クダラナイムカシバナシ
23時の駅のホーム
真夜中 電灯の点滅 冷たいみたいに辺りは静か
両足で立った僕ひとり
ないたのは風だけ
ないたのは風だけ
全力で幸せを与えたかった
毎日全力 会うたび全力 僕の全力はそれはそれは穏やかな全力
音も立てずに全力だった
そしていつもみたいにやっぱり 僕の全力は力の限り空回り
あんなに幸せそうな出会った頃の君 公園のベンチ
ほんとになんにも知らなかったはずの僕ら
でも何も言わずに何故か触れ合った手 温かい
あの不思議を今でも忘れてはいない
どうしようもないくらい一人称の 僕という生き物
どうしようもないくらい つかいものにならなくなった 『恋』 という言葉
お互い 「すき」 といったのはたったの一回だけ
通じ合ったあとに響いてカタチになったその声
最後の日
ボロボロになった僕らふたり
無言の帰り道 電車の中 君のうちへはあと5分
自分に嘘はつけないからと
僕は君にその言葉を強請った
最初で最後の 君へのお願い
「さよなら」といってください
僕の心は苦しくてもう自分を騙せなかった
悪いのは僕だ 悪いのは全部全部僕だ
もうもとにもどらない関係に終わりの魔法をかけて欲しかった
さぁ手加減なんかいらない
残酷なくらいにその言葉で僕を突き放してください
その頃は確か雨が降り出していた
人気の無い秘密の帰り道
惨めな小雨
くだらない手加減だった
「さよなら」
君が馬鹿みたいに雨に濡れたまま その言葉をくれたのは沈黙が千と八百秒は流れたあと
呼吸をするのも許されないようなくらいの完全な沈黙
「ありがとう」
馬鹿みたいに涙も出ない僕は背を向けて 立ち止まったり歩いたりを繰り返しながらその場所を去った
駅のホーム
手加減をしない雨に脳を心を殴られ続けて
僕は悪者になってかえってきた
幸せを与えられない悪者
たったひとりの人間の気持ちさえ理解できなかった愚か者
意識を売り払って気づけば駅にひとりっきり
思い出したように感情が身体に還元され始めて
僕は全力で涙をとめた
全力で
そして風が鳴いた
僕の本気は 『ごみ』 みたいなんだ。