クリニック
クリニックに着いて受付を済ませるとパートナー同伴の患者が集まる待合室に通される。
そこは自宅のようなラグマットや暖かな空間はないもののKneelしても大丈夫なようにクッション性のある床材になっていて今の時期は冷え込むからかカーペット仕様となっていた。
道中はかーくんが手を握っていてくれたし常にくっついていたから大丈夫だったけど、ここにきて他のパートナーたちがいるからやっぱり落ち着かなくなってきて妙にソワソワしてしまう。
待合フロアの一角には《ご自由にお使いください》のコーナーがあってブランケットやマットが多種多様に揃えられている。こう言うクリニックならではだなぁといつも来るたびに思う。
僕は人に見られるのは少し抵抗があるけど無性に彼の膝の間に座りたくなって…
それでも自分からは言い出せなくて俯いてしまう。
「千歳、こっちおいで」
「!」
ハッとして顔を上げると眉を下げて笑う彼。
…かーくんはエスパーなのかな?
いつも僕の気持ちやしたいことを先回りして示してくれる。
おいでって言ってくれた先は1人がけソファに座った彼の足元…。
(コマンドでも良かったのに…)
僕のこと気遣ってくれたのかな?
「…千歳、Kneel」
「っっ!」
言われた瞬間カクンと足から力が抜けてかーくんの足元に座り込む。
「ん、上手だな。」
優しく髪をくしゃっと撫でてくれてそれだけで顔が熱くなる。
なんだか今は顔を見られたくなくてかーくんの足に抱きついて顔を隠す。
クスっと笑い声が聞こえたかと思うと、
「…Up」
とコマンドが飛んできて渋々顔を上げる。
「やーっぱりな。カワイイ顔してた。隠すなんて勿体無いから俺だけに見せて」
そう言って少し屈んで顔を覗き込むかーくんと目が合う。
それが気恥ずかしくて目を逸らそうとすれば、
「こーら、ダメだろ?Look」
「…んー」
「Good。そのままな」
僕的にはコマンドに酔って気持ちいいんだけど、
顔をみられてさらに視線を固定されて恥ずかしいやら悔しいやら。
頭の中はかーくんでいっぱい。
じーっと見られてどんどん赤くなってる顔を注視されるのは恥ずかしいけど、見られてるのもちょっと安心…
なんだか今日はいつも以上に心が慌ただしい。
僕、ほんとにどうしちゃったんだろ…
そうこうしてるうちに名前を呼ばれてかーくんと一緒に診察室へ向かう。
「上手にいうこと聞けて偉かったな。周りの目全然気にならなかっただろ?」