第九話:「裏の王バロックからの招待」
第九話:「裏の王バロックからの招待」
これは、ルディガーという“真っ直ぐすぎる異物”に対して、
この世界の最上位“裏”の支配者が、力ではなく言葉で屈服させに来る回だ。
裏の王――バロック。
表に出ない、だが王族より強い。法律より重い。
その招待は、誠実とは真逆の力との、知恵と意志の勝負になる。
第九話:「裏の王バロックからの招待」
ギルドに一通の手紙が届いた。
《セーフライン様へ》
あなた方の働きぶり、興味深く拝見しております。
つきましては、少々“個人的な”お話を――
バストレイド西、第五市場跡・深層迎賓室にてお待ちしております。
署名:B.
ルディは即座に手紙を火にくべた。
「来たか。“本丸”だな」
会場:第五市場跡・迎賓室
地下に広がる旧交易区画の奥、静寂と漆黒の部屋。
巨大な玉座の前に、男が一人。
黄金と漆黒の衣、顔の半分に装飾仮面。
そしてその声は、絹のようになめらかだった。
「ようこそ。“表を殺す側”の人間としては、よくここまで来られましたね」
バロック――黒商連の最高幹部、存在そのものが“交渉不可能の象徴”。
交渉開始:理と毒
バロックは始めから“脅し”も“罠”も使わなかった。
代わりに、静かな言葉だけを積み重ねていく。
「あなたは素晴らしい。誠実で、忠実で、筋が通っている。
だからこそ――あなたが生きていると、我々は非常に困るのです」
「……生きているだけで、か」
「はい。あなたの存在が、市場に“信用”を植え付ける。
それは、“恐怖”で均衡を保つ我々の秩序を、根から腐らせる」
バロックの提案
「そこでご提案です。
セーフラインの名前は保持したまま、我々の“庇護下”に入ってください。
依頼は選べます。報酬は3倍。命は保証されます」
アマデオが呟く。
「……買収ってわけか」
「違います。降伏の儀式です。選ばせてあげているだけ」
ルディ、応える
ルディは静かに立ち上がった。
「俺は、戦ってきたんだ。金を守り、人を運び、命を預かってきた。
そのすべてに“裏口”はなかった。お前の申し出に、選択肢はない」
バロックがわずかに笑った。
「誠実とは、不器用な反逆ですね」
「そうだ。不器用に、真っ直ぐ、てめえで決めて、てめえで責任取る。それが“誠実”ってもんだ」
バロックの一手
その瞬間、部屋の空気が変わる。
バロックが立った。
「そうですか。では、こちらも“誠実に”行きましょう。
次にあなたの仲間が一人でも倒れたとき――あなたの家族、かつての名前、人生、すべてを消します。」
ルディの拳が握られる。
「言ったな。……ならこっちも一つ約束しよう」
彼は剣を抜き、バロックの足元に突き刺した。
「お前の名前、顔、声、立ち位置……全部覚えた。
今度会うとき、お前を“市場”ごとぶっ潰す」
ラスト一文
部屋を出た後、バロックは仮面の奥で微笑んだ。
「……怖いものですね、“過去を持つ者”は」
──次回、「旧支配層と反支配の兆し」
この回で、セーフラインは完全に“裏の支配構造”と敵対しました。
もう後戻りはない。次回は、国家・宗教・貴族すら絡む「旧支配層の現れ」。




