第六話:「偽名ウルフと10万の逃走劇」
第六話:「偽名ウルフと10万の逃走劇」
――ギルド仕事、休業日
「裏からの圧、ちょっと強すぎるな。今は目立かず、潜る」
ルディはそう言い残し、昼下がりの市場裏へ姿を消した。
数時間後、街のスラム区でひそかに噂が流れた。
「新しい胴元が現れた。目だけ出した黒頭巾。名前は“ウルフ”」
ルディ、裏稼業を始める
小さな壊れかけの倉庫。
即席のサイコロ台。床に描かれた賭場ライン。
ギャンブルの内容は**「偶数・奇数」「上か下か」「ゾロ目で倍」**。単純だが、賭ける側が熱くなりやすい。
その中央に立つのは、黒い眼だし頭巾をかぶったルディガー=“ウルフ”。
「丁か半か。今締め切る。勝った奴、前へ出ろ」
声は低く、言葉も簡潔。だが“場の管理力”は完璧。
誰も騒げず、誰もイカサマできず、結果が出るたび拍手と歓声だけが響く。
そして気づけば、1日で10万円相当の利益が、目の前の丈夫な袋に収まっていた。
だが、匂いは漏れる
その異常な秩序、回収率の高さ、そして「胴元が客と一度も揉めない」という異常事態。
それが、裏社会の耳に届かないわけがなかった。
「……なあ、こいつ……“ギルドのセーフライン”の、あのルディじゃね?」
「いや、でも名前は“ウルフ”だぜ? 黒頭巾だし……」
「バカ、ロングソード持った胴元なんか一人しかいねえだろ」
逃走:異世界スケボー爆誕
気配に気づいたのは、ルディの背中だった。
「……ヤバいな」
逃走を選んだ瞬間、彼が取り出したのは謎の板状の荷運び台。
路地裏の工房からくすねて加工した――そう、異世界スケボーだった。
「ッたく、老後ってのは忙しいもんだな」
ザッ!
石畳をスムーズに滑走。角を蹴って跳ね、空の桶を踏んで方向転換。
まるで東京の坂道を走ってた時の、自転車スラロームを思い出す。
後ろから聞こえる怒声、追手、足音。
だが、ウルフ=ルディガーは振り返らない。
脱出成功・10万円ゲット
裏門からすり抜けたときには、追手は完全に巻かれていた。
黒頭巾を脱ぎ、酒場の裏から表へ歩いて出る。
「さて、今日も“誠実”に稼いだな」
手にした袋は、銅貨銀貨混合で約10万相当。
これが、後にセーフラインの装備費用・情報料に活きることになる。
ラスト一文
その夜、スラムの賭場では噂だけが残った。
「なあ、“黒頭巾のウルフ”って、誰だったんだろうな……」




