第十五話:「記録執行者アルマ、動く」
第十五話:「記録執行者アルマ、動く」
その日、空から一枚の白紙の書類が降ってきた。
風も、声もない。
だが、その紙が地面に落ちた瞬間、バストレイドの歴史から“ひとつの酒場”が消えた。
跡地には何も残らず、誰も覚えていない。
存在が、記録ごと削られた。
名を持たない死神:アルマ・ノイン
彼女は白い仮面をつけていた。
純白の外套。淡金の髪。冷ややかでも悲しげでもない、無感情な眼。
「記録に矛盾を与える存在を、調整します」
「これは破壊ではなく、最適化です」
ルードレコード執行者、アルマ・ノイン。
村への接近
アマデオが報告に戻る。
「……ヤバい。“街そのもの”が奴の手で消されかけてる。
いや、正確には“存在しなかった扱い”にされてる。記録にない場所から、順に」
ランハートが言う。
「次はここだな。“影の村”」
ルディは静かに立ち上がった。
「来る前に、出よう。この場所を犠牲にはできん」
移動中の遭遇:静かな戦闘
夜、森を抜ける道。霧の中。
突如、風も立たず、アルマが現れた。
彼女は手に記録書を持ち、静かに口を開く。
「あなたの名は、記録に値しません。
この場で調整処理を行います。制圧、抹消、終了」
ルディの前に立ちはだかるアマデオとランハート。
だが、アルマは戦わない。
ただ一歩、足を踏み出すだけで、空間が白紙化する。
能力:記録消去術式
対象の記録を操作し、「存在したという事実」そのものを無効化する
名前・履歴・証言・物理的痕跡すら、世界から消去
唯一の制限:“直接会話し、対話に応じた相手”は完全消去できない
対話:ルディ vs アルマ
ルディが剣を構えず、静かに言う。
「……お前は、何のためにそんな力を使ってる?」
アルマは答える。
「世界の歪みを直すため。秩序とは、混乱を記録から取り除く行為です」
「なら、俺が何をしたか、記録してみろ」
アルマが一瞬止まる。
「……できません。あなたの行動は“解釈が分かれる”」
ルディが前に出る。
「だから記録じゃなく、“記憶”で戦え。お前自身で、俺が正しいか判断しろ」
アルマがその場を離脱する。
「了解。次回接触時、判断基準を更新し、処置を再開します」
ラスト一文
月夜にたたずむアルマの背後に、評議会からの新たな命令が届いた。
【対象:セーフライン 状況:不完全消去】
【指令更新:次回接触時、“信頼形成前に抹消”を最優先とする】




