第3話 冒険者ギルド、脳筋は世界を救う(予定)
冒険者ギルドは、思ってたよりもうるさかった。
酒の匂い。
汗の匂い。
そして――人生詰みかけの匂い。
(ああ……落ち着く)
貴族屋敷の紅茶より、こっちの方が百倍性に合ってる。
フードを深く被って受付に並ぶ。
身分がバレたら即終了なので、全神経集中。
「登録ですか?」
受付のお姉さんがちらっと俺を見る。
「……はい」
(声かわいいなクソ!
俺の中身返せ!)
水晶に手を置けと言われ、覚悟を決める。
(頼むから“聖女”とか出るなよ……)
――結果。
「えーと……体力、異常値ですね」
(よっしゃ!!)
魔力?そこそこ。
剣適性?普通。
だが体力と反射神経だけが、明らかにおかしい。
元・体育会系男子高校生、ここに健在。
「Dランクからのスタートになります」
(十分十分!)
その瞬間、背後で声がした。
「新人?」
振り返ると、鎧を着た女性冒険者。
傷だらけで、目が強い。
「変な貴族に絡まれたら、ここじゃ守ってやる」
(あ、この人好き)
その直後――
「助けてください!」
駆け込んできたのは、
昨日助けた使用人の少女だった。
話は早かった。
借金。人身売買。テンプレ地獄。
ギルド内がざわつく。
「証拠がなきゃ動けねえな」
(……あ?)
俺は一歩前に出た。
「今から取り返せばいいだろ」
一瞬、沈黙。
女性冒険者がニヤリと笑った。
「いいね、脳筋」
(褒め言葉だな)
夜の倉庫街。
男三人。数は不利。
身体はヒロイン。筋力は女子。
――でも。
(気合は負けねえ)
足元の石を投げる。
注意を引いた瞬間、距離を詰める。
膝。鳩尾。体重乗せて押す。
(ルール?知らん!実戦だ!)
女性冒険者が後ろから制圧。
あっという間に終わった。
少女は泣きながら礼を言った。
「あなたがいてくれて……」
俺は頭を掻く。
「次は一人で逃げろ。
誰かに助けを求めるのは、最後でいい」
その背中を見送った瞬間。
――拍手。
「さすがだね」
最悪の声がした。
振り返ると、
スパダリ・幼なじみ・王子、勢ぞろい。
(なんでいる)
「危険なことはやめてくれ」
「君は守られるべき存在だ」
「冒険者なんて下賤な――」
そこで、俺はブチ切れた。
「うるせえ」
全員黙る。
「守る守るって、
俺の意志はどこ行った?」
胸がドクドク鳴る。
「助けたい人がいて、
身体が動いた。それだけだ」
一歩、後ろに下がる。
「俺はここで生きる。
お前らの理想のヒロインは、もういねえ」
王子が何か言おうとしたが、
俺はもう聞かなかった。
ギルドの扉をくぐる。
(……やっと、スタートラインだ)
その夜。
俺はDランク冒険者として初仕事を受けた。
隣国への護送任務。
(神様、空気読め)
脱出ルート、見えた。
⸻
次はいよいよ
第4話:王都脱出・追跡・冒険者としての覚悟。




