第一章:再スタートは地面から
第一章:再スタートは地面から
かつて、山田太郎という男がいた。
警備会社で三十年、現金輸送に命を賭け、家族を食わせるためだけに生きた男だ。
モットーは五つ——信用、勤勉、努力、誠実、正直。
それらを体に刻んだ上での“駆け引き”。
正面からぶつかって、ギリギリでやりくりする。それが彼の全てだった。
子供たちをなんとか全員高校まで出し、ようやく「これからはスローライフだ」と思った矢先、コンビニ帰りに強盗に刺されて死んだ。
犯人の後ろにもう一人いたことに気づくのが、ほんの一歩遅れた。
気がつくと、白くもなく、黒くもなく、どこか居酒屋のような空間に立っていた。
カウンターの向こうにスーツ姿の男。見覚えのない顔——だが、どこか店長っぽい雰囲気。
「お疲れさまでした、山田さん。転生、決まりました」
神だった。
どうやらもう一度チャンスをくれるらしい。ただし、異世界で。
渡されたのは、いかにもRPG的なアイテムの数々。
短剣術
撃退術
ロングソード術(※特記事項:鉄アレイ振ってストレス発散してた筋力あり)
誠実な駆け引き術
会話術(元後輩育成マシーン)
ロングソード一本
初心者防具セット
シークレットベルト(金貨10枚入り)
丈夫な袋(通貨20万+銅貨8枚、銀貨5枚)
オーダーメイドの登山靴(日本製)
「以上が、あなたに合った装備です。では、行ってらっしゃい」
落下。
目を開けたとき、山田太郎は“ルディガー”という名で、異世界の20歳になっていた。