「「なんだと!?」」
レオナは元気に手を挙げた。
「『いっそのこと、リアナに 呼吸される 空気に なりたい。リアナの 肺の なか で 一生を おえたい』って、ふたりで 合唱してる!」
「…………」
リビングに、墓場のような静寂が訪れた。
もはや「娘を愛する父」でも「妻を愛する夫」でもない。ただの**「酸素になりたがっている不審者」**が二人、そこに立っていた。
リアナは無言でレオナを抱き上げると、ハンスに指示を出した。
「ハンス。……地下霊廟、二部屋分、空いてるかしら?」
「心得ました。特大の『精神安定剤』も焚いておきます、お嬢様」




