第4話 王都脱出、追ってくるのは理想と現実
護送任務の内容はシンプルだった。
「隣国まで、馬車一台。積荷は薬草」
(最高。理由も目的地も完璧)
依頼主は商人。
護衛は俺と、あの女性冒険者――名はレナ。
「顔、貴族だろ」
出発前、即バレた。
(さすが現場の人)
「事情は聞かない。
逃げる奴は嫌いじゃない」
(惚れるわ)
夜明け前、王都を出る。
門をくぐる瞬間、胸が少しだけ痛んだ。
(未練?……いや、違うな)
自由への緊張だ。
だが、そう甘くはなかった。
街道に出て一時間。
背後から、蹄の音。
「来たな」
追手。しかも複数。
(誰だよ!って分かってるけど!)
森に入る。
馬車を捨て、徒歩。
荷物は最小限。
「走れるか」
「走るしかねえ」
枝を掴み、地面を蹴る。
息が切れる。身体は細い。
でも、心肺は鍛え上げてある。
(部活、無駄じゃなかったな)
矢が飛ぶ。
レナが叩き落とす。
「スパダリか?」
「たぶん全部」
「贅沢な悩みだな!」
笑いながら走る。
これが戦場だ。
崖下に川。
「泳げるか!」
「水泳も必修だ!」
飛び込む。
冷たい水が肺を叩く。
(くそ、女の身体、浮力高っ!)
流されながら岸に上がる。
その時――
「もうやめてくれ!」
声。
スパダリだった。
濡れた髪、必死な顔。
「君のためなんだ!」
(出た、免罪符)
俺は一歩前に出る。
「違う」
はっきり言う。
「それはお前の理想だ。
俺の人生じゃない」
レナが後ろで構える。
王子も幼なじみも、黙っていた。
「俺は、
誰かに守られるために生きてねえ」
拳を握る。
「守りたいなら、
行かせろ」
長い沈黙。
そして――
道が、開いた。
追手は引いた。
「後悔するぞ」
誰かが言った。
俺は笑った。
「後悔は、自分で選ばなきゃ出来ねえんだよ」
再び走り出す。
森を抜け、国境が見えた。
(……あと少し)
夜、焚き火。
レナが酒を渡してくる。
「いい顔してる」
「やっと呼吸できた気がする」
星が見える。
(ここまで来た)
隣国は、もう目の前だ。
⸻
次はいよいよ最終話。
冒険者としての第一歩がふみだせるのか?脱出成功なるか?




