第十一話:「偽神殿《白冠教》の布教」
第十一話:「偽神殿《白冠教》の布教」――これは“信仰”という武器が使われる回。
暴力や金では動かないセーフラインに対し、敵はついに「大衆の信じるもの」そのものを使ってくる。
ルディの“誠実”が、信仰ビジネスとどうぶつかるかを描く。
第十一話:「偽神殿《白冠教》の布教」
それは、静かに、だが急速に始まった。
バストレイド北街区に、仮設の礼拝所が建てられた。
名前は《白冠教》。
清楚な白衣、優しげな祈り、無料の施し。
だがその裏には、奇妙な点がいくつもあった。
礼拝前に飲まされる「浄化水」が異様に眠気を誘う
講話の中に「ルディ=異端」の表現が混ざる
貧民街の少年少女が“行方不明”になり始めている
アマデオが吐き捨てる。
「これ、信仰じゃなくて“洗脳”だ。やばいぞルディ、奴らマジでお前潰しにきてる」
白冠教の教義(表)
「この世界は混沌に覆われている。
秩序とは、“記され、守られ、選ばれた者”によってもたらされる」
「疑問を持たず、与えられた秩序に従うことこそが救い」
——「不誠実なる者、記録されざる者は、存在しないに等しい」
リュシアの危機
ギルドで調査を進めていたリュシアが行方を絶つ。
最後に残したメモには、こう書かれていた。
「私は“記録されていない者”の取材を始めた。それは危険で、
でも彼らこそが、“自由という可能性”を示している気がする……」
ルディの拳が、机を鳴らした。
「連中、“名前のない者”を消している」
潜入と対話:ルディ vs 偽司祭
仮設神殿の講堂。
そこに立つのは、偽神父カイル=白冠教の実質トップ宣教師。
仮面をつけた聖職者が、信徒たちに穏やかに語る。
「混乱の時代にあって、我々には導きが必要です。暴力ではなく、信念でもなく、
記録された正しさが、我々を救ってくれるのです」
ルディが一歩、前に出た。
「記録の外にいる者は、間違ってるのか?」
「ええ。“無記名”の者は、“存在しない”のと同義ですから」
「じゃあ俺は間違いだな。“名を奪われた者”として、お前に問う」
剣は抜かず、ただ拳を握ったまま。
「それが本当に“神の言葉”なら――お前が神ごとぶっ壊す」
神殿崩壊:一撃の決断
ルディの一喝に信徒たちがたじろぎ、アマデオが外壁から煙玉を投げ込む。
同時に、ランハートが支柱に向かって斬りつけた。
仮設神殿が崩れ落ちる。
偽司祭カイルは闇に紛れて逃げたが、施設の“裏倉庫”から複数の子供たちが発見された。
全員、微量の精神操作魔術を受けていた。
街の空気が変わる
リュシアは後日、ギルド倉庫の中で発見され、意識を取り戻した。
市民たちは、自分たちが“信じかけていたもの”に恐怖し、
逆に「セーフラインの行動」に拍手を送る者すら出始めた。
ラスト一文
ルディは、神殿の焼け跡に立ち、誰に言うでもなく呟いた。
「神も秩序も……人を縛るためにあるなら、全部敵だ」




