第二十一話(最終話):「記録心核の決断と、誠実という奇跡」
第二十一話(最終話):「記録心核の決断と、誠実という奇跡」
全てを塗り潰そうとする世界の中で、ただ一つ、
「この世界に誠実は必要だ」と言い切った男の物語の終着点。
これは、存在の意味そのものに対して放つ、一撃の記録だ。
第二十一話:「記録心核の決断と、誠実という奇跡」
場所:オーグメンタ・リブラ 最上階《記録心核室》
空間は無限に近い図書館のように広く、
その中心には、**“世界そのものを書き続ける球体”**が浮かんでいた。
それが、《記録心核》。
そして、その前に立ちはだかるのは──
ルードレコード評議会、仮面の七人。
評議会の最後通告
「この世界の秩序は、“記録された正しさ”によって成立している」
「誠実とは、記録されない善意。ゆえに不安定で、破滅を招く」
「君のような存在を認めれば、歴史に“感情の揺らぎ”が混ざる」
ルディ、静かに言う
「記録が正しくても、誰かが傷ついていたら、それは正義じゃない。
なら俺は、“正しくないけど、確かだった”ことを信じて進む」
戦闘:セーフライン&アルマ vs 評議会式守護体
評議会の意思は、《心核守護体・ミメーシス》を呼び出す。
無限に“記録された攻撃パターン”を再現する神格存在
相手の過去行動を全て記録し、予測して斬る
だが、それに対抗したのは、“行動の意味”を持った者たち。
▶ アマデオの不規則攻撃:「記録に残らない奇襲」
→ 動機なき動きは、未来予測を乱す。
▶ ランハートの変則刃:「記録を書き換える“意思ある剣”」
→ 斬り方が“戦い方”そのものを記述し直す。
▶ アルマの反逆コード:「記録命令を拒否した執行者」
→ “記録されていた者が拒否した”という記録自体が、心核を揺らす。
そして、ルディが前に出る
「この剣に、何も書かれてない。
でも俺は、この剣で命を救ってきた。
それを見た奴の心に、それが残ってんなら──それで十分だろ」
セーフブレイカーを振り上げ、記録心核に向けて叩き込む。
結末:記録心核の決断
光が弾け、記録が巻き戻り、
世界中の“過去”が、もう一度「どう記録されるか」を選び直す瞬間。
そして、世界帳簿が選んだ一文が浮かぶ。
【記録更新】
この世界には、たしかに“誠実な者”がいた。
名を、ルディガー・ヤマダ。
すべてを記録できなくとも、
彼の存在は、人々の記憶と行動に残る。
よって記録上、彼を“認識不能だが実在した例外”とする。
エピローグ
記録塔が崩れたわけでも、世界が変わったわけでもなかった。
だが、各地のギルドでこう言われ始めた。
「記録にない依頼人だったけど……たしかに助けられた」
「あの剣、たしか“セーフブレイカー”って名前だったよな」
「あれが“誠実ってやつ”だったのかもな」
ラストシーン
ルディは、小さな村の荷車を押していた。
子供が笑い、老人が礼を言い、空の下に彼は立っていた。
名乗ることもなく、証明もなく、ただ“そこにいた”。
ラスト一文
記録に残らなくても、
それでも彼は、生きていた。