第十話:「旧支配層と反支配の兆し」
第十話:「旧支配層と反支配の兆し」
バロックとの謁見から数日。
街は何も起こっていないように見えた――だが、それは逆に異常だった。
「裏依頼がピタリと止まった。怖いくらいに」
アマデオがギルドの酒場でつぶやく。
「静かすぎる嵐の前、ってやつだ」
ルディは言葉を返さない。ただ、いつでも動けるよう剣に手をかけていた。
一通の密書:「会いたい者がいる」
それは、エルナ経由で届いた、手書きの手紙だった。
『貴君の行動に感銘を受けた。
かつて“この国を正す”と誓い、敗れ、潜伏している者が会いたいと望んでいる。
会合地:旧王立図書庫・地下4層
合言葉:「信は力なり」』
ランハートが目を細める。
「旧王政時代の廃棄施設……?」
アマデオが言う。
「これ、“旧支配層”だな。バロックと対立して、粛清された元貴族か軍系の残党だ」
地下図書庫・会合
薄暗い階段。瓦礫。カビ臭。
だがその奥、書架の裏に現れたのは、年老いた一人の男。
元王国諜報司令、《リオン・クラウゼ》
白髪の軍服、鋭い目。だがその背中には、“敗北の重み”が見えた。
「我々は、国に捨てられ、裏に喰われた側だ。
だが――お前たちはまだ、立っている。だから伝えに来た」
リオンの情報:三つの真実
バロックは“裏の王”ではない。
→ 本当の黒幕は「世界帳簿」と呼ばれる、
国家と神殿と商連を繋ぐ超級記録機関。そこにバロックは属しているにすぎない。
“誠実な駆け引き術”は、記録機関によって危険技能認定されている。
→ 「人を動かすのに、暴力も金も必要としない」ため、封印対象に近い。
セーフラインの台頭は、反記録勢力にとって唯一の“反撃材料”である。
→ 現在、複数の都市で小さな蜂起・暴動が同時多発している。全部、お前たちの影響だ。
ルディの決断
リオンが言う。
「我々は再び立ち上がる気はない。
だが、情報は渡す。力も一部なら貸せる。
お前たちは、“どこまで行くつもりだ?”」
ルディはゆっくり立ち上がる。
「行くところまで、行く。
“力のある者が正義”って構造を壊すまでな」
ランハートとアマデオも、無言でうなずいた。
ラスト一文
その夜。バロックは巨大な書状を受け取っていた。
【セーフライン、南連合区・第三商港に影響拡大中】
【リオン・クラウゼ生存確定。接触あり】
【民間反応:局所暴動→“セーフライン式治安”要求】
バロックの目が静かに揺れた。
「……これは、“誠実という病”だな。いよいよ処置が必要だ」




