第2話 スパダリ包囲網、内心は罵声の嵐
結論から言う。
この世界のイケメン、距離感がおかしい。
朝起きたら花束。
廊下を歩けばエスコート。
ちょっと咳をしただけで医者三人召喚。
(過保護ってレベルじゃねえ)
特に問題なのが、例のスパダリ筆頭。
王都でも指折りの名門貴族、顔良し頭良し金あり。
欠点?存在そのもの。
「今日の剣術訓練、見学に来ないかい?」
(行くわけねーだろ!汗と気合の世界に観客はいらん!)
断ろうと口を開くが、
ヒロイン仕様の身体は勝手に可憐ムーブをかます。
「ええ……少しだけ、なら……」
(俺を裏切るな、声帯!!)
案の定、訓練場では俺専用観客席が設けられていた。
日除け付き。お茶付き。
(部活の練習見学かよ!しかも女子マネポジ!)
剣を振る男たちを見ていると、身体がうずく。
フォーム甘い。踏み込み浅い。
腹から声出せ。
(あーもう!貸せ!俺がやる!)
そんな俺の内心など知る由もなく、
スパダリは微笑みながら言う。
「君は危ないことをしなくていい」
(そのセリフ言う男、全員信用できねえ)
昼にはクール系貴公子が合流。
「今日は図書館で過ごそう。君の知識欲を満たしたい」
(俺の欲は筋肉痛だよ!!)
夕方には王子まで現れる。
「君が笑ってくれるなら、国一つ差し出してもいい」
(重っ!プロポーズの単位おかしい!)
気づけば三方向から囲まれていた。
(これが乙女ゲーの修羅場か……)
その夜、屋敷の裏庭で、
使用人の少女が泣いているのを見つけた。
理由は単純。
貴族の息子に絡まれて、断ったら逆恨み。
(……またかよ)
考える前に身体が動いた。
「泣いても解決しねえ。今は俺が話つける」
(俺、ヒロインなのにな)
案の定、相手は逆ギレしてきた。
「女のくせに口出すな!」
瞬間、頭が冷えた。
(ああ、ダメだ。
こういう奴、一番嫌いだ)
俺は一歩前に出る。
「女とか関係ねえ。
嫌って言われて引かねえのは、ただのクズだ」
場が凍った。
震えてた少女が、驚いた顔で俺を見る。
貴族の息子は顔を赤くして去っていった。
その夜。
なぜかその噂が広まり、
翌朝にはイケメンたちが全員不機嫌だった。
「危ない真似はしないでくれ」
「僕らを頼ってほしい」
「君が傷つくのは耐えられない」
(三人まとめて言うな!!)
内心で叫ぶ。
(俺は守られる側じゃねえ!
自分の足で立ちたいんだよ!)
その日の夕方、俺は決めた。
冒険者ギルドに行く。
このままじゃ、
スパダリ包囲網で窒息死する未来しか見えない。
(ヒロイン?知らん!
俺は俺の人生を走る!)
夜、荷物をまとめながら、
俺は笑った。
(脱出まで、あと少しだな)




