第14話:閣下、光を捨てて「影(物理)」になる。〜人間椅子と、絶叫のティータイム〜
1. 「存在感」という名の罪
前回の「市街地制圧デート」でリアナを怒らせたシグルドは、独房のような自室で猛省していました。
「なぜだ……。俺はただ、彼女の安全を完璧に確保したかっただけなのに、なぜ彼女はあんなに悲しげな顔をしたのだ……」
そこに、鏡の中からカイル(幻影)が冷ややかに囁きます。
『君の愛が、物理的に重すぎるんだよ。君という巨体がそばにいるだけで、彼女は酸素不足になる。本当に彼女を愛しているなら、空気のように、あるいは影のように、彼女に意識させずに支えるべきじゃないか?』
「……影! そうか、影になればいいのか……!」
2. 暗黒魔法の私物化
シグルドは、かつて魔王軍との戦いで習得した**禁忌の隠密魔術「シャドウ・ダイブ」を発動。
これは本来、敵の心臓を闇から貫くための暗殺術ですが、閣下はこれを「リアナ殿の足元に常に最適なクッション性を供給する」**ために転用。
彼は自身の肉体を平面化させ、リアナの影と同化。
「これでいい。俺は今、リアナ殿と完全に一体(足裏越し)だ。彼女が歩けば俺も進み、彼女が止まれば俺が支える。これこそが、究極のリラックス……!」
(※なお、地面からは閣下の眼光だけがギョロリと光っています)
3. 恐怖の「人間クッション」事件
リアナが庭園で読書をしようと、ベンチに座ろうとしたその時です。
シグルドは「硬い木製のベンチなど、リアナ殿の繊細な臀部には劇薬に等しい!」と判断。
リアナがお尻をつく直前、影から**肉厚なシグルドの腕(実体化)**がシュルリと伸び、ベンチの上に完璧な角度で「人間クッション」を形成しました。
「あら? 今日のベンチ、なんだか温かくて……筋肉質な弾力があるわね……?」
首を傾げるリアナ。しかし、ふと足元を見ると、自分の影の形が明らかに「正座して祈りを捧げるシグルド」のシルエットになっていることに気づいてしまいます。
4. ティータイムの「心霊現象」
さらに、リアナが紅茶を飲もうとカップに手を伸ばすと、影からヌッと伸びた「黒い指」が、絶妙なタイミングで角砂糖を投入。
リアナが「ひっ!」と声を上げると、影の中から**「……お気になさらず。私は、貴女の影。貴女の望みを、貴女が気づく前に叶える概念……」**という、地獄の底から響くようなシグルドのウィスパーボイスが聞こえてきます。
「シグルド様!? 出てきて! 怖いから本当に出てきて!!」
「……いいえ。私は、消えねばならぬのです……。貴女の視界を汚さぬよう……(影の中で涙を流しながら、リアナが食べ残したクッキーの破片を影の中に回収)」
5. 決着:リアナ、ついに「無」になる。
リアナの背後に常に気配があり、どこへ行くにも足元から熱視線を感じる生活が3時間続きました。
トイレにまでついてこようとする(影として)シグルドに対し、リアナの脳内で何かがプツンと音を立てて切れました。
彼女は震える手で、庭の水やり用ホースを手に取ります。
「シグルド様……。そこにいるのは、わかってるわ。……影には、光が必要よね?」
リアナは、屋敷中の魔力灯を全開にし、さらに光魔法のスクロールを叩きつけ、影が一切存在しない**「無影空間」**を無理やり作り出しました。
光に弾き出され、壁にベチャアッと張り付いた状態で実体化したシグルド。
「シグルド・ザ・ヴェスティージ……。一分以内に、私の前から消えなさい。さもなければ、この国から貴方の戸籍を消去して、私が魔王軍に貴方を売り飛ばすわ」
リアナの瞳から光が消え、言葉の温度はマイナス273度に到達。
シグルドは「ああ……お怒りのリアナ殿も、なんと神々しい……。戸籍……? 彼女の所有物(奴隷)になれるということか……?」と一瞬悦びに浸りますが、彼女の**「本気の蔑みの目」**を直視し、ついに「これは、本当にマズい」と本能が警告を発しました。




