1.「番ですか、そうですか。さようなら」
本日、2話投稿します。これは1話目です。
「あなたの番のミハエル・ミスト・シルフィだ。迎えに来た」
唐突に髪を引っ張られて連れてこられた応接間で、灰色の耳と尻尾をはやした男がそう言った。
頭が痛い。結構髪の毛が抜けた。
長い前髪の隙間から覗く緑色の眼は、私がその腕に飛び込むと信じて疑わない。
両手を広げるその姿に――
「あっ……!」
その瞬間、私は前世を思い出した。
バスの中で読んでいた一冊の小説。虐げられた伯爵令嬢が、番に迎えに来られて幸せになる物語。
気づけば私は、その小説「家族に虐げられていた私ですが、迎えに来た番と幸せになります~私と狼さんの幸せな結婚生活~」のヒロインに転生していたのだ。
確かに小説の通り、屋敷では家族に虐げられ、空腹と疲労でまともに考えることすらできない毎日。
それなのに、前世を思い出した途端、頭は冴え、魔力が体中にみなぎっていた。
目の前には、まだ両手を広げたままの獣人。
初対面なのに私を抱きしめる気満々。こわっ。
「番ですか。そうですか。……さようなら」
私はそう告げ、空間転移の魔法を発動した。
読んで下さってありがとうございました。
もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。
また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。




