4.俺の番が消えた(ミハエル・ミスト・シルフィ視点)
番が消えた。
空間魔法だ。
匂いが辿れない。
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俺はミハエル・ミスト・シルフィ。
狼の獣人だ。
獣人としては狼は強い方に入り、国ではシルフィ家は侯爵家として他の獣人を従えていた。
俺はシルフィ家の次男。
15歳になって身体の鍛錬と貴族としての修行も終わり、シルフィ家が持っているいくつかの領地の中の子爵位くらいの領地を分けてもらって後は番を見つけて、お嫁さんと悠々自適に暮らそうと思っていた。
だが、しかし、獣人の国で楽々と番が見つかっていた代々のシルフィ家の者たちと違って、俺は1年たっても2年たっても番は見つからなかった。
匂いが分かるように、まとまって休みをとっては遠出をして、時には国外に出て探しているのに見つからなかった。
「お前はシルフィ家の中でも特に身体能力が強い。そういうものは神様が試練を与えるために番をはるか遠くに置くと聞いたことがある。実際、獣人の中には遠くの人間の国に居る女性が番だったこともあったそうだ」
ある日、なかなか番が見つからない俺に、おじい様がそう教えてくれた。
『人間』
不思議な種族だ。
この国でも人間はいないことはないが、弱いやつに興味がないのであまりよく見たことはない。
身体能力が弱く、猿の獣人の亜種らしいのに、手足の力もとても弱いらしい。
匂いも弱く、ものすごく見つけづらいとか。
「強い獣人の相手は釣り合いを取るために弱い人間族が番の場合があるとも聞く。また、森の奥に引きこもっているエルフが番だった獣人もいたそうだ。その場合は、濃い世界樹の匂いに阻まれてなかなか番が見つけられなかったそうだ。いずれにせよ、お前が統治する予定の子爵領は確保しておくから、番を見つける旅に出るがよい」
「それは……………………でも」
「心配するな、お前が戻ってくるまではお前の兄に経営を任せておこう」
何年か色々な国を巡った。
なかなか番は見つからなくて、時には獣人を差別している国もあったりして番探しは難航した。
獣人を奴隷にする商人に捕まりそうになったりして、命からがら逃げたこともあった。
いくら俺が強くても多勢に無勢だ。
俺の心は疲弊して、もう番なんて永遠に見つからないんじゃないかと思い始めた。
自分には番は見つからないのに、おじい様が慰めでみつかると言っているんじゃないかと疑心暗鬼に陥ったりした。
…………しかしあるとき、かすかに気になる匂いが流れてきたときは心が躍った。
導かれるように気になる匂い、番の匂いのする方へ駆けていった。
後、もう少しで番と会えると思った時、自分が長い長い旅でボロボロである事に気づいた。
幸い、番が居る国は獣人をそこまで差別している国ではなかったので、持っていた金を通貨に換金した。
そして、一秒でも早く会いたい気持ちを抑えて、宿をとり身なりを整えた。
『愛する番の視界には美しい自分が映りたい』
そう思った。
きっとここまで苦労してきた俺を受け入れてくれる。
明日には番をこの腕に抱きしめられる。
俺は宿のベッドで眠りに落ちながらそう信じていた。
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